銀河フェニックス物語<出会い編> 第一話 永世中立星の叛乱 (43)
・第一話のまとめ読み①~(10) ②~(20) ③~(30) ④~(40)
・ 永世中立星の叛乱 (41) (42)
王室警備艇ラールゼットがガーディア社の高重力検査場から赤茶けた平原へと飛び出した。
反王室グループのヤンは艦長室から窓の外を見た。作戦は順調に進んでいる。
この先は無人だ。
もう、どこでこの艦を爆破しても被害はでない。
予定ではガーディア社の検査場から五キロ離れた地点で俺たちはシェルターに入る。
そこで起爆装置を作動させ、残りの爆弾を爆発させる。
シェルターの墜落地点に、ガロン技師長が俺とトライムス少佐そして艦長の三人を迎えに来る手はずになっている。
操縦パネルを操るトライムス少佐を見つめた。さすがこの人は連邦軍の天才軍師だ。
と、その時、
ドォーン。
激しい衝撃が艦を襲った。
俺は床に転がった。
トライムス少佐も操縦パネルに突っ伏している。
俺はすぐにわかった。十Gだ。
識別重力制御が一瞬はずれたのだ。
すぐ一Gに戻った。俺はトライムス少佐に声をかける。
「何ですかね、今の高重力は?」
バンッ。バン。
今度は複数の爆発音がした。
「まずい。今の衝撃で起爆装置が作動した」
冷静なトライムス少佐が焦った声を出した。
これはやばい。
「ヤン、シェルターへ急げ」
俺は慌てて逃げ込んだ。
バシュッ。
少佐は艦長を椅子にしばりつけている紐を銃で焼き切った。
艦長の体がぐらりと傾く。
十Gのショックで気を失っているようだ。
トライムス少佐が艦長を背負って走ってくる。
二人が飛び込んだところで俺はあわててシェルターのドアを閉めた。
バッツババーン。ダーン。
シェルターの中にいてもその衝撃はわかった。ラールゼツトは爆発崩壊している。
トライムス少佐が珍しく感情をあらわにして怒っていた。

「レイターの奴、一体何をした?!」
* *
正午になった。
神殿の外は人であふれ返っている。学生と民衆が合同で行う統一デモが始まった。
「国民議会の開催要求」「一律税の導入反対」と書かれたプラカードを掲げた参加者がシュプレヒコールをあげる。
その声はかたまりのようになって神殿の中にも響いていた。
ガーディ社長は秘書のアドゥールを呼びつけた。
「アドゥール、警備艇のラールゼットはどうしたのじゃ? 正午までに到着するはずではなかったか」
「今、確認を急いでおります。先ほど検査場から出航したことまではわかっているのですが」

アドゥールはあせっていた。
一体どういうことだろう。検査場と連絡がつかない。
遠隔確認システムでラールゼットが飛び立ったところまでは確認した。
しかし、その後、消息がつかめなくなっていた。
確認システムに機影が映らない。不測の事態が起きている。
「社長、ラールゼットに事故が発生した可能性があります」
「ラールゼットが来ぬとな? して、先ほどの衝撃は何だったのじゃ? 関係あるのか?」
「すぐに調べます」
あの衝撃は十G。
外のデモ隊には影響がなかった。この神殿内の識別重力制御がはずれたということ。
おそらく、同じシステムを使っているガーディア社の検査場と警備艇のラールゼットでも十Gが発生したに違いないわ。
一体なぜ?
* *
神殿内の通路をレイターとオルダイは逃走していた。
このままではまずいな、オルダイは走りながら考えていた。想定以上に警備兵が多く投入されている。
来る時に使ったメンテナンス用の通路も封じられていた。
しかもさっきからレイターの様子がおかしい。肩で息をしている。
「どうした? どこかやられたのか」
「バ~カ、やられるかよ」

そう言いながら脇腹をかばって走っている。
そうか、こいつ怪我をしていたんだった。
「十Gの衝撃のせいか。少し休むか」
「そんな暇はねぇ」
というレイターの手を引き、目の前の部屋の中へ引っ張り込んだ。
「遠回りになるが部屋を抜けていこう。神殿内には迷路のように繋がった部屋がいくつもある」 (44)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」