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憧れの後姿|ひとりじゃない⑧

田中課長を見ながら、私はいつも思う。あんな風になれたらいいのに、と。

「お疲れさま。今日も残業?」
定時過ぎ、課長がデスクの私に声をかけてくれた。
「はい、なんとか今日中に仕上げたくて」
「無理しないでね。明日でも大丈夫よ」
キャリアウーマンとはこの人のためにある言葉だと思う。
実力は誰にもひけをとらない。同時にいつも細やかな心配り。
私と同じシングルマザーだとはとても思えない。

私も頑張らなきゃ、そう思いながら、ふと気がついた。課長のデスクにも、まだ書類が山積みになっている。
事務所に残っているのは私たちだけだった。

「課長こそ、お疲れさまです」
そう言うと、課長は苦笑いを浮かべた。
「私ね、実は今日、娘の授業参観だったの」
え、と思わず声が出た。
「行けなかったの。会議が長引いて」

「娘に『お母さんの仕事、大変なのね』って電話で言われちゃった。慰められてるのか、呆れられてるのか」
課長の表情に、いつもの凛とした雰囲気とは違う、母親としての顔が見えた。
「でも」と課長は続けた。「『お母さん、頑張ってるよね』って最後に言ってくれたの。それが嬉しくて」

私の胸にこみ上げるものがあった。同じような状況になった時、息子は、同じように思ってくれるだろうか。

席に戻りかける後姿に私は言った。「課長みたいになりたいです」
その言葉に、課長は振り返った。
「私も、あなたみたいに一生懸命な人と一緒に働けて心強いの。ありがとう」

窓の外では、オフィスビルの明かりがまだきらきらと輝いている。同じように頑張っている人たちがいる。私たちは、決してひとりじゃない。





ひとりじゃない――――――――――
シングルマザーの日常
雨の日のお迎え 🪑待合室の30分 😌お帰りなさい 
📆特別な日 ☂ひとつの傘


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