お帰りなさい|ひとりじゃない③
「急がなきゃ」
結局2時間も残業してしまった。退勤直前に部長から頼まれた急ぎの資料作り。
断ることができなかった。
こんな時に限って電車が遅れている。
秘密保持の関係から自宅に持ち帰れない資料が恨めしい。
娘のあゆみには1時間前にメールを送った。
「ごめんね、まだ帰れない。コンビニでお弁当を買ってゆう君と食べて」
わずかに支給される残業代は、これで飛んでいく。何のために働いているのか。
けれどそんなことよりも、少しでも早く帰りたかった。
ようやく帰り着いた時には、2人はもう寝ていた。
ゆう君は布団で。あゆみはソファーで。
あゆみを抱きかかえ、布団に運ぶ。ずいぶん大きくなった。抱えられるのも、もう限界だと分かっていた。
テーブルには私の分のお弁当が置いてある。
「いつもありがとう♥ お帰りなさい」
付箋の文字を見て、涙が出そうになった。
電子レンジで温めたお弁当を食べながら思った。
コンビニの弁当って、どうしてこんなにしょっぱいんだろう。
明日は、2人のために、せめてオムライスを作ってあげよう。
ありがとうのメモは嬉しかったが、おいしい、という声が聞きたかった。
ひとりじゃない――――――――――
シングルマザーの日常
☔雨の日のお迎え 🪑待合室の30分 😌お帰りなさい
📆特別な日 ☂ひとつの傘
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