市販の育毛剤とクリニックの処方薬の違い|効果はどこが違うのか【元製薬開発者】
ドラッグストアの棚には、育毛剤が並んでいます。
数千円のものから、一万円を超えるものまで。パッケージには「発毛」「育毛」「薄毛対策」といった言葉が並ぶ。
クリニックに行けばもっと効くらしい、という話も聞く。ただ、それがどう違うのかは、棚の前では分かりません。
違いは、成分の強さだけではありません。何が証明されているか、という点から違います。
「医薬品」と「医薬部外品」は、証明の水準が違う
棚に並んでいる育毛剤の裏を見ると、どこかに「医薬部外品」または「第1類医薬品」と書かれています。
この表示が、実は一番大きな違いです。
医薬品は、臨床試験で有効性と安全性を証明した上で、規制当局の審査を経て承認されます。何人を対象に、どれだけの期間、どんな指標で評価したか。すべて記録され、審査報告書として公開されます。
医薬部外品は、有効成分が一定の効果を持つとされる範囲で承認されます。個々の製品について臨床試験が課されるわけではありません。
「効かない」という意味ではありません。ただ、証明の水準が違います。
薬を作る側にいたとき、私たちは医薬品の承認を取るために何年もかけました。その手続きの重さが、そのまま証明の水準の差になっています。
市販のミノキシジルには、濃度の上限がある
日本で市販されているミノキシジルの外用薬は、濃度が5%までと決められています。
リアップX5などがこれにあたります。これは第1類医薬品で、臨床試験を経て承認されたものです。
リアップX5の実際の効果については、リアップX5は効果ある?臨床データで見る本当の実力で書きました。
一方、AGAクリニックでは6%から15%といった高濃度の外用薬が処方されることがあります。
濃度が高ければ効くのか、という問いには、単純には答えられません。ただ、市販では選べない選択肢がある、というのは事実です。
ただし、高濃度製剤の多くは国内未承認です
ここは、はっきり書いておかなければなりません。
クリニックで処方される高濃度のミノキシジル外用薬は、その多くが国内で承認されていない輸入品です。
未承認とは、効かないという意味ではありません。ただ、承認薬であれば整理されているはずの用法・用量・副作用の情報が、日本の審査を通っていないということです。
ミノキシジルの内服薬も、日本ではAGA適応で承認されていません。
外用と内服の違いは、ミノキシジルは飲む薬と塗る薬どっちがいい?に書きました。
「クリニックの薬だから安全」ではありません。医師が管理する前提で使われる薬だ、というだけです。逆に言えば、その管理があるかどうかが、市販薬との実質的な違いになります。
フィナステリドは市販では買えない
もうひとつ、決定的な違いがあります。
市販で買えるAGAの薬は、ミノキシジルの外用薬だけです。
クリニックでは、DHTの産生を抑える薬が処方されます。フィナステリド、デュタステリド。これらは処方薬で、市販では手に入りません。
ミノキシジルとこれらの薬は、作用する場所が違います。ミノキシジルは毛包の血流を改善して成長期を延ばす。フィナステリドとデュタステリドは、AGAの原因物質であるDHTの産生そのものを減らす。
原因を止める薬が、市販にはない。
これが、市販薬とクリニックの薬の、最も本質的な違いだと思っています。
どちらの薬をどう選ぶかは、フィナステリドとデュタステリドの違いと選び方で整理しました。
それでも市販薬から始めることは、間違いではない
ここまで書くと、市販薬が劣っているように読めるかもしれません。
そうではないです。
リアップX5は医薬品として有効性が証明されています。市販で買えて、医師の診察を経ずに試せる。始めるハードルの低さには意味があります。
問題は、薬そのものではありません。
「様子を見よう」が長引くことです。
AGAは進行性です。効かない条件のまま使い続ける半年と、条件に合った治療を受ける半年は、同じ半年ではありません。
薬理の研究でも、一つの介入を続けて結果が出ないとき、続けるか変えるかの判断には期限を設けます。無期限に様子を見ることはしません。
自分の治療についても、同じだと思っています。
市販薬とクリニック、決める前に確認すること
市販薬とクリニック、どちらを選ぶかを決める前に、分かっていた方がいいことがあります。
自分の薄毛が、生え際なのか頭頂部なのか。進行がどの段階にあるのか。ミノキシジルの外用が向いている条件に当てはまるのか。
これは、鏡では確認できません。後頭部から自分の頭頂部を見ることはできない。
日本皮膚科学会のガイドラインでも、AGAの評価には経過や家族歴に加えて、生え際の後退や、前頭部・頭頂部の毛が細く短くなっているかを確認するとされています。
薬を評価する側にいたとき、私たちは投与の前に対象を確認しました。誰に、どの条件で使うのか。それを決めずに始めることはありません。
多くのAGAクリニックでは、初診のカウンセリングが無料です。診察を受けるまで費用はかかりません。
自分の条件を確認してから、市販薬でいくのか、処方薬にするのかを決める。順番としては、そうなると思います。
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参考資料
日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
※この記事は一般的な情報提供を目的としています。診断や治療については医師へご相談ください。
