見出し画像

中小企業の生成AI活用例12選|営業・総務・経理で「AIに任せる業務」を具体化

中小企業の生成AI活用例12選|営業・総務・経理で「AIに任せる業務」を具体化

公開日:2026年7月16日
最終更新日:2026年8月2日

※本記事の活用例は、特定企業の導入実績を示す事例ではありません。中小企業が検討しやすい業務を、AIよろず室が想定例として整理したものです。利用するサービスの規約、社内ルール、法令、業界固有の規制を確認したうえでご利用ください。

結論:AIに任せるのは「作業」。責任と最終判断は人に残す

中小企業が生成AIを業務で使うなら、最初から仕事全体を自動化する必要はありません。

営業では商談準備やメールの下書き、総務では社内文書や議事録の整理、経理では案内文やチェックリストの作成など、文章を読み、整理し、下書きを作る作業から始めやすい傾向があります。

ただし、顧客への正式回答、人事判断、仕訳・税務・支払いの最終判断まで生成AIだけに任せるのは別の話です。

大切なのは、「この部門でAIを使う」と決めることではありません。

> 1つの業務を、AIへ任せる作業と、人が責任を持つ判断に分ける。

この記事では、営業・総務・経理の12業務について、次の3点をセットで整理します。

  • AIに任せる部分

  • 人が確認する部分

  • 入力時に注意する情報

以前公開した「業務20選」のうち、競合・市場情報の整理、表計算の数式、求人票、翻訳などの独自例も、関連する12業務の補足として統合しました。例の数を増やすより、実際に試すときの境界線を詳しくすることを優先しています。


中小企業では、どの部門でAIが使われているのか

中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」では、回答企業のAI導入率は20.4%でした。AI導入済み企業のうち、生成AIを利用している企業は82.6%となっています[1]。

同調査でAIを導入している企業に利用部門を尋ねた結果では、総務・管理部門が68.3%、営業・販売・サービス部門が60.3%、経営・企画部門が58.5%でした[1]。

この数字は、すべての中小企業の68.3%が総務でAIを使っている、という意味ではありません。AIを導入済みの回答企業における利用部門の割合です。

また、調査上の「AI」には生成AIだけでなく、音声認識、画像認識、需要予測なども含まれます。

それでも、文章や資料を扱うことが多い総務・営業は、生成AIの活用候補を探しやすい部門です。


活用例を見る前に決めたい「AIと人の境界線」

「メール作成に使える」「経理に使える」という業務名だけでは、安全な使い方は決まりません。

同じメールでも、社内イベントの案内と、契約条件に関する顧客への正式回答では影響が違います。同じ経理でも、経費精算の案内文を作ることと、税区分や支払先を最終決定することは別です。

AIよろず室では、仕事を次の4段階に分けて考えます。

  1. 発想:質問案、見出し案、表現案を出す

  2. 整理:要約、分類、比較、抜け漏れ候補を出す

  3. 下書き:メール、案内文、手順書のたたき台を作る

  4. 判断・承認・実行:価格、契約、採用、会計処理、送信、支払いを決める

最初に試すなら1〜3から選び、4は人に残します。

将来的にシステム連携や自動実行を行う場合も、人による承認、権限管理、ログ、停止方法、例外時の対応などを別途設計する必要があります。


営業で使える生成AI活用例4選

1. 商談前の情報整理

AIに任せる部分
企業の公式サイト、公開されたニュースリリース、自社にある過去の商談メモなどから、商談前に確認したい論点や質問候補を整理します。

競合・市場情報も、AIに調査そのものを任せるのではなく、人が集めた一次情報を比較・分類する用途なら使いやすくなります。

人が確認する部分
会社名、事業内容、役職、数値、公開日、情報源を確認します。AIが出した情報を、そのまま事実として提案資料へ載せません。

注意する情報
過去の商談メモに個人情報や秘密保持契約の対象情報が含まれる場合は、利用が承認された環境か確認します。公開情報だけで試すと始めやすくなります。

2. 商談メモから決定事項とToDoを抜き出す

AIに任せる部分
商談メモや文字起こしから、顧客の要望、決定事項、未決事項、担当者、期限の候補を整理します。

人が確認する部分
金額、日付、担当者、約束した内容を元の記録と照合します。AIの要約だけを正式な商談記録にしません。

注意する情報
録音の同意、文字起こしサービスのデータ取扱い、顧客情報を入力できる契約・設定かを確認します。

商談後の入力項目や確認手順は、別記事「商談メモからお礼メールと次回提案を作る方法」で詳しく解説しています。

3. お礼メール・フォローメールの下書き

AIに任せる部分
商談の要点、次の対応、希望する文体を渡し、お礼メールや資料送付メールの下書きを作ります。

問い合わせ返信、日程調整、多言語メールも同じ考え方で下書きできます。ただし、翻訳した契約文や重要な対外文書は、言語と業務の両方を理解する人の確認が必要です。

人が確認する部分
宛先、氏名、会社名、金額、納期、添付ファイル、約束事項を確認してから送信します。

注意する情報
AIへ商談記録をすべて渡す必要はありません。文案作成に必要な情報だけに絞り、固有名詞を仮名に置き換える方法もあります。

4. 提案書の構成案を作る

AIに任せる部分
顧客の課題、提案したい内容、提案書の目的を渡し、見出し、説明順、想定質問の案を作ります。

同じ方法で、公開情報をもとにしたブログやSNS投稿の構成案も作れます。ただし、媒体ごとの読者と目的を先に指定します。

人が確認する部分
顧客理解が正しいか、自社で実現できる内容か、価格・納期・効果を過大に表現していないかを確認します。

注意する情報
実績、導入効果、顧客の発言をAIに作らせないことが重要です。確認できない数値や事例は掲載しません。


総務・人事で使える生成AI活用例4選

5. 社内通知・案内文の下書き

AIに任せる部分
健康診断、社内行事、設備点検、提出期限などの条件を渡し、読みやすい案内文を作ります。

日程調整メールや、求人票・募集要項の文章部分も下書きできます。ただし、求人票の労働条件や応募資格は、人が確定した情報だけを使います。

人が確認する部分
対象者、日時、場所、期限、問い合わせ先、社内規程との整合を確認します。

注意する情報
従業員名簿などを入力しなくても案内文は作れます。必要以上の個人情報を渡さないようにします。

6. 会議の議事録を整理する

AIに任せる部分
文字起こしから、議題、決定事項、保留事項、担当者、期限を指定形式に整理します。

人が確認する部分
発言の意図、決定したか検討段階か、担当者と期限が正しいかを出席者が確認します。

注意する情報
人事、経営、顧客情報を含む会議は特に慎重に扱います。会議ごとに同じAIサービスへ入力してよいとは限りません。

議事録作成だけでなく、会議前後の工程まで見直す方法は「生成AIで会議を効率化する方法」で解説しています。

7. 手順書・社内FAQのたたき台を作る

AIに任せる部分
既存の規程、過去の問い合わせ、実際の作業手順をもとに、手順書の見出しやFAQ案を作ります。

社内規程の検索・要約や、研修・説明資料の構成案も関連する使い方です。ただし、AIの一般知識ではなく、会社が正本として指定した資料を渡します。

人が確認する部分
現行ルールと一致しているか、例外処理、承認者、更新日、問い合わせ先が明記されているかを確認します。

注意する情報
AIの一般知識から社内ルールを推測させないことが重要です。正本となる規程や承認済み資料を指定します。

業務マニュアルを現場で検証する手順は「生成AIで業務マニュアルを作る方法」も参考にしてください。

8. 社内アンケートの自由記述を分類する

AIに任せる部分
自由記述をテーマ別に分類し、よく出る意見や改善案の候補を整理します。

顧客アンケートや問い合わせ履歴の分類にも応用できます。ただし、問い合わせへの回答内容を自動決定する仕事とは分けます。

人が確認する部分
少数意見が消えていないか、否定的な意見の意味が変わっていないか、分類結果に偏りがないかを確認します。

注意する情報
氏名、部署名、個人を特定できる記述は、目的に応じて削除・置換を検討します。人事評価や処遇の判断材料としてAIの分類だけを使いません。

生成AIの利用実態を調べる質問票は「生成AIの社内アンケート項目」で公開しています。


経理で使える生成AI活用例4選

経理では、生成AIと会計ソフト、AI-OCR、RPAを区別することが重要です。

請求書から日付・金額・取引先を読み取るのは、主にOCRや文書認識の領域です。会計ソフトへの自動仕訳には、会計システム側の機能やルール設定が使われることがあります。

ChatGPTなどの生成AIへ請求書を貼り付けることだけが「経理のAI化」ではありません。生成AIは、まず文章の整理・説明・下書きで使う方が役割を明確にできます。

9. 経費精算・証憑提出の案内文を作る

AIに任せる部分
締切、必要書類、提出方法、よくある不備を渡し、社内向けの案内文やリマインド文を作ります。

経費精算の記入漏れや分類候補を整理する補助にも使えますが、費目・税区分・承認をAIだけで確定しません。

人が確認する部分
期限、申請方法、対象経費、社内規程、問い合わせ先を確認します。

注意する情報
実際の従業員名や未提出者一覧を入力しなくても、ひな型は作れます。個別連絡への差し込みは承認済みの仕組みで行います。

請求書PDFの読み取りと集計を検討する場合は「請求書PDFの集計をAIで自動化する方法」も確認してください。

10. 取引先への確認メールを下書きする

AIに任せる部分
請求書の不足項目、入金確認、支払条件の確認など、相手に失礼のない問い合わせ文を作ります。

人が確認する部分
請求番号、金額、振込日、支払期日、契約条件、送付先を元資料と照合します。

注意する情報
請求書そのものを入力する前に、取引先情報や口座情報をその環境で扱ってよいか確認します。文案に必要な情報だけを抽出して渡す方法もあります。

11. 月次業務のチェックリストを整える

AIに任せる部分
現在の月次業務、担当者、期限、承認順を渡し、抜け漏れを確認しやすいチェックリストや引き継ぎ資料の案を作ります。

Excelやスプレッドシートの数式・関数を説明させる使い方もあります。数式を作る場合は、想定値を使って検算し、参照範囲や例外条件を確認します。

人が確認する部分
自社の会計方針、税理士との役割分担、承認権限、例外時の対応と一致しているかを確認します。

注意する情報
AIの一般知識で自社の会計処理を決めません。既存ルールを整理する用途に限定し、税務・会計判断は担当者や専門家が行います。

12. 数値資料の説明文を下書きする

AIに任せる部分
人が確認済みの集計表や、機密性に配慮した数値の変化を渡し、「売上が前月より増えた」「経費が予算を上回った」などの説明文のたたき台を作ります。

月次報告や定型レポートの文章部分も作れます。数字を計算させることと、確認済みの数字を説明させることを分けます。

人が確認する部分
数値、比較期間、増減率、原因の説明を確認します。相関関係だけで原因を断定していないかも見ます。

注意する情報
生成AIは計算や会計判断の正確性を保証するものではありません。集計・計算は表計算ソフトや会計システムで行い、生成AIには確認済みの結果を渡す方が役割を分けやすくなります。


生成AIに任せない方がよいこと

活用範囲を広げる前に、次の業務は特に慎重に扱います。

  • 顧客への重要な回答を、確認せず自動送信する

  • AIが作った価格、納期、効果を確認せず提案する

  • 採用、人事評価、懲戒をAIの出力だけで決める

  • 仕訳、税区分、会計処理を生成AIだけで最終決定する

  • 振込先や金額をAIの出力だけで決め、自動送金する

  • 契約・税務・法務について、専門家の確認なく結論を出す

  • 利用規約や設定を確認せず、個人情報・機密情報を入力する

個人情報保護委員会は、個人情報を含むプロンプトを入力する場合、利用目的の範囲内か、サービス提供者が入力データを機械学習に利用するかなどを確認するよう注意喚起しています[2]。

また、経済産業省とIPA・AISIが共同事務局を務める「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」では、AI利用者を含む各主体に向けた指針が整理されています[3]。

ガイドラインを読んだだけで自社の利用ルールが完成するわけではありません。扱う情報、誤った場合の影響、確認者、停止方法を業務ごとに具体化する必要があります。


自社で最初の活用例を選ぶ4ステップ

1. 各部門から、面倒な定型業務を3つずつ出す

「AIに何ができるか」ではなく、毎週・毎月繰り返している作業を聞きます。

  • 文章を毎回一から書いている

  • 長い資料から必要な箇所を探している

  • 同じ説明を何度もしている

  • 会議後の整理に時間がかかっている

  • 手順が担当者の頭の中にしかない

こうした業務が候補になります。

2. AIに任せる一部分を決める

業務全体ではなく、「下書き」「要約」「分類」「見出し作成」など、一部分に絞ります。

たとえば「営業をAI化する」では広すぎます。「商談メモから、決定事項と次回までのToDo候補を抜き出す」まで具体化します。

3. 入力情報と確認項目を決める

試す前に、次を1枚にまとめます。

  • 入力してよい情報

  • 入力してはいけない情報

  • 期待する出力形式

  • 人が確認する項目

  • 最終承認者

  • 間違いを見つけたときの修正方法

4. 導入前後を同じ条件で測る

AIの生成時間だけでなく、準備・確認・修正まで含めます。

> 導入後の合計時間=入力準備+AIでの作成+確認+修正+共有・送信

時間が減っても、間違いが増えたり、確認する人の負担が大きくなったりすれば、改善とは言い切れません。作業時間、修正内容、手戻り、担当者の負担を合わせて見ます。

業務候補を比較する方法は「生成AIはどの業務から始める?最初の1業務を選ぶ5つの基準」で詳しく解説しています。

「自社の業務を見ても、どれから試すべきか決められない」という場合は、AIよろず室の30分無料相談で、最初の候補を1つ整理します。売り込みや、その場での契約のお願いはいたしません。



よくある質問

無料の生成AIでも業務に使えますか?

料金だけでは判断できません。入力する情報、サービス提供者によるデータの取扱い、学習利用の有無、保存期間、管理機能、会社のルールなどを確認する必要があります。

公開情報を使った文章の構成案など、機密情報を入力しない範囲から試す方法はあります。個人情報や顧客情報を扱う場合は、会社が承認した環境と手順を先に整えてください。

経理では、請求書をChatGPTに読み込ませればよいですか?

請求書の読み取りが目的なら、会計ソフトの証憑読取機能やAI-OCRなど、目的に合った仕組みも比較してください。

生成AIは説明文や問い合わせ文の下書きには使いやすい一方、金額・税区分・勘定科目・支払先の最終確認を省略できるわけではありません。使用するサービスへ請求書データを入力してよいかも確認が必要です。

プロンプト集を配れば、社内で使えるようになりますか?

プロンプト集は出発点になりますが、業務内容、入力資料、確認項目が決まっていなければ、同じプロンプトでも結果は安定しません。

プロンプトだけでなく、「どの業務で使うか」「何を入力してよいか」「誰が確認するか」をセットにして手順書へ残します。

どの部門から始めるのがよいですか?

営業・総務・経理という部門名だけでは決まりません。発生頻度、現在の作業時間、手順の明確さ、確認しやすさ、間違えた場合の影響を比べて選びます。

最も忙しい部門より、最初の検証に協力できる担当者がいて、結果を確認しやすい業務がある部門から始める方法もあります。


まとめ

  • 営業では、商談準備・記録整理・メール・提案書の下書きに活用できる

  • 総務・人事では、社内通知・議事録・手順書・アンケート整理が候補になる

  • 経理では、生成AIと会計ソフト・AI-OCRを区別し、文章整理から始める

  • AIには発想・整理・下書きを任せ、正式な判断・承認・実行は人に残す

  • 効果は生成時間ではなく、入力準備・確認・修正を含む合計時間で測る

AIよろず室の30分無料相談では、営業・総務・経理などの現在の業務を伺い、最初に生成AIを試す候補を1つ整理します。

月額39,800円(税別)の伴走プランは、支援の入口となる選択肢の1つです。月額の範囲に収まらないご要望についても、内容に応じた支援をご案内します。

相談後にその場で契約を求めたり、繰り返し無理な勧誘をしたりすることはありません。



この記事を書いた人
AIよろず室。
中小企業を対象に、業務診断、AI活用ロードマップ、実装、社内定着までを支援しています。代表は、IT業界20年以上のエキスパートです。


参考資料

[1]独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月)

[2]個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2023年6月2日)

[3]経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月31日)


#生成AI #ChatGPT #AI活用 #中小企業 #中小企業経営 #業務効率化 #業務改善 #AI活用事例 #AI導入 #DX #営業DX #総務DX #経理DX #バックオフィス #営業支援 #議事録 #業務マニュアル #問い合わせ対応 #経費精算 #請求書 #AI担当者 #社内DX #生産性向上 #働き方改革 #デジタル化 #AIリテラシー #情報セキュリティ #個人情報保護 #AIよろず室 #経営者

いいなと思ったら応援しよう!