生成AIでアンケートの自由記述を分析する方法|分類・集計・報告の7ステップ
公開日:2026年8月6日
最終更新日:2026年8月6日
※生成AIの機能・データ利用条件は変更されることがあります。個人情報・機密情報を含む回答は、会社の利用ルールと契約条件を確認し、必要な加工・承認を行ってください。重要な経営判断や人事判断は、AIの分析結果だけで決めないでください。
結論:AIに最初から要約させない
アンケートの自由記述が100件集まったとします。
そのまま生成AIへ渡して「主な意見を要約して」と頼めば、読みやすい文章は作れます。しかし、その文章だけでは次のことを確認できません。
その意見は何件あったのか
どの回答を根拠にしたのか
一つの回答に複数の意見があった場合、どう数えたのか
少数だが重大な意見を落としていないか
AIが原文にない解釈を加えていないか
生成AIで自由記述を分析するときは、発見と集計を分けることが重要です。
一部の回答から仮の分類基準を作る
人が分類基準を確認・固定する
全回答を固定基準で分類する
分類結果を回答ID付きの表にする
表から件数を計算する
原文と分類を人が照合する
多数・少数・緊急の3種類に分けて報告する
AIよろず室では、この方法を「二段階分析+3レーン報告」と呼んでいます。公的な分析基準ではなく、生成AIの便利さを使いながら、原文へ戻れる状態を保つための実務フレームです。
この記事で分かること
自由記述を分類・集計する7ステップ
コピペできる分類プロンプト
回答ID付き分類表の作り方
多数意見だけで少数・緊急意見を消さない報告方法
生成AIの社内利用状況を調べる質問票そのものが必要な場合は、「生成AIの社内アンケート12項目」をご覧ください。本記事は、回収後の自由記述分析に限定します。
自由記述のAI分析で起きやすい5つの失敗
1. 件数をAIの文章だけで判断する
「多くの回答者が不満を持っています」と要約されても、実際に何件なのか分かりません。
件数や割合は、各回答に付けた分類結果から計算します。要約文から推測しません。
2. 分類基準が途中で変わる
最初の50件では「価格」、後半では「費用」という別カテゴリになると、同じ意見を別々に数えてしまいます。
仮分類を作った後、カテゴリ名と定義を固定してから全件を処理します。
3. 一つの回答を一つのカテゴリへ押し込む
「価格は高いが、担当者の対応はよかった」という回答には、価格と対応品質の二つの論点があります。
分析目的に応じて複数分類を認めます。
4. 少数意見が要約から消える
1件しかない意見でも、安全、法令、差別、ハラスメント、情報漏えい、重大な顧客離反などに関わる場合があります。
件数の多さと重要度を分けます。
5. 代表コメントが書き換えられる
AIに「代表的なコメントを作って」と頼むと、複数回答を混ぜた架空の文章になる可能性があります。
引用する場合は回答IDを付け、原文を確認します。読みやすく直した文を使う場合は、原文引用と区別します。
OpenAIの公式資料では、ChatGPTのデータ分析機能が表形式データの集計等に利用できる一方、生成された分析の前提や出力を確認することも案内されています[1][2]。操作できることと、業務上正しい分析になっていることは別です。
分析前に決める5項目
1. 分析目的
改善要望を見つける
解約理由を把握する
社員の不安を整理する
新商品の評価を比較する
問い合わせ原因を減らす
目的によって分類基準が変わります。「何か面白い傾向を探す」だけで始めないようにします。
2. 分析単位
一人の回答を1件とするか、回答内の論点を分割して数えるかを決めます。
複数分類を認める場合、カテゴリ件数の合計は回答者数を超えることがあります。そのことを報告書に書きます。
3. 比較する属性
部署、顧客区分、利用期間等で比較する場合、分析に本当に必要な属性だけ残します。少人数の区分は個人を推測しやすいため、統合・非表示も検討します。
4. 重要度の基準
件数とは別に、緊急確認が必要な条件を決めます。
例:安全、個人情報、法令、ハラスメント、重大障害、解約意思、健康への影響。
5. 人が確認する範囲
全件確認するか、一定割合を抽出するか、重大カテゴリだけ全件確認するかを決めます。
高い影響を持つ調査では、AIによる分類だけで結論を出しません。
生成AIで自由記述を分析する7ステップ
ステップ1:回答へ変更しないIDを付ける
回答順にA001、A002のようなIDを付けます。
氏名やメールアドレスをIDへ置き換えるのではなく、分析用の行番号として使います。個人情報・機密情報は別途削除・加工します。
ステップ2:データを整える
1行1回答にする
空欄・重複の扱いを決める
質問文と回答欄を分ける
個人情報・機密情報を削除する
表記揺れを必要以上に書き換えない
元データを変更せず、分析用コピーを作る
会社が許可した生成AI環境かも確認します。全社ルールは「生成AIの社内ルールはどう作る?」を参考にしてください。
ステップ3:一部の回答から仮カテゴリを作る
全体から偏りが出ないよう20〜30件程度を選び、AIに論点を抽出させます。回答数が少なければ全件を見ても構いません。
この段階では件数を確定しません。カテゴリ候補を見つけます。
ステップ4:人が分類基準表を固定する
カテゴリごとに次を決めます。
カテゴリ名
定義
含める例
含めない例
似たカテゴリとの境界
緊急確認の有無
「その他」も用意し、無理な分類を防ぎます。
ステップ5:全件を固定基準で分類する
AIへカテゴリ定義を渡し、回答ID、該当カテゴリ、根拠となる原文部分、確信度、不明点を出させます。
一度に処理できる量はサービスやプラン、データ量によって異なります。分割する場合も同じ分類基準を使います。
ステップ6:分類表から集計し、人が照合する
カテゴリ別件数、割合、属性別の違いは、回答ID付き分類表から計算します。
少なくとも一定数または一定割合を原文と照合し、重大カテゴリ、低確信、その他、複数分類は優先して確認します。
ステップ7:多数・少数・緊急の3レーンで報告する
多数意見:件数が多く、全体施策の候補になる意見
少数意見:件数は少ないが、新しい気づきや特定層の課題を示す意見
緊急意見:件数に関係なく、直ちに人が事実確認すべき意見
「上位3カテゴリ」だけで報告すると、少数・緊急意見が消えます。
自由記述が集まったものの、分類基準、個人情報の扱い、人による確認、報告形式を決められない場合は、AIよろず室の30分の無料相談で、回答データそのものではなく、設問・項目・利用目的を伺い、分析手順を整理します。相談後に契約する必要はありません。
コピペして使えるプロンプト
仮カテゴリ作成用
あなたはアンケート分析の補助者です。
以下の自由記述から、分析目的に関係する論点を抽出し、仮カテゴリを作ってください。
原文にない意見を追加しないでください。
一つの回答に複数論点がある場合は分けてください。
件数や割合はまだ計算しないでください。
【分析目的】
(記入)
【回答データ】
回答ID|自由記述
【出力】
仮カテゴリ名
定義
該当した回答ID
根拠となる原文部分
似たカテゴリとの違い
緊急確認が必要な可能性
判断が難しい回答ID
全件分類用
以下の固定済み分類基準だけを使い、自由記述を分類してください。
新しいカテゴリを勝手に追加しないでください。
当てはまらない場合は「その他」、判断できない場合は「要確認」としてください。
複数分類を許可します。
原文にない理由や感情を推測しないでください。
【分類基準】
(カテゴリ名・定義・含む例・含まない例を貼る)
【回答データ】
回答ID|自由記述
【出力列】
回答ID|カテゴリ1|カテゴリ2|根拠部分|緊急確認|確信度(高・中・低)|人への確認事項
集計確認用
この分類表を使ってカテゴリ別件数を計算してください。
回答者数とカテゴリ言及数を分けてください。
複数分類があるため、カテゴリ件数の合計が回答者数を超えることを注記してください。
計算に使用した回答IDをカテゴリごとに列挙してください。
自由記述原文から新しい件数を推測しないでください。
コピペできる分類基準表
カテゴリ名:
定義:
含める例:
含めない例:
似たカテゴリとの境界:
複数分類:可/不可
緊急確認:要/不要
確認者:
版・作成日:
コピペできる報告書の型
調査目的:
回答者数/自由記述件数:
分析対象外とした件数・理由:
分析単位:回答単位/論点単位
複数分類:あり/なし
分類基準の作成方法:
人が照合した件数・方法:
多数意見
カテゴリ:
件数・割合:
該当回答ID:
原文例:
検討する施策:
少数意見
内容:
該当回答ID:
なぜ残すか:
次に確認すること:
緊急確認
内容:
該当回答ID:
事実確認の担当者・期限:
分析上の限界
回答者の偏り
無回答の扱い
AI分類の不確実性
比較できない属性
判断に使ってはいけない範囲
人による検証で見るポイント
分類漏れ
一つの回答に複数の論点があるのに、一つしか分類されていないことがあります。
過剰な推測
「遅い」という原文から、理由を「人員不足」と推測していないか確認します。
否定・皮肉・条件文
「以前は不満だったが、今は改善した」「安ければ使いたい」のような文章は、単純な感情分類では誤る場合があります。
少数者の識別
部署・役職・自由記述を組み合わせると本人が分かる場合があります。少人数属性の報告方法を調整します。
数字の再計算
AIが出した件数・割合を、表計算等で再計算します。回答IDの重複、複数分類、空欄を確認します。
分析結果を施策へ変える方法
カテゴリ件数だけでは、次の行動は決まりません。各意見を次の4点で確認します。
頻度:何件あるか
影響:放置した場合の影響は何か
確かさ:追加調査なしで事実と判断できるか
実行可能性:誰が、いつまでに対応できるか
件数が多くても原因が不明なら、追加インタビューを行います。件数が1件でも安全上重大なら、すぐ事実確認します。
施策実施後は、最初のKPIを決めて変化を確認します。導入初期の指標は「AI導入の最初のKPIを売上増にしてはいけない理由」も参考にしてください。
よくある質問
Q. 何件から生成AIを使うべきですか?
一律の基準はありません。20件でも複数論点が多ければ役立ちますし、少数なら人が全件を読んだほうが早い場合もあります。件数より、繰り返し分析するか、分類表を残す価値があるかで判断します。
Q. AIが出した割合を、そのまま報告できますか?
分類表の回答IDを確認し、表計算等で再計算してください。複数分類を認める場合は、回答者割合とカテゴリ言及割合を混同しないよう注記します。
Q. ネガティブ・ポジティブの感情分析だけで十分ですか?
目的によります。「手続きが複雑」「説明が不足」「価格が高い」は、すべてネガティブでも対策が異なります。施策につなげるなら、感情だけでなく対象・原因・要望等を分類します。
Q. 回答原文を生成AIへそのまま入力できますか?
個人情報・機密情報、回答時の同意・利用目的、自社の社内ルール、利用サービスの条件を確認します。必要な属性だけ残し、自由記述内の固有情報も加工します。
Q. 月額39,800円のプランしかありませんか?
いいえ。月額39,800円(税別)は継続伴走の入口となるプランです。アンケート設計、分析手順の作成、個別のデータ処理・実装、研修等、課題や希望に応じた支援もご案内しています。範囲と費用は着手前に確認・合意します。
まとめ
自由記述をAIへ渡して、最初から要約文だけを作らない
一部から分類基準を発見し、人が固定した後に全件を分類する
回答ID付き分類表から件数を計算し、原文へ戻れる状態を保つ
多数意見だけでなく、少数意見と緊急意見を別枠で報告する
AIの分析結果だけで重要な経営・人事判断を行わない
AIよろず室の30分の無料相談では、アンケートの目的と項目を伺い、分類基準、入力前の情報加工、人による確認、報告形式を整理します。回答データそのものを無料相談へ送る必要はありません。月額プラン以外にも、個別の分析・実装・研修等をご案内しています。売り込みや、その場での契約のお願いはいたしません。
この記事を書いた人
AIよろず室。
中小企業を対象に、業務診断、AI活用ロードマップ、実装、社内定着までを支援しています。代表は、IT業界20年以上のエキスパートです。
参考資料
[1]OpenAI Help Center「Extracting Insights with ChatGPT Data Analysis」
https://help.openai.com/en/articles/9213685
[2]OpenAI Academy「Analyzing data with ChatGPT」
https://openai.com/academy/data-analysis/
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