朝食を抜くと健康になるのか
「朝食を抜くと健康によい」という話を耳にする機会が増えました。
オートファジーだけでなく、グルコーススパイクという視点から、朝食を抜くことのメリットとデメリットについて考えてみます。
朝食を抜く
「朝食を抜くと健康になる」
そんな話を耳にすることが増えました。
16時間断食、オートファジー、間欠的断食……。
ここ数年で、こうした言葉はすっかり一般にも広まったように思います。
要するに、「食べない時間を長くすると、細胞が若返る」という考え方です。
薬剤師として、また研究者として、こういう話は気になります。
本当に健康によいのでしょうか。今回は、オートファジーだけでなく、グルコーススパイクという視点からも考えてみました。
オートファジー
朝食を抜くと空腹時間が延びます。
空腹時間が延びるとオートファジーが活性化するといわれています。
オートファジーとは、細胞が自分の中の古くなったタンパク質や傷んだ部品を分解してリサイクルする仕組みのことです。
2016年にノーベル賞を受賞したテーマでもあります。
ただ、文献を読み返してみると、「何時間の空腹でオートファジーが十分に活性化するか」については、ヒトでのデータがまだ十分ではありません。
動物実験では24〜48時間の絶食でようやく明確な活性化が確認されていますが、ヒトで「16時間でOK」という根拠はそれほど強くないのです。
つまり、「朝食を抜けばオートファジーが起きて若返る」という図式は、少し単純すぎるような気がします。
グルコーススパイクはどうなる
そこで、少し視点を変えて考えてみます。
朝食を抜くと、昼食後に血糖値が急激に上がりやすくなります。
空腹時間が長いほど、血糖値は急上昇しやすくなります。
これをグルコーススパイクといいます。
このグルコーススパイクが厄介で、血管の内皮を傷め、動脈硬化を進め、老化を加速させます。
慢性的に繰り返されると、認知機能低下との関連も指摘されています。
朝食を抜いてオートファジーを狙う一方で、グルコーススパイクという別のリスクを招いているとしたら、話が逆ではないでしょうか。
北欧では1日5食
北欧では、1日3食に加えて、コーヒーなどを楽しむ「フィーカ(Fika)」という間食文化があります。
結果として、1日4〜5回ほど食べる生活になる人も少なくありません。
北欧には長寿国もありますが、もちろん長寿を食事回数だけで説明できるわけではありません。
もちろん、これだけで健康や長寿を説明できるわけではありません。
しかし重要なのは、食事回数そのものより、1回にどれだけ食べるかです。
1回あたりの食事量が少なければ、血糖値は比較的緩やかに上がります。
グルコーススパイクが起きにくいのです。
逆に言えば、食事回数が少なくても、1回の量が多ければスパイクは起きやすくなります。
食事内容でもスパイクの起きやすさは変わります。
血糖値はブドウ糖の量で決まり、ブドウ糖に近い糖分を含むものほど濃度上昇が急になります。
つまり、食事の摂り方が血糖値に影響し、それが健康にも影響するということになります。
朝食は食べた方がいい
ここまで考えると、少なくとも「グルコーススパイクを抑える」という観点では、朝食を抜くことは逆効果になりやすいといえます。
もちろん、朝食を抜いても昼食・夕食の量をきちんと抑えられる人で、その食事内容も十分に吟味できるのであれば話は別です。
しかし現実には、朝食を抜いた分だけ昼食や夕食の量が増える人の方が多く、血糖値が急上昇しやすい食事を完全に避け続けるのは簡単ではありません。
少なくとも私は、一般の方であれば、朝食は食べた方がよいと考えています。
また、朝のインスリン感受性(インスリンに対して、体の細胞がどれくらい敏感に反応できるか)は、1日の中で最も高いことが知られています。
朝食は食べた方が、血糖をより効率よく処理できます。
「食べない」より「どう食べるか」
オートファジーを活性化させたいのであれば、無理に朝食を抜くより、夕食を早めにして自然な空腹時間を作る方が体内時計とも合っています。
運動や十分な睡眠でも、オートファジーは誘導されます。
結局のところ、「朝食を抜く」という行為は、エビデンスの限られたオートファジー活性化を狙いながら、エビデンスの豊富なグルコーススパイクというリスクを招く可能性があります。
優先順位が逆ではないかと思います。
「食べない」ことより、「何をどう食べるか」の方が、アンチエイジングの本質に近いのです。
ちなみに私は、朝食は食べます。
量は腹八分を心がけ、ご飯は少し遅めに食べ始めています。
今のところ、このくらいが私には一番続けやすい方法です。
※この記事は個人的な見解です。
疾患をお持ちの方は、必ず主治医にご相談ください。
まとめ
・朝食を抜く健康法について、オートファジーとグルコーススパイクの両方から考えてみた
・オートファジーを目的とした朝食抜きは、ヒトでの根拠がまだ十分とはいえない
・一方で、朝食を抜くと食後血糖値が急上昇しやすくなる可能性がある
・大切なのは、食べないことより「何をどう食べるか」だと感じている
・私は今のところ、朝食を食べ、ご飯を少し遅めに食べ始める方法を続けている
