三角食べ、ベジファースト、カーボラスト―食べ方の「常識」の変化
三角食べ、ベジファースト、カーボラスト。
食べ方の常識は、時代とともに変わってきました。
その変遷をたどりながら、自分に合った食べ方について考えてみます。
三角食べ
私が子どものころ、学校で「三角食べをしましょう」と教わった記憶はありません。
三角食べとは、ご飯、おかず、汁物を少しずつ交互に食べる食べ方です。
私は、その知識がないまま育ちました。
その後、薬剤師となり、糖尿病の患者さんに関わるようになりました。
当時、食事指導の場で「三角食べをしましょう」という説明を耳にした記憶があります。
そのとき、「なるほど、日本らしいきれいな食べ方だな」と思いました。
もっとも、それが当時の標準的な食事指導だったのか、一人の医療者の考え方だったのかは、今ではわかりません。
ただ、私の中では、「バランスよく食べること」と「三角食べ」は自然に結びついていました。
三角食べは食文化だった
改めて考えると、三角食べは本来、血糖値を意識した食べ方ではありません。
一汁三菜の食事で、一つのおかずだけを先に食べ切るのは少し行儀が悪い、という感覚が日本にはあります。
三角食べは、料理を楽しみながら、好き嫌いを減らし、栄養のバランスを意識するための食べ方として広まってきました。
食育や食事の作法という意味合いが強かったのだと思います。
私は、大人になるまでこれを知らなかったのですが、日本らしい食文化の一つと言ってよいのかもしれません。
ベジファーストの登場
その後、2010年代頃から「野菜から食べましょう」というベジファーストの考え方が広まってきました。
食物繊維を先に摂ることで糖の吸収が穏やかになり、食後血糖値の急上昇を抑えられるという考え方です。
糖尿病の食事指導でも取り入れられ、健康志向の人にも広く知られるようになりました。
外食でも比較的実践しやすく、取り入れやすい方法だったことも普及した理由なのでしょう。
そしてカーボラストへ
さらにその後、2010年代後半から2020年代頃にかけて注目されるようになったのがカーボラストです。
野菜だけでなく、たんぱく質や脂質も先に食べ、炭水化物を最後に食べるという考え方です。
CGM(持続血糖モニター)の普及により食後血糖の変化が見えるようになり、「血糖スパイク」という言葉が広く知られるようになったことも、この考え方が広まった理由の一つだと思います。
ただ、カーボラストを毎食続けるのは、現実には少し難しいと感じています。
定食では最後までご飯に手をつけないのは少し不自然ですし、丼物やカレー、鍋料理では実践しにくい場面もあります。
家族と食事をするときに、自分だけ食べる順番を変えることに違和感を覚える人もいるでしょう。
「誰のための話か」が大切
ここで一つ、大切なことがあります。
厚生労働省の『日本人の食事摂取基準(2025年版)』では、特定の食事順序を推奨する記載は見られません。
食事順序に関する研究の多くは糖尿病患者さんを対象としており、健康な人にも同じ効果があるとまでは言えないためと考えられます。
つまり、ベジファーストやカーボラストは、血糖管理が必要な方には有効な方法です。
一方で、健康な人すべてに対して、「必ずこの順番で食べるべき」と言えるほどのエビデンスは、現時点では十分ではありません。
食べ方の変遷が教えてくれること
三角食べからベジファースト、そしてカーボラストへ。
この流れを見ていると、食事の考え方が「文化や作法」から「代謝や科学」へと少しずつ変化してきたことがわかります。
もちろん、それ自体は悪いことではありません。
ただ、科学的な情報は、「誰を対象にした研究なのか」という視点もあわせて考えることが大切です。
三角食べには、日本の食文化としての価値があります。
ベジファーストは、多くの人が無理なく取り入れやすい方法です。
カーボラストは、血糖管理が必要な方にとって有力な選択肢になります。
大切なのは、「どれが絶対に正しいか」ではなく、自分に合った方法を選ぶことなのだと思います。
ちなみに私は、今でもほぼ三角食べです。
ご飯を少し遅めに食べ始めています。
まとめ
・三角食べは血糖管理ではなく、食文化や食育の中で広まった食べ方である
・ベジファーストは食後血糖値の上昇を穏やかにする考え方として普及した
・カーボラストは血糖管理を重視した食べ方として注目されている
・食事順序の効果は対象者によって異なり、健康な人への根拠はまだ十分ではない
・大切なのは流行ではなく、自分に合った食べ方を選ぶことである
