好きなものがないから、作る。
どんなものが好きなの?
今まで、その質問にうまく答えられなかった。
特別に好きなアーティストがいるわけでもない。
憧れの人がいるわけでもない。
「これが理想。」
そう言えるものも、なかなか思い浮かばなかった。
好きなものがはっきりしている人が羨ましかった。
そこまで夢中になれるものなんて、私には何もない。
だから私は、
「好きなものがない人間」なんだと思っていた。

でも、多分違った。
好きなものがなかったんじゃない。
好きなものが、
まだ、この世になかった。
お店もそうだった。
小麦や乳製品や肉を食べられなくなって、
「これなら毎日食べたい。」
そう思えるパンや料理を探した。
でも、なかなか出会えなかった。
だから、自分で作ることにした。
今、お店に並んでいるものは、
誰かに届けるためだけじゃない。
まず、
私自身が食べたかったものだ。

最近は、朝の作業用BGMを作っている。
最初は、朝の光みたいな音楽を作りたかった。
サンキャッチャーの光。
プリズム。
透明感。
そんな言葉を並べながら、
何十曲も作った。
でも、毎回思う。
「なんか違う。」
朝、仕込みながら流してみる。
しっくりこなくて、また作り直す。
その繰り返し。

振り返ると、
私はずっと同じことをしている。
パンも。
イラストも。
音楽も。
探して、
見つからなくて、
作る。
その繰り返し。
ただ、誰かと違うものを作りたいわけじゃない。
ただ、流行を追いかけたいわけでもない。
でも、自分が本当に欲しかったものを見つける方法が、
私にとっては、作ることだった。
だから、新しい作品を作っているという感覚は、あまりない。
ゼロから何かを生み出しているというより、
ずっと探していたものに、少しずつ近づいている。
そんな感覚の方が近い。
だからきっと
これからも、
パンを焼いて、
文章を書いて、
音楽を作る。
その先には、
まだ出会っていない「好き」が、
きっと待っているから。

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