80年代前半の温度と源泉
まだ日本も元気だった80年代の前半に異彩を放ち、隆盛を極めた角川映画を振り返るシリーズ。今回は1981年の名作「スローなブギにしてくれ」の魅力についての3日目、最終回となります。
スローなブギにしてくれ 1日目
スローなブギにしてくれ 2日目
昨日は夏から秋へと向かう映画中盤について書きましたが、今回は秋から冬へと向かいながら物語が破綻していく終盤戦。中盤で男の哀愁をみせつけた山崎努さんのボリュームが一時的に下がり、粗雑で不器用に浅野温子さん演じるさち乃を愛し振り回す古尾谷雅人さん演じるゴローがクローズされます。
が、ひときわ大きな輝きを放つのは浅野温子さん。心身ともに傷つき、ふたりの男の間で揺れ動いているはずなのに、本心は読み取れず、全ての主導権を握っているのはさち乃であると思わせる、複雑な女心とつかみどころのない色気で物語を支配し、映画を自分の色に染めていきます。
偉そうに振る舞い、女性を粗野に扱うふたりの男はともに振られて全てを失う。その一方でふたりの女性、浅野温子さんと浅野裕子さんは自己主張しながらイキイキと自分の道を歩く。この対比がとてもリアルで気持ちがいいですね。冬へと向かう出来事はろくでもないことばかりですが。
最終的に行き場を失ったふたりの男は昨日ご紹介しました味のあるスナック「クイーンエリザベス」で運命の再会を果たします。そして、その直後に復讐の復讐にゴローがあい、思わず助けに入ったムスタングの男がとばっちりを受けたことで皮肉にも、途切れたはずの糸がつながり、風のように姿をくらましたさち乃が再びふたりの前に姿を現します。
まずはムスタングの男の前に、そしてゴローのもとに―
フィナーレは三人が出会った夏から一年後の夏。それぞれの運命と謎を残して見事に完結。いったい誰の子で、車に乗っていたのは誰なのか。。
今の時代では地上波で放送されることはまずない映画で、賛否のうち否定的な意見の方が多いと思われますが、個人的な見方だったり解釈では見応えがあったし面白かった。何より考えさせられるシーンやセリフが多かったです。
浅野温子さんの圧倒的な魅力が一番ですが、古尾谷雅人さんの男っぷりも引けを取らないほど際立っていました。このふたりの全力投球、体当たりの演技は必見であります。素晴らしかった。
あと、総帥・角川春樹氏がちょい役で出演。タランティーノばりに存在感で映画の味わいを深めています。とにかく濃厚なキャストともども見どころ満載、角川映画の真骨頂だと思います。
