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【連載小説】君の消えた日-二度の後悔と王朝の光-77話 忍び寄る女神の影4-口に蜜あり腹に剣あり-

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文化祭前日、永遠とわ美沙みさが打ち合わせをした通り、準備は順調に進んだ。脅かし役のクラスメイト達も、どのように脅かすかのアイディアを出し始めたことで装飾準備に加わっていた。

「ひとまず何とかなりそうだな」
「本当に良かった」

クラスメイト達の様子を見ながら永遠と美沙が安堵あんどしていると、文化祭実行委員の井上遥大いのうえ ようたが美沙に話しかけてきた。

平沢ひらさわ、昨日は連絡ありがとう」
「井上くん!……事前に相談出来なくてごめんね」
「いや、塾で反応できなかったし、平沢が役割を明確にしてくれたことでみんな動くようになったよ。助かった」
「それ、私じゃなくて――」
「本当に良かったよな」

永遠は美沙の言葉に被せるように言った。

「え、たちばなくん?」
「じゃあ、引き続き頼むよ」と言うと、井上は2人の元から離れて行った。
「橘くん、どうして?」

美沙が驚いた顔をしながら言った。

「行動に移したのは平沢なんだから訂正しなくて良いんだよ。俺は提案しただけだし」
「そういう訳には……」
「――永遠、頼まれてた黒ペンキ買ってきたよ」

そこにペンキがたくさん入った紙袋を持った眞白ましろが現れた。

「眞白、暑い中ありがとな」
「ひとりで運ぶのは大変だったでしょ、一之瀬いちのせくん」

美沙の言葉に、眞白は曖昧あいまいに微笑んだ。

「あーっ、いたいた!ねぇ、平沢さんに聞きたいことがあるんだけど!」

背後から女子生徒に呼ばれ、美沙は「2人とも後でね」と言ってその場を後にした。

「あっ、領収書……ってもう行っちゃったよ、早いな」

女性陣を見送りながら、眞白は苦笑いを浮かべた。

「……なあ、眞白」
「何?」
「ちょっと話したいことがあるから、塾終わったら俺の家に来てくれないか?夕飯も用意しておくから」

茶化そうとした眞白だったが、永遠の真剣な表情に言葉を飲み込んだ。

「……塾が終わってからってなると、21:00過ぎになっちゃうよ?」
「問題ねぇ。しゅうもアルバイト終わるのそのくらいだしな」
「柊も呼ぶの?」
「あぁ」
「分かった。塾終わったら連絡するね」

少し困惑しながらも、眞白がうなずいた。

「ちょっと人手が足りないんだけど、誰か手空いてないかな?暗幕を張りたくて」

永遠と眞白が話し込んでいるところに大石華奈おおいし かなが現れた。

「あぁ、そしたら俺が行くよ」
「橘くん……!ごめんね、一之瀬くんと話してる時に」
「気にすんなって。じゃあ、眞白後でな」

永遠は身近にあった脚立を手にして、華奈と共にお化け屋敷に入った。各所でそれぞれ暗幕をったり仕掛けを施している。

「橘くん、ここなんだけど」
「オッケー」

永遠は脚立に登り華奈から暗幕を受け取ると、テキパキと天井に貼り付けていく。

「ありがとう。高いところ苦手だから助かったよ」
「これくらい全然」

お礼を言う華奈をよそに、永遠は脚立から地面に着地した。

「いよいよ明日からだな」
「そうだね……!橘くんは何やるの?」
「1日目はお化け役で、2日目はアルバイトもあるから装飾の補修だけかな」
「そうなんだ。私は部活の方を優先させてもらったから、クラスの方は片付けだけなんだよね」
「部活大変だろうに手伝ってもらえるだけでも助かるよ。確か大石は文芸部だったよな?」

興味津々で尋ねる永遠に対し、華奈は頷いた。

「もちろん。私は短編の小説を書いてるよ」
「へぇ、小説か。どんな内容なんだ?」
「ホラーに近いかな?ある女の子が主人公なんだけど、周囲の人間が彼女のことをどんどん忘れていっちゃうの。その女の子の行動について書いた小説なんだ」
「なんか勝手に詩とか恋愛小説とかを書いてるイメージだったわ。ちょっと意外だな」
「そう?恋愛小説を書きたい子はたくさんいるから被らないジャンルを選んだんだけど……文芸部は人が少ないのもあって、クラスの方に入れないのが申し訳なくて」

華奈はそう言いながら肩を落とした。

「大石は準備を一生懸命やってくれたし、誰も文句言わねぇよ。初めての文化祭楽しみだな」
「――そうね。やっと明日を迎えられると思うと、本当に楽しみ」

永遠は華奈の見たことのない表情に違和感を持った。

「大石……?」
「じゃあ、私先に行くから」

華奈は永遠を残してお化け屋敷を後にした。

「ちょ、大石……!」
「あれ、橘くん!どうしたの?」

華奈と入れ違いで吉川葵よしかわ あおいが顔を出した。

「いや、なんか大石の様子が変だったから気になって」
「変だったってどんな感じ?」
「そう言われると難しいけど……」

永遠は葵の問いに言葉を詰まらせた。

「あ、ほら!あれじゃない?文化系の部活って、今回の文化祭のアンケートの結果によって来年の部費が変わるじゃない?だから心配してるってこの間言ってたよ!」
「そう……なのか?」
「でも私も気持ち分かるな〜。陸上もさ、結果が出るまでが楽しいところない?橘くんもやってたから分かると思うんだけど。練習でタイム縮んで喜んだり、フォームの試行錯誤したりする時とか」
「まあ……確かにそういうところはあるかもな」

葵の言葉を聞きながら、永遠は考え過ぎていたのではないかと思い始めた。

「ゴールしたら結果を受け止めないといけないでしょ。コンディションとか言い訳できないし……過程より結果が重視されちゃう。文化祭も同じ。どれだけクラスが一致団結できたかどうかも大事だけど、今回の文化祭だってアンケートの結果で順位が決まるんだよ」
「俺はそうは思わねぇけどな。部活も行事も人間性を成長させるための機会だろ。一位を取ることが全てじゃねぇと思うけどな」
「橘くん大人……!」

永遠の言葉を聞いて、葵は目を丸くした。

「吉川は気負い過ぎなんじゃねぇの?」
「そうなのかな?!美沙も絶対一位を取るって言ってたし」
「平沢がそう言ってたのかもしれねぇが、吉川はもう少し肩の力抜いた方が良いと思うぞ」
「そっか、なんだかホッとしちゃった。橘くん、ありがとう」

永遠のフォローを受けて、葵はニッコリと微笑んだ。

「なぁ、吉川。ちょっと別件で聞いても良いか?」
「もちろんだよ!私に答えられることなら!」
「あのさ――」

柊ととき芝山しばやまの指示のもと、駒葉こまば高校内に不審物がないかの確認のために巡回していた。

「何か仕掛けられている様子はないわね」
「まあ、危険を犯して事前に設置しておく必要がないんじゃないかな」
「それもそうね。ところで、鴇さんはクラスの準備に行かなくて大丈夫なの?」
「キミだってお互い様だろう」
「私は今日に関しては仕事を優先して良いって言われているわ……そういえば、8組は白雪姫の劇じゃなかった?練習とかしなくて大丈夫?」
「ねぇ、もしかしてボクが演者として出ると思ってる?」
「違ったかしら?ほら、ちょうどぴったりな役があるじゃない」

柊は悪びれた様子なく答えたが、鴇は殺気立っている。

「……キミを歴史のやみに堕としても良いんだよ?」
「それはダメよ。私を殺したら鴇さんも死ぬじゃない。忘れたの?」

鴇の地雷を踏んでいることに気づかないまま、鴇の身を案じている柊の態度に、鴇は怒りを通り越して面食らっていた。

「キミはさとい人間だと思っていたけど、仕事じゃないとあきれるくらい気づかないんだね。友人が少ないのも頷けるよ」
「失礼ね、私だって……!」
「橘くんと一之瀬くんしかいないじゃないか」
「……鴇さんだっていないじゃない」
「ボクは人とつるむのが嫌いなのさ」

確信的な部分を突かれ、柊は何も言えなくなった。しばらく無言で歩いていたが、柊の視線に気づいた鴇は「何か気になることでもあるのかい?」と尋ねた。

「昨日のことだけど、あなたは何故印なしで神術を発動できたの?」
「……そうだね、キミが五麟ごりんの技の発動について種明かしをしてくれるなら答えても良いよ」

交換条件を持ちかけられた柊は眉間みけんにしわを寄せた。

「そんなの知ってどうするの……?」
「タダで渡せるほど安い情報じゃないんでね」
「……知られたところで不利益にはならないから話すわ」
「交渉成立だね」

鴇は不敵な笑みを浮かべた。





【次話】78話 忍び寄る女神の影4-口に蜜あり腹に剣あり-
4/25(金)22:00頃更新


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