浮浪者にペソを与える男 【ショートショート】寓話譚
毎週金曜日になると、
駅前に一人の浮浪者が現れた。
ボサボサの白髪。 季節を無視した厚いコート。 コンビニ袋には空き缶。
誰が見ても、浮浪者だった。
浮浪者は特段珍しくはない。
珍しかったのは、 その浮浪者が、他の浮浪者に金を配っていたことだ。
外国の紙幣だった。
「何だこれは」
受け取った男が聞く。
「ペソだ」
「なんだ、それは?そんな紙使えないじゃないか」
男はただペソを渡して去る。
誰も相手にしなかった。
見たこともない紙切れだった。
浮浪者たちにはその紙が何なのかわからない。
浮浪者たちは最初、 面白半分にもらっていたが、
そのうち受け取りもしなくなった。
ただ一人、 シゲという男だけは違った。
彼は毎週、 ペソを受け取っていた。
きちんと折り、 古い財布へ入れる。
「集めてどうする」
と仲間が聞くと、
「さあな」
とだけ答えた。
半年ほどして、 ペソを配る男は来なくなった。
冬だった。
誰も気にしなかった。
そして春。
街の様子が少し変わった。
銀行の前に人が並び、 スーパーから米が消えた。
テレビでは、 難しい言葉が並べられていた。
しかし要するに、 みんな急に、
紙を信じられなくなったのである。
人々は、 別の紙を欲しがった。
その中に、 ペソも含まれていた。
だが、 高架下の人間たちは比較的静かだった。
失う信用が、 最初からほとんど無かったからだ。
数日後、 シゲの姿が消えた。
さらに数ヶ月後。
駅前に、 見慣れないスーツ姿の男が立っていた。
シゲだった。
浮浪者たちは驚いた。
「あんた?、、、どうした、、」
「少し金ができた」
シゲは缶コーヒーを置いた。
それから、 昔いた場所を眺める。
「あの爺さん、 何者だったんだろうな」
誰かが言った。
シゲは少し考えたあと、 静かに答えた。
「信用を失った人間にしか、 次の信用を渡せなかったんだろう」
風が吹いた。
駅前では、 背広姿の男たちが、
段ボールを敷いていた。
若いホームレスが思い出したように言う。
「そういや最後の日、 なんか言ってたな」
「なんて?」
シゲは缶コーヒーを見つめる。
若い男は答えた。
——「次は、肩書きを捨てろ」。
はい、ということで
今回は星新一さんのショートショート風
作品を書いてみました!!
(実は私小さい頃から星新一が好きでして、、、、楽しんでもらえたなら嬉しいです。。)
もし好評であれば違う作品も描いてみようと思いますので、もしよかったらコメントとかもらえたら嬉しいです!!☘️
また会いましょう!!☀️
投資思考譚はこちらから↓↓↓
下記も好評頂いており、恐縮です🙇🙇
