スチームおじさんの第四編 「痔の手術:地獄のブートキャンプ編」
※この作品は【NOTE創作大賞2025】エントリー作品です。
前書き:IBSとの長い戦いを越え、平穏が訪れたかに思えたある日——
肛門に、異変が起きた。新たな敵の名は「痔」。
そして始まる、地獄のブートキャンプ。
これは、肛門を鍛え直す物語である。スチームおじさんの第四編 「痔の手術:地獄のブートキャンプ編」
スチームおじさんは、IBSのせいで寂しい青春を過ごしたが、それでも学校を卒業して資格も取り、社会人として生活をスタートさせて数年が経っていた。社会人になってからは、薬を飲むことで仕事や友達との外出もできるようになり、ついには薬に頼らずに生活できるまでに回復していた。 心療内科の先生と相談しながら、薬の量や回数を少しずつ減らしていった。「もう大丈夫だ」「IBSとの長い戦いもこれで終わりだ」と、スチームおじさんはそう思っていた。 しかし、その希望も意志も、あっけなく崩れ去る。 まだこのとき、スチームおじさんは—— 新たな収集令状が届くことを、知る由もなかった。 その名は、「痔」。 そして、その先に待っていたのは—— あまりにも過酷な、肛門特化型ブートキャンプであった。 それは、ある違和感から始まった。肛門から小さな何かが飛び出ていた。市販薬の塗り薬で処置していたが、一向に良くなる気配はなかった。それどころか、次第に大きくなり、ついには小指の2関節くらいの長さまで成長していた。 さすがにこいつには悩まされた。こいつのおかげで、排泄した後に必ず下着が汚れた。スチームおじさんは外出する時も必ずウオシュレットが必要になった。ウオシュレットがないと、下着や肛門の周りが汚れ、強烈な痒みと悪臭が放たれるのであった。長時間の外出には下着の替えが必要になるくらいであった。 流石にここまでくると、肛門科にかかるほかなかった。 肛門科での診察前、スチームおじさんには淡い希望があった。 「もしかしたら、日帰り手術で済むのでは?」 しかし、その期待はあっけなく崩れ去る。 診察を終えた医師——いや、大佐のような厳格な口調で彼は言い渡した。 「これはもう、入院しての手術が必要です。放置すれば、もっと大きくなりますよ。」 スチームおじさんは、こうして“ブートキャンプ行き”を命じられたのであった。 入院する前に大腸検査を再び実施する必要があった。いぼ痔があることで、大腸がんのリスクも考えられたのだ。スチームおじさんは、再び絶望した。数年前に受けた、あの屈辱をもう一度おこなうのか?と、、 苦労の末、受けた大腸検査では、幸いなことにがんは見つからなかった。 こうして、無事にブートキャンプへと送り込まれたのである。 これから体験する地獄を知る余地もなく。 家族ともにキャンプ場(病室)につく。すぐに検査着という名の軍服を支給され、売店で手術セットの購買を勧められた。売店ではプラスチック製の湯おけに前の部分に穴が空けてあり、閉じたり空けたりできるような工夫がなされたものを購入した。聞けば、手術後にこの桶にお湯を張り、手術部(肛門)を洗うそうだ。その際に、桶の穴の部分からお湯を捨てるとのことだった。 家族からは「ここ(肛門科)はなんかみんな明るくていいね、内科や外科と違ってみんな元気そうじゃん。」 確かにみんな深刻で思いつめた顔などしてなく、明るかった。 「なんだ、たいしたことないんじゃねー。」 スチームおじさんはこの時はまだ、この後の地獄を知る余地もなかった。 夜になり、夕食を取った後すぐに、就寝時間となる。 そして、静まり返った頃—— 病室あちこちのトイレから、悲鳴が聞こえてきた。 スチームおじさんは、何のことだと思い飛び起きた。 隣のベットの兵士はこっちをみて、笑っている。 「大丈夫、通過儀礼みたいなもんだよ。」 そう言ってカーテンを閉めた。 そう——これが、後に自分も悲鳴を上げることになることを、 身をもって知ることとなる。 手術入院にサインしたことに後悔し始めたが、 その時は——あまりにも遅すぎた。 やがて、数日して自分の手術の日を迎えた。手術は半身麻酔であり、うつぶせになりながら手術を受けた。意識があったため、痛みこそないものの、自分の肛門がメスで切られていく感覚は確かにあった。 手術が終わり、本当の地獄はここから始まった。 術後、肛門が痙攣のように震えることがある—— それが、激しい痛みを引き起こす。 あまりの激痛に、ナースコールで看護師を呼び、鎮痛剤の注射を打ってもらうこともしばしばだった。 ようやく手術の痛みが落ち着いてきても、試練は続いた。 入院食はむしろ少し多めで、兵士たちの詰め所(病室)には毎日、医師という名の大佐が見回り(回診)にやって来る。 「スチームおじさん、食事残しちゃだめですよ。しっかり食べて、おっきいうんちしてくださいね。」 ——そう、ここからが本当の訓練(地獄)の始まりだった。 肛門の周りには大きい血管があり、神経もたくさんあるそうだ。また、意図的に大きい便を出して、傷口が耐えられるかを確かめるのである。この大きい便が、手術でできた傷跡の肛門を通過するとき——極度の痛みが生じることになる。 これが、手術後の「通過儀礼」となる。 この通過儀礼を終えると、大きな大便が出た旨を通信兵部隊(看護師)に報告して確認をしてもらう。通信部隊は排出物を確認し、大佐という名の医師に報告、除隊(退院)の目処が立つ。 数日後、スチームおじさんにも便意が来て、トイレに駆け込んだ。 これまでに経験したことのない、肛門をえぐられるような痛みに思わず—— 「うあああーーーっ!!」と叫び声をあげてしまった。 その後、ナースコールで排泄物を確認してもらい、通過儀式は無事に終了した。 トイレを出ると、同室の老兵がにっこりと笑ってこう言った。 「おめでとう。」 聞けば、彼は明日、除隊(退院)とのことだった。 数日後、スチームおじさんも無事に除隊の日を迎えることができた。 とはいえ、通過儀式を終えた兵士たちの姿には、まだ“戦いの余韻”が残る。
しばらくの間、彼らの歩き方はどこか様子がおかしい。
軽く膝を曲げ、両脚をぴったりと閉じ、スルリ…スルリ…と内ももをすり合わせながら進む姿は、まるで能役者や歌舞伎役者のような佇まい。
そう、内ももを離すと肛門が広がり、激痛が走るため、彼らは自然とそう歩くほかないのだ。
この奇妙な所作もまた、ブートキャンプを通過した者だけが得られる、**一種の“名誉の勲章”**なのかもしれない。痔は再発することもあるため、IBSとの戦いはこれからも続くことになる。 ——そして、この後、新天地で再び肛門との戦いが生じることを、 スチームおじさんはまだ、知る由もなかった。
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あとがき:あの痛みを、人は笑うかもしれない。
でも、実際に肛門を切られ、震え、叫び、耐えた人間にとって——
それは、紛れもない“戦い”だった。笑っていい。
でも、どこかで「俺もわかる」と思ってくれたら、それだけで嬉しい。スチームおじさんの旅は、まだ続いている。
IBSと痔と、時々恋と。
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