キリング・ミー・ソフトリー【小説】51_フランとメモリー


やっとこさテストから解放された頃には、見慣れた海水浴場と通りに面した公園が総じて県外ナンバーの車で埋め尽くされていた。
台風による暴風・波浪警報で怯え、とんだ目に遭った挙句、地元の花火大会が中止になってしまい、がっかり。
淳がそれならこっちの方へおいでよと誘ってきた為、バンドメンバーの親睦を深める計画を立てる。



知成は複数掛け持つサークル活動の一環で男女含むグループと旅行三昧は勿論のこと、念願叶ってアパレル販売のアルバイトが決まったようだ。
真司はOBとして、且つ引退前のマネージャーである美弥を支えるべく高校サッカーの応援。
進路を美容専門学校に定め、知らぬ間にAO入試を済ませた彼女と満喫する。



華やかな彼らとは逆に淳は昔ながらの定食屋で汗水垂らす以外は四六時中ベースを弾き、南は短い休暇につき朝から晩まで溜まったアニメを消化せねば、などと青春とは程遠い生活(個々の解釈次第)を過ごす。俺?言わずもがな。
せめて残りの自分達も幾らかは夏らしい遊びをしようという流れを作り出した。



あちこちで夏休みに思う様はしゃぐ子供を見かける。このクソ暑い中、お疲れ。
あの頃のように興奮しないのは何故だろう。
今月27日にまた1つ歳を重ねティーンエイジャー末期へと差し掛かる、どうにかして莉里さんに会いたいのが本心。


だが、夏フェスが生き甲斐なきのピが全国を駆け巡っているおかげで上手くタイミングが掴めず関東行きは潰れ、引き替えに月末こちらの誕生祝いを併せて他のイベントへ足を運ぶ。お馴染みの5人に加え、新たに南も仲間に加わった。



現実は厳しく、努めて自然に莉里さんの予定を尋ねれば27日は仕事だそう。
とはいえ来月を待てば再会を果たせる。
今度こそ〈チケット当たったから2人で楽しまない?〉とアプローチ出来た。
拗らせストーカーには変わりないものの、自分にとってかなり目覚ましい成長。



さて、淳に招かれたのは彼の住む街で開催される花火大会。最寄り駅に着くと人混みに紛れ、明らかに場違いな彼を見つける。
「東京の花火とかテレビでやってるけど、めちゃくちゃごった返しててヤバいよね。」
南が触れた途端、淳が最悪だと言わんばかりに盛大な溜息を吐き
「俺あんなの絶対無理だわ……。」
と嘆いた。



莉里さんも、友人或いは誰か知らない異性と打ち上げ花火を眺めるのだろうか?
儚げな浴衣姿を想像し、隣に寄り添う自分を思い描く。極めて美女と野獣に近い。



「まあ、これから3人でバンド頑張ろ。よろしく。」
ラムネで乾杯する。
浮かんでは切なく消える彩り、心臓に響き渡る妙なざわつきと、微かなときめき。
夏の夜の匂いがした。



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