キリング・ミー・ソフトリー【小説】50_ビターソングとシュガーステップ
せっかく素敵な経験を積んでいるのだから、今度はそれを活かした曲作りに挑みたい。
しかし悠長に構えてもいられなかった。
もう直、前期授業が終わる。
ということはつまり大学生活初のテスト期間を迎えるのだ。自分ときたら、せいぜい資格試験の準備を始めたくらい(正しくは教材を開き机で眠りこけた)。高校時代と同様、課題やレポートに取り組むだけ。
流石、明確な目標がある真司は常に予習・復習を行ない、範囲の公表後も余裕を持っていた。試験まで2週間を切り、彼に倣って乗り掛かる。
アルバイトは欠勤させて貰い、夏休みで埋め合わせる予定だったが、知成と淳は気楽なもの。
「俺はバイトしつつボチボチやるかなあ。なんとかなるよね。」
「は?マジで言ってる?俺、勉強嫌いだしやんねえわ。」
両耳のピアスホールを更に広げた知成がサラッと放つ。何の為に大学へ進んだのだろうと酷く頭を悩ませた自分が疑問に思うのもおかしな話ではあれ、……お前は遊びに来たのか。
田舎のキャンパスに対し、垢抜けてスタイリッシュ過ぎる彼は一際目を引く存在、本当ならファッション系の専門学校を選ぶべき。
そのような意見を述べれば、
「どう考えても俺に縫製は無理じゃね?」
と笑い飛ばされる。どの道、付き纏うにしろ学部まで被せなくても良いのに。
一応は親友なので、差し詰め大好きな〈ちー〉に従って多少はまともに学校へ通う筈だと親が判断した。そんな知成はお試しトライアルで、俺が世話係かよ。
人生どっちに転ぼうと、知らんがな。
こちらは単純明快、必ずメッセージアプリを伝って届く莉里さんからの励ましを与えられると何でも出来てしまう(気がする)。
彼女は高卒らしかった。
『アキくんの色んなお話聞いてるとね、私も一緒にいるっぽくて楽しいの。けど、アキくんは毎日忙しいよね、ごめん』『え、大丈夫だよ?むしろありがとうって感じ、俺ので良ければぜんぶ話すから』
莉里さんが望み、喜ぶことは全てしたい。
されど、友人の写真を送りはしなかった。
およそあの面子に囲まれる度胸と自信を持ち合わせておらず、そもそも彼女が歳下には惹かれなくたって。
真司は結婚を視野に入れる程の恋人がいて、淳は大変面倒臭い男だとしても、小洒落た知成が莉里さんの興味を唆るか分からない、といった幼稚な理由。
