Photo by
odapeth
キリング・ミー・ソフトリー【小説】49_シーソーゲーム
ビニールシートに横たわって流れる音へ身を委ねつつ兄とじっくり語らう。
如何せん寝言の件は誤魔化しようがなく、
好きな人について洗いざらい話す羽目に陥った。
「上級者向けってか、絶対叶わねえのは承知してまーす。」
「付き合っても苦労しそうな子だよね、目に見えてる。」
「でしょ?俺もぶっちゃけ追いかけるより追いかけられたかった。」
「ままならないもんだよ。」
あいつは危険だからやめとけ、さっさと忘れてどっかの俺にお似合いな女を選べ。
至極簡単で敷居の低い方に逃れても無駄。
実に煩わしく、出会いを馬鹿の一つ覚えのようにやり直したところでどうせ莉里さんに惚れる。
さて、と兄が腰を浮かす。
ヒットソングまみれ、あらゆる賞を掻っ攫い、膨大な数の記録を獲得した根強い人気を誇るバンドのお出ましだ。
彼にとっては様々なジャンルへ足を突っ込む架け橋となった原点であり、ヒーロー。
兄が実家暮らしだった頃は引っ切りなしに聴いていた為、自分が物心つく辺りで発売された曲も完璧に歌える。
昔は額面通りに受け取ってしまい、親の視点から書いたという歌詞の内容を理解するのが難しかったが、今は骨身に染みた。
ちらりと兄の様子を窺えば屈託なくキラキラと目を輝かせ、幸福感に痺れ、記憶の奥底に眠る少年が顔を出した。
丁度、今の自分と重なる歳に家族と別れ東京へ旅立った彼。生まれた時から当然の如く〈お兄ちゃん〉だったのに、不思議と少し違って見えた。
こちらは懲りもせず思いが込み上げ、咽び泣いたが、優しく頭を撫でてくれる兄もまた、鼻を啜る。
「千暁、ありがとう。めちゃくちゃ楽しかったよ。元気でな。」
そんな出来事もまるでなかったかのように、颯爽と最終の新幹線に飛び乗ってとんぼ返り。
俺はいつも千暁の味方だから忘れんなよ、と手を振って笑う。
