【5分でわかる】ペルソナとは?エビデンスベーストマーケティングで考える使い方
マーケティングの仕事をしていると、よく「ペルソナを作りましょう」と言われます。
「東京都在住、35歳、共働き。子どもが1人。休日はカフェ巡りを楽しみ、情報収集はInstagramが中心」
ここまで具体的に顧客像を描くと、急に顧客のことが分かったような気がします。
ペルソナは、たしかに便利です。
ただし私は、ペルソナを市場の代表者だと思い始めた瞬間から危険になると考えています。
実際のブランド購入者は、マーケターが想像するほど「特定の一種類の人」にまとまっているとは限りません。エーレンバーグ・バス研究所では、競合ブランドのユーザープロファイルは人口統計、態度、メディア利用などで大きく違わないことが多いという「ブランドユーザープロファイルの法則」が紹介されています。
では、ペルソナは何のために使えばいいのでしょうか。
私は、人を切り捨てるためではなく、顧客の生活を具体的に想像するために使うのがよいと思っています。
そもそもペルソナとは
ペルソナとは、商品やサービスを利用する顧客像を、一人の具体的な人物として描いたものです。
たとえばターゲットを、
「30〜40代の共働き世帯」
と設定したとします。
これはある程度まとまった「集団」です。
一方、ペルソナでは、
「35歳、会社員、配偶者と子ども1人。平日は仕事と育児で忙しく、買い物はスマートフォン中心」
のように、一人の生活まで具体化していきます。
初学者向けには、
ターゲット=どんな人たちか
ペルソナ=その中の一人を具体的に描いた人物像
と考えると分かりやすいでしょう。
ペルソナの価値は、数字だけでは見えにくい顧客の生活を想像しやすくすることにあります。
ペルソナは「顧客を具体的に考える」ためには便利
たとえば「30代女性向けの商品を考えてください」と言われても、かなり抽象的です。
しかし、
「朝7時に子どもを保育園へ送り、そのまま仕事へ行く。帰宅後は家事もあるので、買い物に時間をかけたくない」
という人物を考えると、
「スマートフォンだけで簡単に買える方がいいのではないか」
「商品説明を長く読む時間はないかもしれない」
「いつ使う商品なのだろう」
と、具体的な問いが出てきます。
商品開発、顧客体験、クリエイティブなどを考えるときには、この具体性が役に立ちます。
だから私は、ペルソナそのものを否定していません。
むしろ、
抽象的な市場データを、生活者の具体的な状況まで降ろして考えるための道具
としては使いやすいと思っています。
問題は、この人物を「実際の市場そのもの」だと思ってしまうことです。
最大の罠は「ペルソナに似ていない人を捨てること」
たとえば調査をした結果、現在の顧客には30代の共働き女性が多かったとします。
そこから、
「35歳、共働き、子ども1人」
というペルソナを作る。
ここまでは市場理解です。
しかし、その後、
「このブランドの顧客はこういう人だから、広告もこの属性だけに配信しよう」
となると話が変わります。
ペルソナが、顧客を理解するための道具から、顧客を排除するための条件に変わっています。
エーレンバーグ・バス研究所では、競合ブランドの顧客プロファイルは思われているほど大きく異ならず、ブランド間で大きく違うのは顧客の「構成」よりも「人数」であるという研究知見が紹介されています。
つまり、
「うちのブランドを買うのは、こういう特別な人だ」
という物語を作りすぎることには注意が必要です。
私は以前の短い記事でも、ペルソナをもとに市場を狭く考える危険性について触れました。今回の記事は、その考えをもう少し実務で使える形に整理したものです。
ペルソナは市場を理解するための模型であって、市場を囲う柵ではありません。
ここはかなり重要だと思っています。
「誰が買うか」だけでなく「どんなときに買うか」を見る
では、顧客を具体的に考えるとき、何を深掘りすればいいのでしょうか。
私は、年齢や趣味を細かくするだけでなく、
「どんな状況で、そのカテゴリーを必要とするのか」
を具体化した方がマーケティングでは使いやすいと思っています。
たとえばコーヒーを考えてみます。
「35歳、会社員、趣味は旅行」
という情報より、
「朝、眠気を覚ましたいとき」
「仕事に集中したいとき」
「食後に一息つきたいとき」
の方が、購買に近い情報かもしれません。
こうした、カテゴリーを買おうと思うきっかけはカテゴリーエントリーポイントと呼ばれます。
エーレンバーグ・バス研究所では、ブランドが成長するためには、こうした複数の購買状況から思い出されること、つまりメンタルアベイラビリティを高めることが重要だとされています。
私は、
ペルソナ=人を具体化する
カテゴリーエントリーポイント=買う状況を具体化する
と分けて考えると使いやすいと思っています。
「山田花子さんが何を好きか」を細かくするだけでなく、「どんな瞬間に商品が必要になるか」まで見る。
その方が、商品、広告、流通などの具体的な施策につなげやすくなります。
私ならペルソナを「思考実験の登場人物」として使う
では、ペルソナをどう使うのか。
私は、市場の代表者ではなく、思考実験の登場人物くらいに考えるのがちょうどいいと思っています。
この人物なら、いつ商品を使うだろう。
何が面倒だろう。
どこで商品を探すだろう。
どんな説明なら理解できるだろう。
こうした問いを考えるために使います。
一方で、
「この人に似ていないから広告対象から外す」
「この人の価値観が顧客全体の価値観だ」
「この人に似た人数が市場規模だ」
とは考えません。
実際の市場には、ペルソナとは全く違う人も普通に存在します。
だからこそ私は、
ペルソナをリアルに作ることより、ペルソナをリアルな市場そのものだと思い込まないことの方が大切
だと思っています。
顧客を想像するために、一人の人物を作る。
でも、マーケティングをするときには再び市場全体を見る。
そして「誰が買うか」だけでなく、
「どんなときに買うか」まで具体的に考える。
この使い方なら、ペルソナは今でも十分に役立つ道具だと思います。
プロフィール
マーケティング戦略コンサルタントです。
事業会社とコンサルティング会社の両方で、販売・CRM・データ分析・市場調査・需要予測・価格・広告・Webなど、マーケティングの上流から下流まで経験してきました。
このnoteでは、実務と研究を行き来しながら、仕事・キャリア・発信に使える再現性の高い考え方を紹介しています。
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自己紹介|実務とエビデンスから、マーケティングの本質を探しています
https://note.com/baokcg69/n/n371e049e5e99
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参考URL
Ehrenberg-Bass Institute「The law of brand user profiles: The sharpest nail in the coffin of hyper-targeting」
https://marketingscience.info/news-and-insights/the-law-of-brand-user-profiles-the-sharpest-nail-in-the-coffin-of-hyper-targeting
Ehrenberg-Bass Institute「Same Same Not Different」
https://marketingscience.info/news-and-insights/same-same-not-different
Ehrenberg-Bass Institute「Laws of Growth Analysis」
https://marketingscience.info/learn-with-us/commercial-research/laws-of-growth-analysis
Ehrenberg-Bass Institute「Easy to Find: Being Where B2B Buying Happens」
https://marketingscience.info/news-and-insights/easy-to-find-being-where-b2b-buying-happens
Ehrenberg-Bass Institute for Marketing Science
https://marketingscience.info/
