セルフマネジメントの重要性(シン・マネジメントの教科書)
「河童の目線で人世を読み解く」市井カッパ(仮名)です。
「すべての組織と人間関係の悩みを祓い癒し、自然態で生きる人を増やす」をミッションに社会学的視点から文章を書いております。
御覧いただき、ありがとうございます。
noteのできるだけ毎日更新を実践しています。現在の曜日ごとのテーマはこちら。火曜は「シン・マネジメント論(連載)/リーダーシップ・経営」のテーマとなります。このテーマは新しいマネジメントの教科書を作るつもりで、じっくりと書き続けたいと思っています。
なお、この連載では、マネジメントの定義について、下記のように定義しています。
マネジメントとは、自然状態で放置しておくと手に入れられない理想的な成果を得るために、人が意志を持って働きかけを行うことである。
前回の記事はこちらです。
前回は、コーチングの考え方を利用して、いかにマネジメント能力を開発していくのか、ということについての説明をしました。
今回からは具体的に、「①セルフマネジメント ②人と仕事のマネジメント ③組織のマネジメント」の順番に説明していこうと思っています。今回はそのうち、①セルフマネジメントの一回目です。今日はセルフマネジメントの必要性の導入部分のお話をしていきたいと思っています。
今回の記事では、なんとなく一般的な言葉ではないか、ということで「セルフマネジメント」という言葉を使っています。しかし、ドラッカーの『現代の経営』では、日本語訳では第II部のタイトルが「経営管理者のマネジメント」となっており、その中の第11章のタイトルが「自己管理による目標管理」となっています。原文を見るとそれぞれ、「MANEGING MANAGER」と「Management of Objectives and Self-control」となっていて、後者では「セルフコントロール」という言葉になっています。そして『現代の経営』では、ドラッカーはこの「経営管理者のマネジメント」については、下記のような視点で語っています。
経営管理者のマネジメントにおいてまず必要とされることは、一人ひとりの経営管理者の目を企業全体の目標に向けさせることである。彼らの意思と努力をそれらの目標の実現に向けさせることである。
一読してわかる通り、この時のドラッカーの目線は経営管理者本人というよりは、その上に居る人。さらに言えば、経営管理者の上司についての在り方の記載もありますので、より経営層に向けて書いているような印象です。
つまりは、『現代の経営』の時点では、ドラッカーは「自己統制」と言っていながらも、その内容は「自己統制する方法」ではなく、「自己統制させる方法」という視点になっていることがわかります。
前にも引用しましたリソースですが、こちらを紹介しておきます。
彼は私に、『現代の経営』と『創造する経営者』(中略)という既刊二書に触れて、「前者は<事業を経営する経営者の役割>について、また後者は<事業がすぐれた経済的効果を達成するために経営者の果たすべき役割>について論じたのに対して、自分はもう一つの基本的問題、すなわち<経営者がいかにして自らの能力を最も効果的に駆使すべきか>という問題に関して研究中で、近く別な書物を出版する予定だ」という意味のことを書き送ってきたが、その別な書物というのが、本書『経営者の条件』であることは言うまでもない。読者はこのドラッカー自身のことばのなかから、彼の学説体系のなかでの本書の位置づけを容易に理解することであろう。
ここで言う<経営者>というのは、もちろん、ドラッカーの本意としては「マネージャー」という意味だったかと思うのですが、野田先生はそれを「経営者」と訳し、後に上田先生は「経営管理者」と訳した、ということかと思います。
ここで野田先生の言う『経営者の条件』というのは原題が「The Effective Excecutive」であり、実際には「効果的に成果を出す人」というタイトルであったことは、何度も述べていますが、ちなみにこの本の内容については下記の記事で解説しています。
上の記事の冒頭にも書かれていますが、この本はセルフマネジメントについて書きましたよ、と。では、ドラッカー自身は本当にそんなことを言っているのかと言えば、まえがきの部分でこう言っています。
普通のマネジメントの本は、人をマネジメントする方法について書かれている。しかし本書は、成果をあげるために自らをマネジメントする方法について書いた。ほかの人間をマネジメントできるなどということは証明されていない。しかし、自らをマネジメントすることは常に可能である。
該当する英文も抜き出しておきます。
Management books usually deal with other people. The subject of this book is managing oneself for effectiveness. That one can truly manage other people is by no means adequately proven. But one can always manage oneself.
日本語訳の「ほかの人間をマネジメントできるなどということは証明されていない。」はやや強めに訳されていますが、原文は「充分に証明されたとはいえない」とやや控えめな表現になっています。が、セルフマネジメントについて言っていることはほぼ同じです。
自分のことで振り返ってみると、自分がマネジメントについて悩んだのは転職先のベンチャー企業にて、でした。もともと複雑な事情で誕生したコーポレートベンチャーだったこともあり、ビジネスプランもビジネスモデルもおかしい上に、前職の人間関係を引き継いだような組織が出来上がっていて、まあ、マネジメントが機能していないの見本のような会社でした。そこで、自分にはビジネスの知識もマネジメントの知識もないな、と自覚しまして、様々に勉強し始める訳です。
このうちマネジメントについて、最初に思うことは、いかに人を動かすか、という観点で、下記の本を手に取りました。
この本はとても素晴らしい本で、要する人を動かそうと思えば自分の態度を変えなさい、という本です。まあ、そりゃそうなんですが、最初からそれを言われても納得しないのですが、「人を動かす」から入ってそれを言われると、何となく納得してしまうという、そういう仕掛けの本です。
人をどうマネジメントするか、ということを考えていくと、結局、自分をどうマネジメントすべきか、という課題にぶち当たる。これは真実だと思います。
ちなみに私はそれから、昔から読んでいた三国志を読み返して、この物語って人のマネジメントが学べるよな、と思って、さらには『孫子』や『韓非子』を読んでいったのですが、それはまたどこかで語るとして、話をドラッカーに戻します。
野田先生の証言で言う「経営者の役割」と「いかにして自らの能力を最も効果的に駆使すべきか」という課題は、これまで見てきたように別系列の本として書かれていましたが、これが融合するのが、『非営利組織の経営』という本でした。
この本では、最初に「非営利組織に関わる人は誰しもが社会のリーダーだ」という話から始まり、組織のマネジメントの話を経て最後に「自己開発」という内容で終わります。
詳しくはこちらからの連続記事で解説しています。
このように、ドラッカー自身は営利組織から非営利組織へ関心が移っていったわけですが、それについては下記で書いています。
ドラッカーの理想である「自由で機能する社会」、すなわち、人が誰かの犠牲にならず、生き生きと自らの役割を果たしている状態のマネジメントの理想形を描くのに、非営利組織の方が都合が良かったということなんだろうな、と私は思っています。
一方で、営利セクターにも有効なドラッカーのマネジメント理論の完成を、ということで、マチャレロ先生がドラッカーに要望を出して再構成したのが、日本語ですと『経営の神髄』と訳されている、Management Revised Editionです。本当に日本語訳ってわかりにくいですよね、と思うのですが、この本はドラッカー自身も認めたドラッカーの大著『マネジメント』の最新改訂版です。
この本の日本語版の最後の部分、Part10がまさに「個のマネジメント」とされています。元々の『マネジメント』の最後が、「マネジメントの正統性」について書かれていますので、これは大きな違いです。
ただ、気をつけなければならないのは、これも日本語訳です。原著を見ると、この Part10というのは存在せず、この部分は、Final Chaptersとなっています。ここに含まれる第45章は「自らをマネジメントする」(Management oneself)とあって、「自分の強み」「仕事のやり方」「価値観」を知って「どこで、いかに貢献するか」を考える、という話が書かれます。
ここで気づくのは、この章の目線はあくまでも個人にある、ということです。『現代の経営』においては、「自己統制させる方法」という視点だったのが、『経営者の条件』では「ほかの人間をマネジメントできるなどということは証明されていない」という話になって、『経営の神髄』では、「自らをマネジメントする」という話になっています。
実はこれはそのまま、私のベンチャー時代の思考パターンと同じです。私の上司に当たる人がビジネススクールで学び出して、その理論を持ち出してきていろいろな人を説得しようとして、それで煙たがられたということを眼前で見て、ああ、MBA的知識って人を動かすのには何の役に立たないんだな、と思ったのを思い出します。
人を動かそうとするならば、まず、自分が変わらなければならない。そこには学び=自身のアップデートが必要だ、というのは、真理なんだと思います。
それは交流分析の基本的な考え方でもあることを、前回、述べました。「過去と他人は変えられない。変えられるものは未来と自分」ということは「自分を変えられれば、未来の他人を変えられる」ということで、つまりは「自分が変わらずして、状況や結果が変わることはありえない」だからこそ、マネジメントする人間にとってセルフマネジメントが最も大事なのだ、というのが、今回の結論です。
でも、変わりたくないのも人間の特徴です。特にマネジメント職に就く、という成功体験を果たした人ならなおさら、その傾向は強いかもしれません。次回は交流分析の考え方を紹介しながら、この「変わりたくない人」のセルフマネジメントの扉を開いていきます。
現場からは以上です。お読みいただき、ありがとうございました。面白かった、参考になった、という方は是非、高評価いただけると嬉しいです。フォローも大歓迎です。
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