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ドラッカーの正当な後継者、マチャレロ先生のお仕事から、ドラッカーマップについて考える

「河童の目線で人世を読み解く」市井カッパ(仮名)です。
「すべての組織と人間関係の悩みを祓い癒し、自然態で生きる人を増やす」をミッションに社会学的視点から文章を書いております。

御覧いただき、ありがとうございます。

こちらの記事で、ドラッカーマップを作る、という構想を立ち上げました。

こちらでは、20周年を迎えた日本のドラッカー学会が「何を研究してきたのか」ということをまとめました。

こちらでは、ドラッカーの知人でもあり、その翻訳のほとんどを手掛けた上田惇生先生が、ドラッカーが鬼籍に入られたのが2005年ですので、その後に書かれた本で構想された、ドラッカーの世界地図、ドラッカーの百科事典について目次をまとめてみました。

今回はドラッカースクール系の後継者、マチャレロ先生のお仕事を通じて、ドラッカーマップについて考えてみたいと思います。

日本語訳されている著書も複数あるマチャレロ先生ですが、あまりその業績について紹介したり評論している記事などを見かけないですが、アカデミーヒルズで一度、講座を持ったようで、下記にプロフィールがありました。

引用します。

Joseph Maciariello(ジョセフ・マチャレロ)
ドラッカースクール教授
プロフィール
Joseph Maciariello
ニューヨーク生まれ。
ジョセフ・マチャレロ教授はピーター・F・ドラッカー経営大学院のマリー・ランキン・クラーク チェアー基金教授を務める。
ピーター・ドラッカーの唯一の共著者として、ベストセラーとなったThe Daily Drucker (HarperCollins, 2004) と The Effective Executive in Action (HarperCollins, 2005)を執筆。2008年にはピーター・ドラッカーのManagement: Tasks, Responsibilities, Practicesを改訂、2009年にはManagement Casesの改訂版をHaperCollinsより出版する。 
多数の学術論文の他に、2011年にはDrucker’s Lost Art of Management: Peter Drucker’s Timeless Vision for Building Effective Organizations (McGraw-Hill, 2011) を執筆し、ドラッカー研究では世界的な権威。
カリフォルニア州クレアモントにあるドラッカー経営大学院ではMBAとエクゼキュティブプログラムのために"Drucker on Management”を教える。マチャレロ教授が考案した"ドラッカー・カリキュラム(The Peter F. Drucker Curriculum)"は中国、インド、ブラジル、日本、そしてブルガリアの大学・企業・組織で現在使用されている。 過去に多数の企業・非営利団体の役員を歴任、最近では研究課題であるソーシャルセクターの機関の役員を務める。
1973年にニューヨーク大学より経済学博士号(PhD)を取得。 

https://www.academyhills.com/seminar/personal/tqe2it00000iw5sd.html

「ドラッカー研究では世界的な権威」「研究課題であるソーシャルセクターの機関の役員を務める」というところに、マチャレロ先生独自の研究なども知りたくなってきますが、こちらは2013年の紹介文のようで、残念なことに、2020年にお亡くなりになられたそうです。享年78歳。

さて、それでは、現在、私が入手しているマチャレロ先生が関わった書籍をその日本語訳、原題、原著出版年を並べてみましょう。

『ドラッカー365の金言』、The Daily Drucker、2004年
『プロフェッショナルの原点』、The Effective Executive in Action、2006年
『経営の神髄』、Management Revised Edition、2008年
『決断の条件』、Management Cases Revised Edition、2008年
『ドラッカー・ディファレンス』、The Drucker Difference、2010年
『ドラッカー 教養としてのマネジメント』、Drucker's Lost Art of Management、2011年

調べていてわかったのですが、マチャレロ先生のお仕事のほとんどはドラッカーとの共著の形を取っているため、彼の業績が隠れてしまっているようだな、ということです。出版社の事情もあったのかもしれません。

この中で個人的に注目したいのは、「『プロフェッショナルの原点』、The Effective  Executive in Action、2006年」と「『経営の神髄』、Management Revised Edition、2008年」の2冊です。何が注目かと言えば、そのタイトルです。

『経営の神髄』の「Management Revised Edition」は、そのまま訳せば、「マネジメント 改訂版」です。この本はドラッカーが1973~1974年に出した『マネジメント』の改訂版なのです。

『プロフェッショナルの原点』の方はわかりにくいですが、「The Effective  Executive in Action」はドラッカーが1967年に出した『経営者の条件』、原題は「The Effective  Executive」から来ています。そのままムリヤリ訳すと『経営者の条件 実践編』とでもなりますでしょうか?

つまり、この2冊はまったく違う日本語タイトルをつけられているのでわかりにくくなっていますが、ドラッカーの名著の書き換え版である、ということです。

『経営の神髄』のあとがきにあるドラッカーとマチャレロの対話が面白いので引用してみます。

 本書の構想は、2001年12月にさかのぼる。愚息の進路について助言をあおいだ昼食後の車中で『マネジメント』の改訂にはいつ頃取りかかられるのかと聞いた。「そんなことはしないよ」という答えに驚いて私は、「それではあなたの教えを、何をもとに教えていったらいいのですか」と言ってしまった。答えは「そんなものはいくらでもある」だった。
 2005年の6月8日、私は『プロフェッショナルの原点』の編集に立ち会っていた。教授は振り返ってこう言った。「改訂版を出したいと言っとられましたね。『現代の経営』の」。私は慌てて答えた。「いいえ、『マネジメント』のほうです」「そんなものはないよ」「『マネジメント─課題、責任。実践』です」「えっ、それは大変な作業だ」。私はうなずいた。教授は言った。「わかったよ」

『経営の神髄』下巻 P.429 編者からの謝辞 より

この話に出てくる『現代の経営』は、ドラッカーが1954年に出した書籍で、原題は「The Practice of Management」。ただし、この日本語タイトルは原題のニュアンスを間違って訳していると思っていて、実際には、「マネジメントの実践」が正しいんだと思います。

これは、当時の訳者や編集者を批判しているのではなく、おそらく最初に翻訳された当時、「実践」という言葉は日本ではあまり使われていなかったのだと思います。同様に、『経営者の条件』も訳者の上田先生は、違うタイトルにしたかったらしいのですが、既に1966年に野村先生の翻訳が出ていて、そのときに『経営者の条件』と訳しているのを変えられなかったそうです。

ちなみに余談がさらに脇道に反れますが、なぜ、「The Effective  Executive」が『経営者の条件』になったのかも、実はその野村先生版の『経営者の条件』のまえがきに書いていて、これも引用してみます。

彼は、本書をまとめ上げるために、相当以前から野心的構想をもち、また努力を重ねたようである。(中略)彼は私に、『現代の経営』と『創造する経営者』(中略)という既刊二書に触れて、「前者は<事業を経営する経営者の役割>について、また後者は<事業がすぐれた経済的効果を達成するために経営者の果たすべき役割>について論じたのに対して、自分はもう一つの基本的問題、すなわち<経営者がいかにして自らの能力を最も効果的に駆使すべきか>という問題に関して研究中で、近く別な書物を出版する予定だ」という意味のことを書き送ってきたが、その別な書物というのが、本書『経営者の条件』であることは言うまでもない。読者はこのドラッカー自身のことばのなかから、彼の学説体系のなかでの本書の位置づけを容易に理解することであろう。

野田一夫・川村欣也訳『経営者の条件』訳者まえがき P.iii より

この文章中にある「書き送ってきた」ものを見せて欲しい、と思いますが、おそらく野田先生の中で、Manager は「経営者」だったのでしょう。それでドラッカーの意図を組んで、ドラッカーの学説体系のなかでの本書の位置づけを明確にするために、『経営者の条件』というタイトルにしたんだろうな、と理解できるわけです。まあ、当時、今のようにガバナンスだコンプライアンスだとガチガチになるかなり以前の話ですので、経営における経営者の権限も期待も今よりかなり大きかったのだと思います。

さて、話をドラッカーとマチャレロ先生のやりとりに戻します。ドラッカーはこの『経営者の条件』の再整理版である(これもなんでこういうタイトルになったかなーという感じですが)『プロフェッショナルの原点』のお仕事を見て、彼自身が少し気になっていた『現代の経営』の改訂を任せてもいいかなーと思ったら、もっと大変そうな『マネジメント』をやるというので、そりゃ大変だ、となった、という話。

ここまで読まれて、頭が混乱してきた方も多いのではないかと思います。このように、ドラッカーの周辺というのは様々な思惑と歴史的経緯があって、それですっきりと説明できない状態になっています。ドラッカーマップ、とうのはそういうのを全部クリアにして、すっきりさせようという意図がありますので、こういうごちゃごちゃを整理しないと先に進めないと思い、あえてごちゃごちゃがなぜごちゃごちゃなのかを解説しています。

と、前置きした上で、さらにごちゃごちゃになる話として、実は、『プロフェッショナルの原点』の訳者あとがきに、訳者の上田先生による、実は日本語訳版はかなり変更が入っているという話が出てきます。

この日本語版では、共著者マチャレロ教授とも相談のうえ、ドラッカー以外の著作からの引用はすべて削除し、ドラッカーの著作からの引用を追加充実させた。

『プロフェッショナルの原点』訳者あとがき(P.206)より

いや、別な本になってますがな。まあ、理解できなくもないのは、引用元すべてを参照して許可を取るのは、出版社にとって至難の業。であれば、問題のない部分を翻訳して、それで減った部分を補いましょう、ということなんだと思います。

しかし、ドラッカー教授がマチャレロ先生のお仕事を見たのは、元の書籍です。ここにはドラッカー以外からの引用が入っていた、ということは、非常に興味深い話です。つまり、ドラッカーは思った、と。こいつはちゃんとわかっているな、と。単に自分の文章を知っているだけではなく、それを実践に応用して適用することができている、と認めた、ということなのだと思います。

結局、ドラッカーは『経営の神髄』の刊行を見ることはなかったわけですが、このようなマチャレロ先生のお仕事ですので、その信頼度は高いかな、と思うのです。(が、日本ではあまり『経営の神髄』が読まれておらず、『マネジメント』が信仰されているのは、やはり日本人は原典が好き、だからなのでしょうか。それともタイトルのせいなのでしょうか?)

ちなみにマチャレロ先生が『マネジメント』の改訂版は?と思った理由ですが、これもドラッカーの後半の著作の原題を見るとよくわかります。

『未来企業』、Management for the Future、1992年
『未来への決断』、Managing in a Time of Great Change、1995年
『明日を支配するもの』、Management Challenges for the 21st Century、1999年
『ネクスト・ソサエティ』、Managing in the Next Society、2002年

マネジメントについていっぱい書いてますねw

新しい書籍には当然のように、新しい知見が入っているわけで、それをUPDATEしないと、最先端のドラッカーマネジメントを教えられない、と考えるのは当然のことのように思います。

ただし、ひとつややこしいことに(さらにややこしくなるのか、という感じですが、)後半の著作の中には、ドラッカーが様々な雑誌などで書いたものを再編纂した、というものもあります。ということで、書籍の年代と中に書かれている文章の年代が一致していない、ということもあります。

そんな難しさを超えて、マチャレロ先生がドラッカーの没後とはいえ完成させた『経営の神髄』を読めば、少なくとも『マネジメント』に関してのドラッカー思想のアップデートは読み取れるかな、という印象です。
最後にこの著作から、冒頭に紹介されている「有機体としてのマネジメント」の図を紹介してこの文章を終わります。いずれ、この本はすべて解説していきたいと思っています。

『経営の神髄』上 P.2 より

まさに「図」ということで、この図もドラッカーマップの骨格作りに役立ちそうですが、前回とはまた違った図になっていて、面白いですね。元本のリンクもしておきます。

現場からは以上です。お読みいただき、ありがとうございました。面白かった、参考になった、という方は是非、高評価いただけると嬉しいです。フォローも大歓迎です。

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