【解説】SKY-HIとBE:FIRSTが「グラミー賞を選ぶ側」に。Recording AcademyのVoting Memberになるとはどういうこと?
こんにちは、Liky-Kです。
BMSGの活動を海外に紹介する英語メディア「BMSG Pulse」を運営しています。
SKY-HI氏とBE:FIRSTのメンバーが、グラミー賞を主催するRecording Academyの2026年新会員に選出されました。
まず思ったのは、
「かなりすごそう。でも、それってどういうこと?」
でした。
Recording Academyとは何なのか。
Voting Memberになるとは、どういうことなのか。
そしてこれは、BE:FIRSTがグラミー賞に近づいた、ということなのか。
私自身、ニュースを見ながら次々と疑問が浮かびました。
そこで、Recording AcademyやVoting Memberの仕組みから、今回の選出がBE:FIRST、そしてBMSGにとってどんな意味を持つのかまで、一つずつ整理してみました。
SKY-HIとBE:FIRSTの6人が「グラミーを選ぶ側」になった
まず、今回何が起きたのかを簡単に整理してみましょう。
BMSGは、
「SKY-HIとBE:FIRSTのSOTA、SHUNTO、MANATO、RYUHEI、JUNON、LEOの6人が、Recording Academyの2026年新会員に選出された」
と発表しました。
これにより7人は、2027年2月7日に開催される第69回グラミー賞の投票に参加する資格を得たことになります。
ただし、注意したいのは、BE:FIRSTがグラミー賞にノミネートされたとか、彼らの作品がグラミー賞の候補になったわけでもないという点。
今回のニュースは、「グラミー賞に選ばれる側」ではなく、その選考に関わるコミュニティに参加する、つまり、
かなり簡単に言えば、「グラミー賞を選ぶ側」の一員になったということです。
という話です。
そもそもRecording Academyとはどんな組織なのでしょうか。
Recording Academyとは、何をする組織なのか
Recording Academyとは、「グラミー賞をやっているところ」というのが一番わかりやすいイメージかもしれません。
あの世界最大級の音楽賞であるグラミー賞を主催している組織です。
ただし、その役割は授賞式を運営することだけではありません。
Recording Academyは、アーティスト、ソングライター、プロデューサー、エンジニアなど、音楽制作に携わる人々を中心とした専門家コミュニティでもあります。
また、音楽クリエイターの権利擁護やキャリア支援、必要な人への直接的な援助なども、その活動に含まれています。
Recording Academyは、2026年の新会員招待にあたり、新たなメンバーが、音楽コミュニティの声を世界の舞台で広げ、権利を守り、成長の機会をつくり、必要な支援を届けるという同組織の使命を担うことになると説明しています。
つまり、Recording Academyのメンバーになるというのは、単に「毎年グラミー賞に投票できる人になる」というだけではなく、世界の音楽業界を構成する一つのコミュニティに参加する、という意味も持っているのです。
この点は、今回のSKY-HI氏のコメントを考えるうえでも重要になってきます。

Voting Memberになると、何ができるのか
Recording Academyの会員にはいくつか種類があります。
今回、SKY-HI氏とBE:FIRSTの6人が選出されたのは、グラミー賞の投票に参加できるVoting Member(投票会員)です。
グラミー賞は、一般のファンによる人気投票で決まる賞ではありません。
Recording AcademyのVoting Members、つまり現役の音楽クリエイターたち(アーティスト、プロデューサー、ソングライターなど)が投票し、候補作品や受賞作品を選びます。
また、Recording Academyでは、会員である音楽クリエイターや専門家から、グラミー賞のカテゴリーやルール変更に関する提案を受け付ける仕組みもあります。つまり会員は、受賞者を選ぶだけでなく、変化する音楽シーンをグラミー賞がどう評価していくのかというプロセスにも関わり得る存在です。
一方で、Recording Academyの会員すべてがグラミー賞の投票権を持っているわけではありません。
たとえば今回、韓国のJYP Entertainmentでは、J.Y. Park、TWICEの9人全員、Stray Kidsの8人全員がVoting Memberに選ばれた一方、同社の経営幹部はProfessional Member(プロ会員)に選出されたと報じられています。Professional Memberはグラミー賞への投票権は持ちませんが、音楽業界を支える立場としてRecording Academyの活動に参加します。
今回7人が選出されたのはProfessional MemberではなくVoting Memberです。つまりRecording Academyの制度上、彼らはグラミー賞の投票に参加する資格を持つ「音楽クリエイター」の側に位置づけられたことになります。
誰でもVoting Memberになれるわけではない――求められる資格とは
では、Voting Memberには誰でもなれるのでしょうか。
会費を払えば誰でもグラミー賞に投票できる、
などという仕組みではもちろんありません。
Voting Membershipには、音楽クリエイターとしての一定の活動実績が求められます。
今回報じられている2026年のMembership要件では、原則として、
一つのクリエイティブ職種で12以上の商業流通された検証可能なクレジットを持ち、そのうち少なくとも5つが直近5年間のものであること、さらに業界関係者からの推薦を受けること
などが条件とされています。
(ただし、直近のグラミー賞ノミネート経験者などには、別の資格ルートもあります。)
重要なのは、
「人気があるから会員になれる」という制度ではない
ということです。
もちろん知名度の高いアーティストも多く参加していますが、Voting Memberとして求められているのは、基本的には音楽クリエイターとしての仕事と実績です。
では、BE:FIRSTの何が認められたのか
ここで気になるのが、
「では、BE:FIRSTの6人は、何を評価されて選ばれたのか」
ということです。
BMSGは公式発表の中で、今回の選出について、
「これまでのプロデュースワークやアーティストとしての活動実績、そして音楽性が、国際的な音楽機関において評価された結果」
と説明しています。
BE:FIRSTのメンバーはこれまで、作詞や楽曲制作、振付、パフォーマンスの構築など、さまざまな形で作品づくりに関わってきました。
そうした活動が今回の選出にどのように関係したのかは公表されていませんが、単にパフォーマーとしてだけではなく、作品制作に関わるクリエイターとしてBE:FIRSTを見ることは、今回のMembershipを理解する一つの手がかりになると思います。
4,000人以上が新たに招待――今回の選出はどのくらい特別なのか
「それなら、世界でもほんの一握りの人しか選ばれないの?」
と思うかもしれませんが、それは少し違います。
Recording Academyは2026年、4,000人を超える音楽クリエイターや業界関係者に新規Membershipへの招待を送りました。
つまり、今回のBE:FIRSTの選出を、「世界で数人しか選ばれない超狭き門を突破した」というように表現するのは正確とは言えません。
一方で、前述の通り、Voting Memberは誰でも自由になれるものでもありません。
音楽クリエイターとして一定の実績を持つことが求められ、その資格を満たした人たちがRecording Academyのコミュニティに加わります。
ですので、今回のニュースの価値は、希少性だけで測るものではないと思います。
むしろ大切なのは、
誰が、どんな立場で、世界の音楽コミュニティに加わったのか
ということなのだと思います。
TWICEやStray Kidsも――Recording Academyそのものも変わろうとしている
今回の2026年新会員には、BMSG以外にも、アジアの音楽シーンで知られるアーティストたちが加わっています。
日本からは、ラッパーのCOMA-CHI氏や音楽プロデューサーの加賀爪タッド氏、ほかにも複数の音楽クリエイターが新会員として招待されたと報じられています。
また、韓国からは、JYPエンターテインメントの設立者であるJ.Y. Park氏に加え、TWICEの9人全員、Stray Kidsの8人全員がVoting Memberとして招待されたと報じられました。
今回4,000人以上が招待された背景には、Recording Academyが近年進めているMembershipの刷新があります。
2026年の新規招待者の分布は、
半数が40歳未満、
43%が女性、
55%が有色人種
とのこと。
つまりRecording Academyは、長年指摘されてきた多様性や代表性の課題に対応し、従来の会員構成を維持するのではなく、より若く、多様で、世界のさまざまな地域で活躍するクリエイターを迎え入れようとしているということです。
その流れが本格化したとされる2019年には、BTSの7人もVoting Memberに選出されています。
その後もK-POPを含むアジアのクリエイターの参加は広がり、今回、SKY-HI氏とBE:FIRSTメンバーも新たに加わったということでしょう。
そして、その変化は会員構成だけに表れているわけではありません。
2027年の第69回グラミー賞では、新たに「Best Asian Pop Music Performance」部門が設けられることも発表され、
その対象として、K-pop、J-pop、C-popなどが明記されました。
これはもちろん、今回のSKY-HI氏やBE:FIRSTの選出と直接関係しているという意味ではありませんが、Recording Academyがより多様な地域のクリエイターをMembershipに迎え入れようとしていて、グラミー賞そのものにも、これまで独立したカテゴリーを持たなかったアジアのポップミュージックを評価する新しい「場所」が生まれているということでしょう。
この二つが同じ時期に起きていることは、世界の音楽産業が少しずつ変化していることを感じさせます。
つまり今起きているのは、
BMSGが日本から世界へ出ていこうとしているという一方通行の動きだけではなく、世界の音楽コミュニティの側もまた、これまで以上に広い地域の音楽やクリエイターを迎え入れようとしている。
ということで、
今回の選出は、その二つの動きが交わった場所にあると見ることもできます。
世界の音楽コミュニティそのものが広がろうとしているタイミングで、日本からSKY-HI氏とBE:FIRSTのメンバーがそこに参加することになった。
そこにも、今回のニュースが持つ一つの大きな意味があると思います。
「BE:FIRSTがグラミー候補になった」という意味ではない
ここで、改めて整理しておきます。
今回の選出は、BE:FIRSTがグラミー賞にノミネートされたということではありません。
一方で、Recording Academyの会員は、グラミー賞への作品提出・エントリーのプロセスにも関わることができます。
その意味では、世界最大級の音楽賞の仕組みに自ら参加する側になったことは、BE:FIRSTやBMSGにとって、グラミーという存在をこれまでより身近なものにする一歩となったとは言えそうです。
ただし、Membershipと、作品のエントリー、ノミネーション、そして受賞は、それぞれ別のプロセスです。
したがって、
「これでBE:FIRSTがグラミー受賞に近づいた」
と単純に考えるのは、少し違うと思います。
では、それでもなぜ今回のニュースには大きな意味があるのでしょう。
その答えについては、BE:FIRSTとBMSG、それぞれに分けて考えてみたいと思います。
BE:FIRSTにとって、今回の選出は何を意味するのか
BE:FIRSTはこれまで、日本から海外へ音楽を届けようとしてきました。
海外でライブをする。
海外のクリエイターと作品をつくる。
世界中のリスナーに音楽を聴いてもらう。
これらは、わかりやすい「グローバル展開」です。
でも今回、そこにもう一つ別の要素が加わりました。
世界の音楽コミュニティの中で、音楽を評価する側にも参加すること。
もちろん、Voting Memberになったからといって、突然彼らの立場が大きく変わるわけではありません。
それでも、自分たちの音楽を世界に届けるだけではなく、世界中の音楽クリエイターと同じコミュニティに参加し、その年の音楽について考え、投票する立場になる。
これはアーティストとして、とても興味深い変化だと思います。
そして、それはBMSGがこれまでBE:FIRSTを「与えられたものを表現する存在」ではなく、自分たち自身で作品に関わるアーティストとして育ててきたこととも重なって見えます。

「第二創業期」に入ったBMSGにとって、今回の選出は何を意味するのか
BMSGは2026年6月29日、会社として「第二創業期」に入ることを発表しました。
そこでは、今後5年間の柱の一つとしてGlobal Expansionを掲げ、2030年までにBMSG FESを海外で開催することにも挑戦するとしています。
そしてBMSGが繰り返し使っている言葉があります。
「世界にJ-POPの棚をつくる」
という目標です。
今回のRecording Academyへの参加は、その目標に深くかかわります。
海外でライブをすること。
海外で作品をリリースすること。
海外のアーティストとコラボレーションすること。
それらももちろん重要です。
しかし、世界の音楽産業と本当の意味でつながっていくためには、作品を外へ送り出すだけではなく、その音楽産業を構成する人々との関係を築き、そのコミュニティの中に参加していくことも必要になります。
Recording AcademyのVoting Memberになるということは、その一つの形なのかもしれません。
そして、今回公式サイトで発表されたSKY-HI氏のコメントを読んで、気付いたことがあります。
<代表取締役 CEO/アーティスト/プロデューサー:SKY-HI コメント>
かねてより、日本の音楽がグローバルで成功する未来を目指し、プロデュースやクリエイティブに取り組んでまいりました。そのような中、この度レコーディング・アカデミーのメンバーに選出いただけたことを、大変光栄に思っております。
一方で、挑戦はまだ道半ばです。世界の音楽コミュニティの一員として、日本の音楽シーンのさらなる成長に貢献し、その歩みが世界の音楽文化の発展にも少しでも良い影響をもたらせるよう、これからも真摯に取り組んでまいります。
彼はこのコメントの中で、BMSGという言葉を一度も出していません。
BE:FIRSTという名前も出していません。
彼がまず語ったのは、
「日本の音楽がグローバルで成功する未来」
です。
そして最後には、
「日本の音楽シーンのさらなる成長」
さらに、
「世界の音楽文化の発展」
について語っています。
もちろん、一つのコメントの言葉選びだけで、その意図をすべて読み取ることはできませんが、
少なくとも、このコメントでSKY-HI氏が「挑戦」と呼んでいるものは、BMSGという一企業の発展だけにはとどまっていません。
自分の会社を成長させる。
自社のアーティストを世界で成功させる。
その先で日本の音楽そのものが世界でより大きな存在になる未来を目指す。
そして、その歩みが世界の音楽文化にも何かを渡していくことになる。
SKY-HI氏の言う「挑戦」がそこまでを含むのだとすれば、今回Voting Memberとして世界の音楽コミュニティに参加することの意味も、少し違って見えてきます。

「世界にJ-POPの棚をつくる」とは、世界で聴かれることだけではない
今回のニュースを最初に見たとき、私は、「BE:FIRSTがグラミーを選ぶ側になった。これはすごいことなのでは?」と思いました。
調べていくうちに、その「すごさ」の見え方は少し変わりました。
2026年だけで4,000人以上がRecording Academyへ招待され、TWICEやStray KidsのメンバーもVoting Memberになっています。
世界でほんの数人だけに与えられる特別な称号ではありませんし、BE:FIRSTがグラミー賞にノミネートされたという話でもありません。
それでも私はむしろ、今回のニュースには大きな意味があると感じています。
今回調べてみて見えてきたのは、Recording Academyの会員になることは、単に毎年グラミー賞に一票を投じることだけではない、ということ。
会員であるクリエイターや音楽関係者は、カテゴリーやルールのあり方にも提案を行い、音楽業界の変化を賞の仕組みに反映させていくプロセスにも関わります。
つまり、日本から音楽を世界へ届けるだけではなく、世界の音楽をどう評価し、その文化をどう未来へつないでいくのか。そのコミュニティに、日本のクリエイター自身が参加することでもあるのです。
興味深いことに、2027年のグラミー賞では、J-popも対象として明記された「Best Asian Pop Music Performance」が新設されます。
もちろん、BMSGが掲げる「世界にJ-POPの棚をつくる」という目標と、この新カテゴリーの誕生に直接的な関係があるわけではありません。
それでも、世界にJ-POPを届ける動きが広がる一方で、世界最大級の音楽賞にもJ-popを評価する新たな場所が生まれ、そこに日本のクリエイター自身も参加していく。
その両方が少しずつ進んでいるのだとすれば、
「世界にJ-POPの棚をつくる」
という言葉も、これまでより少し広い意味に見えてきます。
SKY-HI氏は今回のコメントで、
「世界の音楽コミュニティの一員として」
という言葉を使いました。
もしかすると今回のニュースで最も重要なのは、グラミー賞への投票権そのものではなく、その「一員」になることなのかもしれません。
世界の音楽コミュニティに参加し、そこで得た経験やつながりを、いつか日本の音楽シーンにも還元していく。
そして、その場所から「日本の音楽がグローバルで成功する未来」を目指す。
今回の選出は、「まだ道半ば」だというその挑戦にとって、小さくはない一歩なのだと思います。
Written by Lily-K | BMSG Pulse
※参考記事
本記事公開後の加筆にあたり、以下の記事も参考にしました。
徳力基彦氏「BE:FIRSTもグラミーの投票メンバーに?グラミー賞にアジア部門が新設された意義」(Yahoo!ニュース)
※BMSG Pulseの関連記事
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