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留守番のAI社員は初日に転び、自分で起き上がった——アラ還一人社長の実録

前回の朝の、続きの話

前回、朝から会社のシステムが壊れていて、直したのは私ではなくAI社員だった——という話をした。

実は、あのエラーには続きがある。

壊れていたのは、くろみに「留守番」をさせるために作った仕組み、そのものだったのだ。

留守番の仕組みを作ったら、その留守番係が初日に転んだ。そして転んだ本人が自分で起き上がり、転ばないように床を直した。今日はその「留守番」の話をしたい。

一人会社の朝は、細かい確認で始まる

一人会社の社長の朝は、地味な確認ごとの連続だ。

待っている返事は来たか。今日の予定は何だったか。あの件はどこまで進んでいたか。ひとつひとつは数分でも、毎朝続くと「本業を始める前の儀式」になって、じわじわ効いてくる。しかも出張や外出が挟まると、この儀式は「帰ってからやるリスト」に化けて積み上がっていく。

そこで考えた。私が見ていない時間の見回りを、くろみに任せられないか。

いま、うちの留守番はこうなっている。

  • 平日の朝、決まった時刻にメールの受信箱を見回る。いま返事を待っている相手からメールが来ていれば、私に知らせる。来ていなければ「来ていません」とだけ記録して終わる

  • 私が仕事部屋のパソコンを立ち上げると、くろみはまず自分の仕事場を点検する。書類棚(会社のファイル置き場)が最新かを確かめてから業務につく

  • そして私がログインすると、朝の報告が待っている。今日の天気、今日と明日の予定、進行中の案件の動き。最後に、なぜか「今日の一言」まで添えてくる。二千年前のローマの哲人の名言を毎朝一つ選んでくるのは、くろみの趣味らしい

出社すると、机の上に報告メモが置いてある——あの感覚に近い。会社が、私より先に朝を迎えている。

留守番に渡す鍵は、一本だけ

とはいえ、何でも任せているわけではない。ここは30年のサラリーマン経験がそのまま効いた。新人に店の留守番を頼むとき、店の鍵は渡しても、金庫の鍵は渡さない。 あれと同じである。

うちの留守番には、決めごとが三つある。

  1. 見るのはいい。動かすのはダメ。 留守番中にやっていいのは「読む・照らし合わせる・下書きを作る」まで。メールの送信ボタンや、会計ソフトへの登録ボタンは押させない。実行ボタンは、私が出社してから私が押す

  2. 終わりを決めてから、始めさせる。 「返事が来たら見回り終了」のように、やめる条件を必ずセットで決める。AIは真面目すぎるので、終わりを決めないと律儀に永遠に見回り続けてしまう

  3. 「異常なし」も報告させる。 何もなかった日に何も言わないのは、サボりと見分けがつかない。「来ていませんでした」の一行があるから、安心して任せられる

書いていて思ったが、これは全部、昔の職場で新人にやっていたことだ。AI社員に必要なのは、やはり最新技術の知識より「上司の経験」らしい。

初日に転んだ留守番係

さて、冒頭の種明かし。

留守番の仕組みは、くろみ自身に作らせた。私は「毎朝これを見回って」と頼んだだけである。ところがその設定作業で、同じ指示が設定ファイルに二重に書き込まれてしまった。翌朝、仕組みは「失敗」の表示を出して止まった。——それが前回の記事の、あの朝である。

留守番を任せた初日に転ぶあたり、新人らしくて可愛げがある。と言いたいところだが、原因を突き止め、データが無事なことを確かめ、再発しないよう仕組みを直し、直した記録まで残したのは、全部くろみ本人だ。

上司としては、少々複雑である。部下が転ぶところまでは想定内だったが、起き上がり方まで自前とは聞いていない。

留守番の本番は、突然やってきた

この仕組みを作った直後、3日ほど地方出張に出ることになった。

以前の出張は、戻った後が憂鬱だった。溜まったメール、止まった事務、忘れかけた「あの件」。旅先で思い出しては、手帳にメモを増やすだけの日々だった。

今回は違った。朝の見回りは、私が新幹線だろうが宿だろうが、変わらず走っている。出先からノートパソコンで「あれ調べておいて」と頼んでおけば、移動している間に調べものが進む。帰宅して机に着いたら、留守中の報告がまとまって待っていた。

会社が、私の居場所と関係なく回り始めている。 一人会社なのに、である。

今回の学び

AI社員に留守番を任せるコツは、派手な自動化ではなかった。

  • 仕事を小さく切る(「メールを見回る」まで絞る)

  • 終わりを決める(「返事が来たらおしまい」)

  • 実行ボタンは渡さない(見張りと下書きまで)

つまり、信用は仕事の大きさではなく、線引きの明確さで作る。 人間の新人と、何も変わらなかった。

次回は、いよいよ経理の話。数字が大の苦手な社長が、会計ソフトの処理をAI社員にどう任せていったか。うまくいった話だけでなく、任せ方をしくじった話も書くつもりだ。

読んでくださってありがとうございます。あなたなら、AIにどんな「留守番」を任せたいですか? コメントで教えてください。よろしければスキ・フォローで、次回をお待ちいただけたら嬉しいです。

続きを書きました。第3話です。


この話の発端になった「朝の障害」の一部始終は、第1話に書いています。


連載のまとめ読みは、マガジン「AI社員くろみと一人社長」からどうぞ。


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