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【英国文豪、令和を歩く】第88回(完):Japanese hospitality done right, friendly smiles from day to night!

古い町家の風情を残した、薄暗くも落ち着いた喫茶店。使い込まれた木のテーブルに、二人の人物が向かい合っている。一人は華やかなワンピースを纏い、知的な光を瞳に宿した女性、ウィル。もう一人は、ツイードのジャケットを律儀に着こなし、手帳を傍らに置いた紳士、ドイル。窓の外では、京都の湿った熱気が陽炎を作っている

ウィリアムシェイクスピア                                                                                                                   

ねえドイル、日本の『おもてなし』って、なんだか私たちが劇場で大切にしている『沈黙の台詞』に似ていると思わない? 相手が何を求めているか、言葉に出される前にその心の機微を察して、そっと舞台を整えておく……。それはまるで、愛する人を待つジュリエットが、夜風の冷たさを案じて窓を閉めるような、細やかな慈しみの心だわ

                                                                                                                  コナンドイル

ふむ、至言だね。私がベーカー街の友人と共に見てきた数々の事件でも、実はそうした『細部への洞察』こそが真実への鍵だった。例えば、テーブルに置き忘れられた一本のパイプ……二度も銀で修繕され、大切に使い込まれたその跡を見れば、持ち主の愛着や人となりが手に取るようにわかる。日本の『おもてなし』も、そうした観察の極致ではないかな。客人が何を大切にし、何を不快に思うか。主人はそれを、玄関に撒かれた打ち水や、床の間に活けられた一輪の花に込めるのだ

そう、押し付けがましくないのが素敵なのよ! 嵐の夜に疲れ果てた旅人が、何も言わずとも差し出された一杯の温かい飲み物に心まで解かされる……。それは、私が描いた物語の中で、絶望の淵にいる者がふと見つけた一筋の光のようなもの。相手の『孤独』や『疲れ』を推理して、そっと寄り添う。これこそが、この国が世界に誇る最高の演出術だわ

全くだ。私の物語の船長が、北極の氷原で幻影を追い、あえぎながらブランディを求めた時のような切実な渇き……。それを察して、適切なタイミングで手を差し伸べる。これは単なる礼儀作法ではなく、一種の『知的な献身』だよ。ホームズなら、客人の靴の汚れや指先のチョークの跡からその日の行動を読み解き、彼が椅子に座る前に、最も好む銘柄の煙草を差し出すだろうね。それもまた、彼なりの奇妙な『おもてなし』と言えるかもしれない

ふふ、名探偵のおもてなしは少々スリリングすぎるけれど、その根底にある『相手を深く知ろうとする愛』は同じね。速度に酔いしれる祝祭の道も、自由なリズムが踊るジャズの夜も、そしてこの静かなおもてなしの心も……。目に見える形は違っても、誰かを喜ばせたいという情熱は、私たちの物語が時を超えて愛される理由と同じ。ドイル、あなたとのこの雑談も、私にとっては最高のおもてなしの時間だったわ!

ああ、私も同感だよ、ウィル。さて、そろそろ現実のベルが鳴る頃だ。日本の街角で、あるいはベーカー街の暖炉の前で、また君とこうして言葉を交わせる日を、ホームズが新しい難事件を待つ時のように、心待ちにしているよ

ねえドイル、最後にこの『日本』という国について、少しだけ夢想してみない? 私がこの国の土を踏んで感じるのは、まるで古い羊皮紙に書かれた伝説と、目も眩むような未来の幻灯が、一つの舞台の上で完璧に調和しているような不思議な感覚だわ。八百万(やおよろず)の神々が宿るという古い森のすぐ隣で、鉄の馬たちが銀色の光を放って駆け抜けていく……。この国自体が、一編の壮大なファンタジー・ドラマのようじゃない?

全くだね、ウィル。私がかつて北極の氷原で見た、あの神秘的な白い影や、クレーグ船長がその胸に秘めていた計り知れない内面的な深淵……。そうした『目に見えないもの』への畏怖と敬意が、この国の人々の血の中には今も脈々と流れているように感じるよ。彼らはアリストテレスやプラトンの論理を解する一方で、風の音や花の散り際に霊魂の囁きを聞き取る、実に鋭敏な感性を持っている。科学的な正確さと、霊的な神秘性――その二つを矛盾なく抱きしめている国、それが日本だ

そうね。賑やかな市場の喧騒(けんそう)から一本裏道に入れば、そこには静寂に包まれた古い社(やしろ)があって、人々の祈りが静かに積み重なっている。その対比の美しさといったら! どんなに文明が進んでも、彼らは『季節の移ろい』という名の、神様が書いた脚本を決して疎かにしないわ。桜が舞えば命の輝きを愛で、雪が降れば静寂の中に心の安らぎを見出す。そんな彼らの生き方そのものが、一つの芸術作品のように私には見えるのよ

ああ、そしてその精神は、あの『珍本蒐集家の老人』がボロボロの本を慈しむように、古いものを大切に守り抜く強さにも繋がっている。新しい技術を貪欲に取り入れながらも、その根底にある『日本というアイデンティティ』の背骨は決して曲がることがない。それは、荒れ狂う海の上で冷静に舵を取る熟練の海員のような、揺るぎない誇りと決断力を感じさせるね。表面的な華やかさの裏にある、そうした『精神の規律』こそが、私がこの国に強く惹かれる理由だよ

ふふ、さすがはドイル、鋭い観察眼ね。この国は、訪れるたびに新しい『伏線』を私たちに見せてくれる。解き明かしても解き明かしても、また新しい謎と魅力が湧き出てくる……。まるで終わりのない名作ミステリーのようにね。さあ、私たちのこの旅も、この美しい日出ずる国の光の中で、一度静かに幕を下ろしましょう。でも、この舞台の続きは、きっとまたどこかの街角で、あるいは誰かの心の中で、即興のジャズのように新しく奏でられ始めるはずだわ!

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