【英国文豪、令和を歩く】第39回:The Nazi regime, a shattered dream, showed history’s darkest extreme.
京都、鴨川のほとりに建つ、重厚な石造りの洋館。その一角にある書斎で、二人は沈痛な面持ちで、窓の外に広がる穏やかな春の景色を眺めている。テーブルの上には、当時の不穏な空気を伝える古い新聞の切り抜きが置かれている

(新聞の見出しを指でなぞりながら、低い声で)
ねえ、ドイル。私たちがかつて描いた悪党たちは、復讐に燃える裏切り者や、私利私欲のために娘を囲い込む強欲な男たちだったわ。でも、この「ナチス」という名の集団が歴史に刻んだ足跡は、どんな悲劇作家の想像力も及ばないほど、冷酷で組織的な狂気に満ちているのね。まるで、国全体が一つの巨大な、逃げ場のない「密室」になってしまったかのよう。

(パイプを握りしめ、厳しい表情で窓の外を見つめながら)
ああ、ウィル。私の知る「彼」が対峙してきた悪は、あくまで個人の情熱や、あるいはモリアーティのような天才的な個の犯罪だった。だが、この組織は違う。彼らは「法」そのものを歪め、正義の剣を虐殺の道具に変えてしまった。英国の法律がかつてブレシントンのような卑劣な裏切り者さえも保護しようとしたあの高潔な精神を、彼らは足蹴にしたのだよ。

(ため息をつき、ストールを固く結び直して)
「選ばれた民」という物語を勝手に作り上げ、それ以外を排除する……。それは、舞台の上で演じられるどんな独裁者の独白よりも傲慢だわ。彼らの掲げた象徴(ハーケンクロイツ)は、本来なら幸運を呼ぶはずの古い記号だったのに、今では死と絶望の代名詞になってしまった。言葉や記号が、これほどまでに人を呪う道具になるなんて。

(鋭い口調で)
その通りだ。私の友人が「舞踏人」の暗号を解き明かし、悲劇を未然に防ごうとしたように、知性は本来、生命を守るためにあるべきものだ。しかし彼らは、その知性を「効率的な排除」のために使った。南アフリカから獲物を求めて帰国したあの悪党たちでさえ、まだ「個人の欲望」という理解可能な動機を持っていた。だが、集団心理に憑依された狂気は、論理的な推論さえも無力化してしまう。

(悲しげに微笑んで)
でも、ドイル。暗闇が深ければ深いほど、そこから逃れようとする人々の光もまた強く輝いたはずよ。収容所の壁に刻まれた名もなき詩や、命を懸けて隣人を匿った人々の物語……。それこそが、ナチスという巨大な悪に対する、人類の「反撃の一幕」だったのではないかしら? どんなに残酷な支配者も、人の心の中にある自由への渇望までは支配できなかった。

(静かに頷き、手帳に何かを書き留める)
「英国の正義の剣は、正当な仇を報じてやらなくてはならない」……かつてホームズが言った言葉だが、この巨大な犯罪に対しても、歴史という名の法廷が審判を下した。だが、ウィル。我々が学ばねばならないのは、このような怪物は、普通の人間が「思考」を止め、誰かの言葉を盲信し始めた時に生まれるということだ。

(窓を少し開け、春の風を入れながら)
ええ。私たちは物語を語る者として、常に問い続けなければならないわね。その言葉が、誰かを救うためのものか、それとも誰かを縛るためのものかを。ドイル、この穏やかな京都の街に、二度とあのような影が落ちないことを祈りましょう。

(眼鏡を拭き、再び凛とした表情に戻って)
同感だ。謎を解くのは、平和な日常を守るためであって、それを壊すためではない。さあ、ウィル。少し重い話になりすぎたな。この不穏な歴史を教訓として胸に刻みつつ、今は目の前の、この平和な午後の光を大切に味わうとしよう。
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