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心筋炎発症の比較によるミスリード

前回に続き、「第7回 医薬品等行政評価・監視委員会」の議事録から、注目すべき発言を取り上げます。

医薬品等行政評価・監視委員会とは

「医薬品等行政評価・監視委員会」とは何かについては、前回の記事に書きました。

医薬品等行政評価・監視委員会は、医師、薬剤師、法律家、薬害被害者など、さまざまな立場の委員で構成され、医薬品などの安全性の確保や、薬害の再発防止の役割を果たすことが期待されています。

委員の中で、薬害(特にサリドマイド薬害)に関して多数の論文・著作があり、講演や講義等の豊富な経験を有する佐藤嗣道氏(東京理科大学薬学部 准教授)の発言に注目しています。


新型コロナワクチン(コミナティ筋注5~11歳用)

前回の続きで、第7回の議事録から佐藤氏の発言を取り上げます。

○佐藤委員 要は、オミクロン株に対する有効性は十分なデータがないし、オミクロン株は今、収束に向かっていますので、その次の波が来るとしても、それに対する有効性のデータが全くない中で、20歳未満の方は、今、トータルで8人亡くなっていますが、そもそも新型コロナウイルス感染症による死亡のリスクはほぼゼロに等しいのです。
 実はワクチン接種後の死亡は、10代で既に6人報告されているわけです。これを5~11歳まで拡大したときに、どういうことが起こるか、非常に心配です
 20歳未満の方に対しては、COVID-19による死亡のリスクがほとんどない中で、接種後の死亡が数例でも起きるのならば、私はそれだけで薬害と言っていいレベルではないかと思うわけです。
 要するに、有効性に関するエビデンスが十分にない中で、20歳未満の方にワクチンの接種を勧奨することは、一方的にリスクを負わせることにならないか。死亡という一番重篤な結果についてのことですが、そういうことすら懸念するわけです。
 この委員会は、薬害を防止することが目的なので、私自身もそうですが、かなり安全側に立った観点で考えていかないと。想定される最悪の事態を考慮した上で、どういう対策が必要かということを考えていかないと、薬害は未然には防げないわけです。
 結果的にそこまで心配する必要がなかったということならいいわけですが、全部結果が分かってから、やはりこれは薬害でしたねでは、この委員会の役割が果たせないわけで、私自身はそのことを非常に懸念していることを意見として申しておきます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25154.html

佐藤氏の懸念はもっともだと思います。議事録を読んでいると、この委員会が何のためにあるのかわからなくなります。

佐藤氏は、心筋炎について、よくテレビなどでも扱われる比較についても指摘しています。

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000914103.pdf

この資料では、そのまま比較するべきではないものを比較しています。このまま見ると、新型コロナに感染して心筋炎になるリスクと比べたら、ワクチンを接種して心筋炎になるリスクはかなり低いと誤解します。下記でいう42ページというのが、上の資料です。

○佐藤委員 今の御説明をありがとうございます。
 注意喚起をするようになったことは大変いいことだと私は思っているのですが、もう少しきちんとそのことを強調する必要があるのかなという観点で御意見を申し上げます。
 先ほどの説明資料3-3の42ページに、国内でのCOVID-19による入院患者における心筋炎の発生割合、あるいはこれは米国だと思われるのですが、海外でのCOVID-19感染症患者ですから、恐らく発症している症状がある方の中での心筋炎の発生割合ということだと思うのですが、それと比較しているのですが、まず、この比較の表自体が非常にナンセンスというか、ミスリーディングです
 要するに、比較しなければいけないのは、834とか450という数字が出ているのは、日本の場合は、COVID-19を発症して入院した中での心筋炎の発生割合ですので、リスクを考える場合には、そもそもCOVID-19を発症して入院するリスクを掛けて比較しないと、意味をなさない比較であるということなのです。この図が独り歩きして、マスコミなどでも使われていて、非常にミスリーディングです。ですので、この資料に関しては削除するなり、こういう比較は適切でないとお認めいただけないかというのが一つです。
 むしろ先ほど出していただいた一般における心筋炎の発生率と接種後の発生割合を比較するほうが非常にリーズナブルな比較であるということです。
 とにかく、この図を使うのは明らかに誤っていると思いますが、いかがでしょうか。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25154.html

佐藤氏は、「そもそもCOVID-19を発症して入院するリスクを掛けて比較しないと、意味をなさない比較である」と言っています。

コロナ陽性となっても、症状が出ない人、入院しないで治る人の方が多いのです。コロナ陽性になって入院する率がそもそもそれほど高くないので、入院した人の中での発症率とそのまま比べることに意味があるとは思えません。

しかも、ファイザー、モデルナは10代、20代と分けているのに、コロナの方は国内が15歳~40歳未満、海外が12歳~17歳となっていて、これもそのまま比較できるものではありません。

それに対する、予防接種室ワクチン対策専門官の回答が下記になります。

○予防接種室ワクチン対策専門官 先生、御指摘ありがとうございます。
 御指摘のように、データにつきましては、実際に直接的に比較できるデータがなかなかない中、制限がありながらも、あくまで参考となるデータとしてお示ししたものでございまして、それを審議会の資料としてお示しした上で、御覧いただいたところでございます。
(中略)
 我々としては、できることをしているところでございます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25154.html

「直接的に比較できるデータがなかなかない」ということは、これも直接比較できるデータではないと認めていると読み取れます。

この比較が出た際に、Twitterなどでは早くから比較できないものだと指摘している人がいました。けれども、テレビに出演している専門家と呼ばれる人たちが、そのまま比べているのを何度も見たことがあります。

例えば、2021年10月16日のYahoo!ニュースです。感染症専門医がこれをそのまま比較して使っています。

https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20211016-00263371

10代・20代男性の心筋炎 モデルナとファイザーのワクチンでの頻度の違い 2021/10/16(土) 9:38 (一部引用)

しかし、健康な人と感染者とを単純に比較はできませんが実際に新型コロナウイルスに感染したときに起こる心筋炎の頻度(日本国内の15〜39歳で100万人当たり834人)よりはずっと低く、現時点においてはどちらのワクチンも接種によるベネフィットがリスクを上回っていることから、今後も接種するご自身が「ワイはファイ卒よりもモデ卒になりたいんや!」とモデルナを希望の場合は接種可能です。若い方も引き続きワクチン接種をご検討ください。

https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20211016-00263371

予防接種室ワクチン対策専門官は「できることをしているところでございます」と言っていますが、比較すべきでないデータを並べた図を堂々と出すことにより、上記のように使われてしまっているのです。この比較に疑問を持たずに使う方にも問題があると思いますが、厚労省がリーフレットなどに使うべきものではないでしょう。

接種後の心筋炎に関するデータ

4月13日に公開された副反応疑いの報告には、心筋炎に関するデータもあります。

資料1-6-1 新型コロナワクチン接種後の心筋炎又は心膜炎疑いとして報告された事例の概要(コミナティ筋注)

資料1-6-2 新型コロナワクチン接種後の心筋炎又は心膜炎疑いとして報告された事例の概要(スパイクバックス筋注)

けれども、これもしっかり読まないとミスリードの可能性があると思います。

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000928705.pdf

まず、ブライトン分類レベルというものがあり、症例定義に合致するかしないかに分けられていることを知る必要があります。ここで問題になるのが、レベル4です。「心筋炎として報告されたが、十分な情報が得られておらず、症例定義に合致すると判断できない」というのは、報告書の不備などによりレベル4になる可能性もあると思います。症例報告を見ていると、医師により細かく書いている人もいれば、そうではない人もいます。ですから、ちゃんと調べればレベル1~3になる人も、4になっているかもしれません。

それを踏まえて資料を見ると、頻度報告はレベル1~5となっています。
100万回あたりにすると、ぱっと見が少なく思えることもわかります。

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000928704.pdf


ところが、年齢別の報告はレベル1~3となっています。

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000928704.pdf

各レベルの報告は下記のようになっています。

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000928704.pdf

※評価記号
α:「ワクチンと症状名との因果関係が否定できないもの」
β:「ワクチンと症状名との因果関係が認められないもの」
γ:「情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できないもの」

レベル5(心筋炎ではない)は0ですが、一番多いのがレベル4なのです。そもそも、医師がわざわざ報告するのだから可能性があると思うのですが、年齢別ではなぜかレベル4をはずしています。

ワクチン接種後に心筋炎が疑われた場合は、心筋炎調査票に記入して報告することになっています。これがまた、検査項目がたくさんあります。TTSと同様に(下記参照)、1つでも欠けていたらレベル4になってしまうのかもしれません。

4月13日の報告から、レベル4の事例を調べてみました。一番右に、レベルが書かれています。専門家の評価「γ」は、情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できないものです。

資料1-2-2-1 より

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000928673.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000928673.pdf

下の事例17350を、資料1-2-3-1で詳しく見てみます。
重複している部分などは編集してあります。BNT162b2は、コミナティ筋注(ファイザー製)のことです。時系列で追えるように、順番を入れ替えたりしています。長いので、詳細な検査値なども省いています。

事例:17350 13歳男性 コミナティ筋注2回接種 ロット番号:不明
関連する病歴は以下を含んだ:
「過敏性腸炎」、発現日:2021/10(継続中)、「バセドウ病」、発現日:2019/08(継続中)。
2021/12/22(接種日)、コミナティ(ロット番号:FH3023)初回接種。

事象の経過は、以下の通りである
2022/01/12 10:00、 BNT162b2(コミナティ)2回目接種
1/13、朝摂氏 38.7 度と夜摂氏 39.9 度であった。
1/14、朝摂氏 36.8 度、朝から強い胸痛が現れた。胸部X線、心電図と心臓(判読不能)は異常なしであった。
1/15、胸痛改善。心電図:V3-V6 ST 上昇、心臓(判読不能)異常なし。
1/17、症状なし。2022/01/17(ワクチン接種から 4 日と 14 時間後)、事象の転帰は軽快であった。報告された心筋炎は、劇症型ではなかった。
報告医師は事象を重篤(2022/01/14 から 2022/01/18 まで入院)と分類し、事象と BNT162b2 との因果関係は関連ありと評価した。

心筋炎調査票
病理組織学的検査は未実施であった。高感度 CRP は未実施であった。
D-ダイマーは未実施であった。その他の特記すべき検査はなしであった。
心臓 MRI 検査は未実施であった。

報告者のコメント:症状および経過から COVID-19 ワクチン接種による心筋炎と判断した。

2022/01/14、患者は肝機能障害を発現し、事象の転帰は、治療なしで未回復であった。

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000928682.pdf

報告医師が「COVID-19 ワクチン接種による心筋炎と判断した」とコメントしていても、心筋炎調査票に未実施の項目があったので、レベル4になったのでしょう。

もう1点注意が必要なのは、「軽快」という言葉です。疾患に対して治療を行って、改善がみられたら「軽快」とされます。退院後、通院する必要があるなど、完治していない状態です。これがどの程度なのかは、ケースによって異なるでしょう。漢字を見ると、軽く済んだというイメージを受けますが、とても悪い状態から治療して改善されても「軽快」となるのだと思います。

厚労省が公開しているデータには、このようなものが含まれていることも知っておく必要があると思います。


死亡事例の因果関係

死亡事例の因果関係について、佐藤氏は下記のように言っています。

○佐藤委員 参考資料1ですが、日本法医病理学会という学会がホームページ上に出している声明なのですが、接種後の死亡事例の因果関係の評価において、解剖することである程度解明できるという声明をされていて、積極的な解剖の実施が求められることがあって、御紹介させていただきます。
 学会の理事長の先生に直接お伺いしたのですが、心筋炎の事例についても、亡くなった場合に、そのための検査をすれば、心筋炎が原因であるかどうかについてはある程度分かるだろうということです。
 それから、虚血性心疾患による死亡に関しても、血栓があったかどうかも分かるということで、この委員会としては、接種後の死亡に関しては、接種者と非接種者の集団での比較をすべきとの意見を出させていただいたわけですが、一例一例の評価においては、解剖を積極的に行うことが必要であるという意見があることをこの場で御紹介させていただいて、心筋炎に関しても、恐らくそれが役に立つだろうということを御紹介させていただきます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25154.html

そして最後に、委員長から驚くべき発言がありました。

○磯部委員長 (一部引用)
 
 ちなみに私は、予防接種・ワクチン分科会にいたものですから、むしろ臨時の予防接種を推進する側にいたので、ここで司会をやっていていいのかなと、悩みながらしています。 

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25154.html

ワクチンを推進する側にいた人が委員長って、第三者性を有するといえるのでしょうか・・・。