60年前に起きた筋肉注射による薬害
厚労省が中学生向けに作った「薬害を学ぼう」という教材には、筋肉注射による薬害についても書かれています。過去に起きた薬害について知ることは、今起きていること、これから起きようとしていることを知ることにつながります。
筋肉注射による四頭筋拘縮症(四頭筋短縮症)
前々回の記事で取り上げた「薬害を学ぼう」という教材(下記参照)には、四頭筋短縮症という薬害についても書かれています。
解熱剤(筋肉注射)による四頭筋短縮症

大きな社会問題となったのが1973年ですが、1962年頃から発生していました。
「薬害筋短縮症の会」のサイトによると、「筋短縮症」と「筋拘縮症」は同じ症状を表しているそうです。以前に「筋短縮症」と診断された人もいるけれど、1975年に日本整形外科学会で「筋拘縮症」に統一されたとのこと。
四頭筋短縮症については、「薬害を学ぼう」に詳しくは書かれていなかったので、詳しく書かれた資料を探しました。
一般財団法人 医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団のサイトに、いくつか資料がありました。
筋肉注射による大腿四頭筋拘縮症問題は、医薬品の副作用というよりは、注射剤の使い方、注射部位等が適切でなかったために、注射剤の成分が周囲の筋組織に対して、物理的、化学的な刺激を与えて障害につながったものである。
このコラムをスライドとして使えるようにまとめた資料も公開されているので、以下、こちらを引用させていただきます。
戦後の薬害事件の概要と教訓 58ページ~63ページ
筋肉注射による大腿四頭筋拘縮症事件 ① (筋短縮症・筋拘縮症とは)
• 注射の際の物理的刺激と注射剤による筋肉組織の破壊によって外形の
変化や運動機能に障害がもたらされる
• 筋肉が伸縮性を失い短くなった状態を示す「筋短縮症」よりは、筋が短く
なった結果、関節が稼動性を失い機能障害を生じた状態を示す「筋拘縮
症」の病名が用いられる
• 注射の場所によって、大腿四頭筋短縮症(太もも)、三角筋短縮症(肩)、上腕三頭筋短縮症(腕)、殿筋短縮症(尻)等の種類がある
• 子供に、抗生物質や解熱剤の注射を大量・頻回に行うことにより発症
症状については、「薬害筋短縮症の会」のサイトに詳しく書かれています。
被害者の多くは太ももに接種しており、皮膚症状としては、太ももがでこぼこと硬く凹んでいたり、硬い筋状のしこりがあります。この足を見られるのが嫌で、女の子ではスカートをはかなくなったり、男の子でも体育の時に短パンになるのが辛かったそうです。
運動障害は、傷害された筋肉部分によって3タイプに分けられます。
例えば直筋型は、うつぶせになって膝を曲げていくと、ある角度になると太ももが突っ張り、腰が反ってお尻が浮き上がってしまいます。そのほかのタイプについても、下記のページで詳しく解説しています。
戦後の薬害事件の概要と教訓(58ページ~63ページ)に戻ります。
筋肉注射による大腿四頭筋拘縮症事件 ② (経緯)
• 1962年 静岡県で大腿四頭筋短縮症発生
• 1969年 福井県で大腿四頭筋短縮症多発
• 1973年
・ 山梨県で大腿四頭筋短縮症の多発が社会問題化
・ その後、北海道、福島、名古屋等でも発生報告、地域病の様相
・ 新聞報道「幼児23人が奇病-歩行困難・風邪の注射が原因か」
・ その後のボランティアによる自主検診等により患者報告増加
• 1974年以降 解熱剤や抗生物質の風邪への使用激減、患者発生も激減
• 1975年12月 厚生省の調査では、重症1,552名、軽症1,177名
• 1975年以降 各地で製薬会社、国、医療機関を提訴
• 1983年以降 各地で判決、和解、国は勝訴
• 1996年 医療機関や製薬会社と和解(京都)、各地の裁判終結大腿四頭
発生地が偏っていたので、地域的な奇病ではないかと疑われた時期もあったそうです。大きな社会問題となったのが、1973年。新聞が「幼児23人が奇病ー歩行困難・風邪の注射が原因か」と報じたことがきっかけになりました。
1975年以降、各地の裁判所で国、医療機関、製薬会社を被告とする提訴が行われましたが、いずれも国は勝訴。医療機関と製薬会社とは、順次和解が成立したそうです。
裁判により薬害と認定されたものの、公的な医療補償や相談窓口は無いまま放置されています。被害者は 中高年となり、加齢とともに運動器の不調に苦しむ人も多いそうです。けれども、筋拘縮症(筋短縮症)を知る専門医は少ないため、全国どこにいても必要な治療が受けられるように、「薬害筋短縮症の会」は活動を続けています。
筋拘縮症の原因(原因)
• 風邪による発熱で小児科医院を受診すると、抗生物質や解熱鎮痛剤を小児
の上腕、大腿部、臀部等に注射
• 点滴技術が一般化される1970年頃までは、小児への水分補給に50~100mlの大量皮下注射や持続大量皮下注射が行われていた
• 医療手技が関係するため、特定の地域や医療機関において多発する例も報
告され、一時は奇病とさえ呼ばれる
• 注射は小児科、産科、内科等が、大腿四頭筋短縮症の治療は整形外科が担
当したため、連携が不十分
• 当初は、関係学会等により、注射が原因であることが認められなかったため、被害の発生が続いた
• 医療過誤問題に発展する可能性があるため、関係者が原因の特定に慎重
だった
点滴技術が一般化される1970年頃までは、小児への水分補給に50~100mlの大量皮下注射や持続大量皮下注射が行われていたことから、多くの被害を出してしまいました。そして、親の側も、効き目のよい注射を心理的に求めていたという背景があったようです。
大腿四頭筋拘縮症の対応 ① (対応)
• 1976年2月 日本小児科学会ができる限り小児には注射を避ける提言
を発表
① 注射は親の要求ではなく、医師の医学的判断により実施
② 風邪(症候群)には注射は極力避ける
③ 経口投与で十分ならば注射を避ける
④ 抗生物質と他剤との混注は行わない
⑤ 皮下大量注射は行わない
• 組織への物理的、薬理的な刺激の少ない注射剤の開発
• 製薬企業における医薬品副作用情報収集と分析の徹底
• 添付文書やMRによる、医療機関への情報提供の周知徹底
この薬害は、医薬品の使い方が問題となったケースです。医療機関や製薬会社には、裁判で下記の責任が述べられました。
大腿四頭筋拘縮症の対応 ② (対応)
• 日本小児科学会の提言を受けて、小児科では注射は必要最小限に行うこ
とになり、同様の事例は大幅に減少した
• 製薬会社では、できるだけ組織への物理的、薬理的な刺激の少ない注射
剤の開発の努力がされるようになった
• 製薬会社の責任について裁判の判決では
① 製薬会社の組織力をもってすれば、医薬品の副作用等の有害作用に関
する情報の収集と分析をなすに十分な能力を有しており、かくして獲得し
た知見に基づき医薬品の副作用等の有害作用を掌握することが容易でかつ
可能な立場にある
② 筋肉注射の使用者である一般の医師に対して、筋拘縮症の発症に関す
る知見の周知徹底を図るため、その旨を使用上の注意または警告として能
書に記載し、あるいはプロパーをして医師に伝達せしめる等可能な限りの
方途を講ずるべき義務を有していた
新型コロナワクチンでは、誤注入による被害も出ています。今回も製薬会社は、SIRVAの発症について「医師に伝達せしめる等可能な限りの方途を講ずるべき義務を有している」はずです。なぜ、また同じようなことが起きているのでしょうか。
