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デザインを “手法” で語る人は一生「設計」にたどり着けない。Web業界歴20年のプロが教える、実務で使うデザインの設計順

「高級感を出したいなら余白を多めに」
「若い人向けならポップに」
「信頼感が欲しいなら青系で」

デザインの現場では、こんな言葉がよく出てきます。でも、それは本当に「デザインの本質」でしょうか。

実際には、表現手法はあくまで結果であって、先にあるのは「誰に、何を、どう感じてほしいか」という設計です。

にもかかわらず、依頼側も作り手側も、特に初心者ほど、最後に決まるはずの「表現」を最初に置いてしまうことがよくあります。

その結果、競合サイトや他社事例をいくら見てもデザインに一貫性が出ない。サイトトレースしても応用が効かない。クライアントの要望にも振り回されやすい。そんな状態に陥ります。

この記事では、デザイン初心者の方々とのやり取りを通じて見えてきた、「デザインを表現から考えてしまう人」がハマりやすい落とし穴を整理します。

この記事で得られること
◉ デザインは表現から考えないと分かる
◉ 余白や色は設計の結果だと分かる
◉ 設計できない人の共通点が見える
◉ 実務で必要な設計の順番が分かる




なぜ「表現」からデザインを考えると、一貫性が消えて手が止まってしまうのか


デザイン初心者によくあるのが、「こういう動きのサイトを作りたい」、「黒系のサイトを作りたい」、「この写真みたいなトーンにしたい」と、表現手法から入ってしまうことです。

もちろん、それ自体が悪いわけではありません。問題は、それを設計より先に置いてしまうことにあります。

本来であれば、まず決めるべきなのは、ターゲットは誰か。サイトで達成したい目的は何か。誰の何をどうマインド変化させて何をさせたいのか。そのためにどんなコンテンツが必要で、どんな順番で見せるべきなのか。ということです。

その上で最後に、「その意図を一番うまく伝えられる表現は何か」を考える。

でも、この順番が逆になると、デザインはすぐに薄くなります。余白、色、フォント、写真、動き。そうしたものが全部、意図のない飾りになりやすいからです。

つまり、表現から考える人が設計にたどり着けないのは、センスがないからではありません。考える順番が逆だからです。


初心者が陥る「手法の対応表」の罠:余白や色は世界観ではなく “結果” である


では、なぜ人は設計より先に表現から考えてしまうのでしょうか。

多くの人は、デザインを意味ではなく、見た目の特徴で覚えてしまう傾向があります。

その結果、頭の中にこんな「手法の対応表」ができていきます。

高級感 = 余白多め
信頼感 = 青
親しみやすさ = 丸み
おしゃれ = 明朝体
今っぽさ = 動きや動画

これは完全に間違いとは言いません。実際、そういう傾向はあります。でも、それ自体は「世界観」ではなく「表現手法」です。

なぜその余白なのか。なぜその青なのか。なぜその動画なのか。という意図が抜けたまま、形だけを覚えてしまっている。

これをやると、別案件に応用できません。手法は条件が変われば、最適解も変わるからです。

たとえば、同じ「高級感」でも、静かな高級感、華やかな高級感、伝統的な高級感、先進的な高級感では、最適な表現はまったく変わります。

だから手法から入ると、見た目は真似できても、設計は真似できないという状態になります。


実務のスタンダード:プロはフォントや色を決める前に「何」を考えているのか


では実務では、実際にどんな順番で考えているのでしょうか。

実務では、最初にフォントや余白を決めることはほとんどありません。先に考えるべきものは、もっと手前にあります。

まず、誰がターゲットなのか。
次に、サイトで達成したい目的は何か。

この2つが決まると、その目的を達成するために必要なコンテンツが見えてきます。

さらに、そのコンテンツをどんな優先順位・順番で見せるべきか、という情報設計の話になります。

そこまで決まって初めて、どんな世界観なら刺さるのか、どんな演出なら最適なのか、を考える。つまり順番としては、ターゲット・目的 → 情報設計 → 世界観・表現です。

これが逆になると、本末転倒なことが起きます。

たとえば、サイト演出はめちゃくちゃ若者受けしそうなのに、実はターゲットは中高年層だった。

あるいは「動画を使いたい」と言われたけれど、その動画が30分以上あって途中で離脱されて誰も購入ボタンまで至らなかった…。など、こういうケースは、実務でも珍しくありません。

表現は最初に置くものではなく、設計の末に導き出される結果なのです。


【迷走の典型】競合調査を「ブランド名」や「価格帯」で分類してはいけない理由


この “表現を先に見てしまう癖” は、競合サイトや他社事例を探す場面でもよく表れます。

デザイン初心者の中には、こうしたサイトを見るときに、デザインの世界観ではなく、ブランドや企業名で整理してしまう人がいます。

一見するとちゃんと分類しているように見えます。でも実際には、トンマナの一貫性がありません。

たとえば、高価格帯ブランドを並べたとしても、その中には華やか系、静謐系、伝統系、先進系が混ざります。

逆に、低価格帯に見えるブランドの中にも、ナチュラル系、親しみ系、ポップ系、実用系が混ざる。

つまり、ブランド名や価格帯だけでは、デザインの方向性は揃わないのです。

ここで起きているのは、世界観の整理ではなく、分かりやすいラベルに寄りかかった分類です。

その結果、参考を集めているつもりなのに、設計の軸が見えてこない。だから一貫性のないアウトプットになりやすい。

競合サイトや他社事例は、「好きなデザイン集」ではなく、「設計の意図を読み取る教材」として見るべきなのです。


デザインが伸びない人の共通点:サイトを「感じる」だけで「読む」ことができていない


ただ、問題は「何を見ているか」だけではなく、「どう見ているか」にもあります。

競合サイトや他社事例を見ること自体は悪くありません。問題は、それが「好きなサイト探し」で終わってしまっていることです。

伸びない人は、何が参考になるのかが言えない。どこを見ているのかが曖昧。参考の仕方に明確なラベルがない。ということが多いです。

つまり、見ているサイトがただのコレクションになっていて、設計材料になっていない。

本来、競合サイトや他社事例を見る場合、表現や演出を真似するためではなく、「なぜこういう演出を取り入れているのか」、「なぜこのコピーで、この写真を使うに至ったのか」、を逆引きして考えていく必要があります。

表現を見るのではなく、その表現に至った情報設計やストーリー設計を紐解いていくという見方です。

この見方ができるようになると、見ているサイトの価値はまったく変わります。「この余白いいな」、「この写真いいな」で終わらず、「なぜこの順番なのか」、「なぜこの文章なのか」、「なぜこの演出なのか」が考えられるようになる。

これが、いわゆる「デザイン脳」です。


クライアントワークの秘訣:相手の「手法オーダー」を「制作意図」へ翻訳する技術


この問題は、デザイン初心者だけに起きるものではありません。実務に入ると、同じ構造のズレはクライアント側でもよくあります。

実務でも、「高級感を出したいから黒のサイトにしたい」、「今っぽくしたいから動画を使ってみたい」、「この写真みたいなカッコ良いトーンにしたい」みたいな話はよく出ます。

つまりクライアント自体も、見えている表現から話しがちです。

だからこそ、ディレクターやデザイナーが「表現」の話を「意図」の話に戻す必要があります。

ここで大事なのは、相手の表現オーダーをそのまま受け取ることではありません。

たとえば、そういう話が出たときには、「その動きの優先度はどんなものですか? もし制作における絶対条件であるなら、その理由を教えてください」と聞き返す。

つまり、手法の話を、優先度と理由の話に戻すわけです。

学習者の迷走とクライアントの要望は、構造的にはかなり似ています。違うのは立場だけで、本質は同じです。

「表現を先にしてしまうこと」。
ここに引っ張られると、設計の話が抜け落ちやすくなります。


サイトトレースを「思考停止の模写」で終わらせないための、一段上の分析視点


同じようなことが、サイトトレースでも言えます。サイトトレースそのものが悪いわけではありません。

問題は、再現だけで終わることです。

それだと、頭に残るのは「手法の記憶」だけになります。本当は、トレースの後に分析が必要です。

たとえば、こういう問いを立ててみてください。

  • このデザインの世界観は何か。

  • 誰に向けたものか。

  • その世界観を支える要素は何か。

  • 余白や写真は、なぜそうなっているのか。

  • 別のターゲットなら、どこを変えるべきか。

ここまで考えないと、手法は覚えても設計にはたどり着けません。問題はトレースではなく、トレース後の思考停止なのです。


【実務の型】デザインを表現から考えないために、今日から始める「正しい設計順」


ここまでの話を踏まえると、実務でも学習でも、最初に考える順番はかなり明確です。

実務でも学習でも、まずはこの順番で考えるとブレにくいです。

  • ターゲットは誰か

  • サイトで達成したい目的は何か

  • 誰の、何を、どうマインド変化させて、何をさせたいのか

  • そのために必要なコンテンツは何か

  • 何をどの順番で見せるべきか

  • その結果として、どんな世界観や表現が合うか

この順番です。

表現を考えるのは最後でいい。先に決めるべきなのは、ターゲットと目的を起点にした情報設計です。

そこが決まっていない状態で余白や色やフォントを触っても、どうしても薄いデザインになりやすいです。


まとめ:デザインは表現の話ではなく、目的を達成するための「ストーリー設計」


デザインを表現から考えると、手法の寄せ集めになりやすいです。ブランドや価格帯で分けても、世界観が揃わなければ一貫性は出ません。

本来、先に考えるべきなのは、誰がターゲットなのか、サイトで何を達成したいのか、誰の何をどうマインド変化させて何をさせたいのか、そのために必要なコンテンツと情報の優先順位です。

その設計があって初めて、どんな世界観が合うのか、どんな演出が最適なのかが決まります。

つまり、デザインは表現の話ではなく、ストーリー設計の話です。

競合サイトや他社事例を見るときも、「この余白がいい」、「この写真がいい」で終わるのではなく、なぜこのコピーで、なぜこの写真で、なぜこの順番なのかを逆引きしていく。

その見方ができるようになると、デザインの考え方は一気に変わります。表現を集める人ではなく、意図を読み取れる人に近づいていきます。


よくある質問(FAQ)


Q:なぜデザインは表現から考えてはいけないのですか?
A:表現はあくまで結果だからです。先に余白や色、動画演出を決めてしまうと、誰に向けたサイトなのか、何を達成したいのか、どんな順番で情報を見せるべきかが曖昧になりやすいです。デザインは見た目を整えることではなく、相手の気持ちをどう動かし何をさせたいのかを設計することです。だから本来は、ターゲット・目的・情報設計が先で、表現は最後に導き出される結果になります。「先に結論ありき」で作ったデザインが、なぜかしっくりこない。その原因のほとんどが、ここにあります。

Q:競合サイトや他社事例は、どう見たらデザインの勉強になりますか?
A:表現を真似するためではなく、なぜその表現になったのかを逆引きするつもりで見るのが大事です。「なぜこのコピーなのか」、「なぜこの写真なのか」、「なぜこの順番で情報を見せているのか」を考えてみてください。そうすると、見ているサイトが「好きなデザイン集」ではなく、「情報設計やストーリー設計を学ぶ教材」に変わります。この見方に慣れてくると、デザインを「感じる」のではなく「読む」ことができるようになります。

Q:高級感や信頼感は、余白や色で決まるのではないのですか?
A:余白や色には傾向がありますが、それだけで決まるわけではありません。たとえば同じ「高級感」でも、静かな高級感、華やかな高級感、伝統的な高級感、先進的な高級感では、選ぶ表現はまったく変わります。余白や青色は「高級感」や「信頼感」そのものではなく、ある世界観を表すための手段です。手法だけを覚えると応用が効かなくなるので、先に見るべきは「誰に、どんな印象を与えたいのか」という目的の方です。

Q:クライアントから「こういう動きのサイトにしたい」と言われたときは、どう考えればいいですか?
A:そのまま表現の話で進めるのではなく、まず優先度と理由を確認した方がいいです。「その動きは制作における絶対条件なのか」、「なぜそれが必要なのか」を聞いてみてください。すると、単なる好みなのか、ブランドイメージの話なのか、成果に直結する要件なのかが見えてきます。実務では、表現の要望をそのまま受け取るより、意図に翻訳し直すことが重要です。この「翻訳の一手間」が、後の修正地獄を防ぐことにもつながります。

Q:サイトトレースをしてもデザイン力が伸びないのはなぜですか?
A:再現で終わってしまうと、手元に残るのが「手法の記憶」だけだからです。トレース自体は悪くありませんが、そのあとに「このデザインは誰向けか」、「どんな世界観か」、「なぜこの余白や写真なのか」を分析しないと、設計の力にはつながりません。トレースで本当に鍛えるべきなのは、画面の再現力ではなく、表現の背景にある意図を抽象化して読み取る力です。再現は「手を動かす練習」、分析は「頭を動かす練習」。この両輪が揃って初めて、デザイン力は伸びていきます。


もしこの記事が少しでも役に立ったなら、僕が「なぜこのnoteを書いているのか」をまとめた記事も読んでみてください。

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