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優しき名を渡る

人並みに恋愛をしてきたと思う。運良く実った恋があれば、玉砕、あるいは打ち明けることもなく終わったものはその倍ある。

数年前、マッチングアプリで知り合った彼は7歳下だったが、なんだか妙に気が合った。相手の精神年齢が高かったのだと思う。月に1〜2回飲みに行く関係は2年ほど続いた。

常に飄々としていて、ユーモアに富んでいて、笑ったときに細くなる優しい目が好きだった。私の下の名前を「さん」付けで呼ぶときの声や、美味しそうにお酒を飲む姿。彼のすべてが好ましかった。

会話の中で猫が好きだということを知り、ある日訪れた洋菓子店で、猫のイラストがパッケージに描かれた小さなお菓子を買い、彼に渡したことがある。お礼を告げるときも、飄々としていた。

どういった流れでそうなったのかは失念したが、一度だけ彼の家に遊びに行ったことがある。シングルベッドとローテーブル、数台の楽器と作業用のデスクが置かれた、さっぱりとした部屋だった。

好きな人の部屋に招かれたわりに、冷静だったと思う。デスクの上に、私があげたお菓子の空箱を見つけるまでは。

デザイン性に優れた缶ならばいざ知らず、10cmにも満たないただの紙の箱だ。なぜ保管して、なぜ飾っている?触れることができないまま、部屋を後にした。彼との思い出はいくつもあるが、一番印象深い出来事だったように思う。

ワドルディに似ていると言われたことがある。星のカービィに登場する、オレンジ色のキャラクターのことだ。「それはつまり私がウルトラハイパー可愛いってこと?」には、未だに返事がない。

元恋人と近所のスーパーで遭遇し、チクチク言葉を投げられて落ち込んでいたとき「そのスーパーは僕が破壊しておきます」と言って、スープストックトーキョーのギフトカードをくれたりと、さりげない優しさに何度も救われた。

そうやって意味深なことをするから、両思いだと勘違いしてしまったことが、未だに恥ずかしくてならない。今となっては笑えるが。

あの頃、恋愛という枠を超えた何かが静かに育っていたように思う。名前のつかないまま、それでも確かにあった大切な時間だった。

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