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どこより早い、第53回 アニー賞 結果詳報。KPDHが全勝で10冠。


アカデミー賞アニメ部門よりも古い歴史がある、アニメの祭典、アニー賞の受賞者がたった今、発表された。
ノミネート段階からお伝えしていた予想通りというか、予想以上というか。


『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』が席巻。

53回目となる今年はネットフリックスの『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』がノミネートされた10部門すべてを制し、10冠達成

マギー・カン監督(『カンフーパンダ』などで絵コンテ。本作を中心となって企画、これが初監督作品。43歳)と
クリス・アッペルハンス監督(『ウィッシュ・ドラゴン』で初監督)のふたりが率いたチームは、唯一ノミネートを逃した㉖ストーリーボード部門を除き、

  • ① 長編作品部門、

  • ⑫ 長編特殊効果部門、

  • ⑭ 長編キャラクターアニメーション部門、

  • ⑱ 長編キャラクターデザイン部門、

  • ⑳ 長編監督部門、

  • ㉒ 長編音楽部門、

  • ㉔ 長編美術部門、

  • ㉘ 長編声優部門、

  • ㉚ 長編脚本部門、

  • ㉜ 長編編集部門

の合計10部門でノミネートされ、先週の会員投票でそのすべてを勝ち取った。

これは『リメンバー・ミー(2017)』の13部門ノミネート11部門獲得に次ぐ記録。なお、現在の部門構成では最高11部門までしかノミネートできない。

同作に参加した日本人CGアーティストも、長編特殊効果部門で加藤直樹ほか、長編キャラクターアニメーション部門では単独で古屋隆介が、受賞の栄誉に輝いた。
ふたりとも、2年前の7部門受賞作『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(2023)』に参加していた。

⑱長編キャラデザ部門、㉔長編美術部門の受賞者として、日系のスコットワタナベの名も見えた。『ベイマックス(2014)』の美術監督だ。

KPDH(韓国では「ケデハン」と略される)は、配信半年強でネットフリックスにおける視聴回数は驚異の5.4億回突破。
主題歌のYouTubeは11億回、サントラ全体のストリーミング再生回数は100億回をとうに超えて、社会現象となっている。
ネトフリアニメとあって、劇場では配信に先駆けてごく短期間公開されただけだった。

長編部門では他に、Pixarの『星つなぎのエリオ』がKPDHに並ぶ10部門、『アメリと雨の物語』と『ズートピア2』はそれぞれ7部門にノミネートされたものの、すべてKPDHに負けて受賞なしに終わった。

Arco/アルコ』と年末からアマプラで配信が始まった映画『バッドガイズ2』が、それぞれKPDHのノミネートされていない1部門ずつを得た。

これで来月アカデミー賞の行方もほぼ見えたと言っていいだろう。


TV部門は3強が分け合った

一方、配信・放送のTVシリーズでは、Pixar→Disney+の『ウィン OR ルーズ』が6部門、マニアにきわめて高い評価を得ているアダルトスウィムのシリーズ『Common Side Effects』と、Netflixのシリーズ『アステリックスとオベリックス: 史上最大のバトル』がそれぞれ5部門ノミネートされ、受賞を争った。

結局、マニアの支持に押され『Common Side Effects』が最多の4冠。

同じく大人向け、ホラー3Dアニメ『ラブ、デス&ロボット』が健闘し3冠。

ウィン OR ルーズ』が3冠と、3タイトルが分け合った。

全32部門中、短編部門や学生部門を除き、ほぼこの4タイトルが席巻したアニー賞となった。

なお、授賞式で配られる68ページの記念冊子はこちらでダウンロードできる。https://cdn.program-books.annieawards.org/53rd_Annie_Awards_Program_Book.pdf


『スカーレット』かく戦えり。

長編インディペンデント作品賞は『Arco/アルコ』

32部門中、第2の部門として挙げられていることからわかるように、重要な賞だが、日本の作品に最もチャンスがある長編インディペンデント作品賞。北米でおよそ1000館未満の公開規模の作品が対象になる。
『果てしなきスカーレット』は第二の候補として検討したが及ばず。

  1. フランスの巨匠シルヴァン・ショメの『A Magnificent Life (邦題未定、原題は『マルセルとパニョル氏』)』

  2. ナタリー・ポートマン制作のSF映画『Arco/アルコ(Arco)』

  3. メキシコのストップモーション映画『私はフランケルダI'm Frankelda、原題はSoy Frankelda)』

  4. Netflix初の韓国アニメ映画『あの星に君がいる(Lost In Starlight、原題は 이 별에 필요한 )

  5. 細田守とスタジオ地図の果てしなきスカーレット(Scarlet)』。過去に2018年に『未来のミライ』で受賞、『バケモノの子』『竜とそばかすの姫』でもノミネート。なお、『ミライ』は計2部門ノミネート、『竜そば』は計5部門ノミネートだった。

前評判通り、『Arco/アルコ』が一騎打ちで『果てしなきスカーレット』を下した。

『Arco/アルコ』は4月24日公開予定。 ウーゴ・ビアンヴニュ監督は、イラストレータとして台頭。 ジブリの『もののけ姫』を観てアニメを志した38歳の新進気鋭。これが初長編監督作品だ。
製作総指揮として女優ナタリー・ポートマンが前面に出ている。
『ブラック・スワン』でオスカーを獲り、ジャッキー・ケネディやアミダラ姫役でもお馴染み。
最近は出演兼製作での参加が増えたが、アニメの製作は初。本作でも主人公の母役で英語版の声を入れている。英語版キャストにマーク・ラファロら俳優が揃い、アカデミー賞ノミネートにこぎつけたのは彼女の功績だろう。
カンヌから分かれたアヌシー映画祭で大賞(クリスタル賞)。 アニー賞では5部門ノミネートで、KPDH一色の中、搔い潜るように栄冠を得た。
KPDHとともに、アカデミー賞にもノミネートされている。


長編監督賞もKPDH

ノミニーは次の5作品。フランス2作、日本2作が食い合う構図で、KPOP鉄板になってしまった。

  1. SF映画『Arco/アルコ(Arco)』

  2. 年末に国内100億越えた『劇場版 チェンソーマン レゼ篇』の𠮷原 "よしお" 達矢監督、37歳。『波打際のむろみさん』監督以来注目。『チェンソーマン』では中山竜監督のもと、第4話・第10話の絵コンテとアクションディレクター。劇場版で監督に。𠮷原監督には30代でノミネートというすばらしい経験に。個人的には中山監督で突き抜けたらワンチャンあったのでは、という気もする。

  3. Netflixの『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』のマギー・カン監督・クリス・アッペルハンス監督。大本命。

  4. アメリー・ノートンの自伝的小説を原作に、1960年代神戸生まれのベルギー人少女の日々を描く『アメリと雨の物語』のメイリス・ヴァラド & リアーヌ=チョ・ハン監督。フランスで脚本や演出でキャリアを積み、ふたりともこれが初の長編監督作品。対抗。

  5. 『果てしなきスカーレット』の細田守監督。過去に『サマーウォーズ』『竜とそばかすの姫』でもノミネート。


長編脚本賞もKPDH

脚本賞のノミニーは次の5作品。ネトフリ対フランスの構図だった。アメリカでは脚本に監督が入るケースがやはり評価が高くなる。

  1. Pixarの『星つなぎのエリオ』脚本はベテラントリオのジュリア・チョー、マーク・ハマー、マイク・ジョーンズ。ジョーンズは過去何度もノミネート。単穴。

  2. Netflixの『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』脚本はダーニャ・ヒメネス、ハンナ・マクメカンと、マギー・カンクリス・アッペルハンスの両監督。大本命。

  3. フランスの『アメリと雨の物語』脚本はオード・ピー、エディーヌ・ノエルと、メイリス・ヴァラド & リアーヌ=チョ・ハンの両監督。対抗。

  4. 日本の『果てしなきスカーレット』脚本は細田守監督。過去に『未来のミライ』『竜とそばかすの姫』でもノミネート。

  5. ディズニーの『ズートピア2』脚本はジャレド・ブッシュ監督。過去に『ズートピア』で受賞。『ミラベルと魔法だらけの家』でノミネート。


日本人作品・クリエイターのノミネート。

ノミネートされていたが、受賞はならなかった。
とはいえ、ノミネートされただけでも世界の最前線クリエイターが認めたしるし。今後の活躍がますます楽しみだ。


功労賞の各部門。

功労賞では、すでに発表されていた人々が受賞。

液タブ・板タブのメーカーワコム社が、技術功労を称えるアブ・アイワークス賞。

井出信孝社長がアニメをあしらったネクタイで粋なスピーチ。
流暢でなくても「伝わる英語」だった。さすがICU大。
最後にスーツの裏地まで見せてた。
社としては創業時の統一教会系の影響を抜け出るのに非常に苦労していたが、ようやく名実ともに報われたか。

生涯功労を称えるウィンザー・マッケイ賞は、ふたり。

マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットは、ジブリとつくった『レッド・タートル ある島の物語(2016)』でアニー賞 長編インディペンデント作品賞部門を獲り、また8分の『岸辺のふたり(2000)』では、アカデミー賞 短編アニメ部門を獲っている。
功労賞で再びの受賞となったが、このウィンザー・マッケイ賞は、宮崎駿と同じ賞でもあり、感無量という様子だった。

クリス・サンダースはディズニーの巨匠。
『美女と野獣(1991)』『アラジン(1992)』の原案から、『ムーラン(1998)』の脚本を経て、監督・脚本・原案を務めた『リロ&スティッチ(2002)』、アニー賞10冠を得た『ヒックとドラゴン(2010)』、9冠の近作『野生の島のロズ(2024)』まで、多くの作品で辣腕をふるった。
そんな彼も、ちょっと涙ぐんでた。
スティッチの声もこの人だ。スティッチの演技してくれるかとちょっと期待してしまった。
そう言えば、『リロ&スティッチ(2002)』はアニー賞で10部門ノミネートされたのに、よりによって宮崎駿の『千と千尋の神隠し(2001)』『きれいな涙 スピリット(2002)』と同年で、1部門しか獲れなかったのよな。


アニー賞は世界のアニメ文化の重要な一部。

KPDHの強すぎる人気を見せつけた授賞式。
しかし強すぎるKPDHの影響で無冠に終わった『アメリと雨の物語』『ズートピア2』『星つなぎのエリオ』そして『果てしなきスカーレット』にとっては、ちょっと気の毒な時間だった。
上記『リロ&スティッチ』、あるいは無冠に終わった『ノートルダムの鐘(1996)』や『ラーヤと竜の王国(2021)』でわかるように、作品評価は相対的なもの。ファンはめげず、自分だけの評価を大切にしてほしい。

けれど決して、自分の好きな作品が評価されなかったからと、日本の国内評価や、もっと狭い自分の周りの世界に閉じこもってはいけない

アニー賞はアカデミー賞にアニメ部門ができる前から存在し、日本アニメの地位向上と普及に役立ってきた重要な賞だ。
日本人含むアニメーターたちが自分でつくり、自分たち専門家の眼で審査してきた点が意義深い。

アニメーションも映画も、カテゴリを越え、言語を越え、国境を越え、偏見を越えて、互いに影響を与え合いながら広がってきた芸術。すべての作品は、過去の巨人の肩に乗っている。
目の前の作品には、それまでの世界の表現、その歴史すべてが詰まっている。それに目をつぶるのは、作品を小さな窓からしか観ないのと同じだ。

愛する作品にこそ、いろんな光を当てて、様々な表情を引き出して愛でようじゃないか。


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