「オークは奪うことしかできないの?」─食がつなぐ異人種・異文化の相互理解|ダンジョン飯
前回、アニメ『ダンジョン飯』における「異なる人種間の交流」や、そこに存在する人種バイアスについて書いた。
今回はやや踏み込んで、物語の異なる人種間で起きている対立について考察してみたい。
私が特に興味深いと思ったのが、S1E4『キャベツ煮/オーク』だ。
この回では、オークと呼ばれる亜人(人間と猪型の魔物の掛け合わせらしい)と人類の歴史認識の食い違いが明確に描かれている。
ライオス一行はS1E4『キャベツ煮/オーク』で、ひょんなことからオークの集落に一晩泊めてもらう流れになる。
ライオスたちが集落を訪れたとき、オークの人々がエルフであるマルシルを見ながら、ひそひそと、次のような陰口を言う。
「エルフだわ。なんて野蛮な顔なの」
この時点ですでに、オークのエルフに対する強い偏見が垣間見える。
そしてこの後、オークと人類の間には根深い歴史認識の差があることが浮き彫りになる。
オークの集落の長であるゾンとライオスたちは、一緒にパンを作ることになる。
そこで、ゾンとマルシルの間で議論が勃発するのだ。
ゾンが自分の幼い子どもに対し、人類側を非難する文脈で歴史について語り出したからである。
「そこにいるエルフや人間どもは、俺たちの仲間をたくさん殺し、領土を奪った」
これを聞いたマルシルが、「オークだって、他の種族をたくさん殺したじゃない」と言い返したところから、議論がヒートアップする。
ゾンは、自分たちの「被害の歴史」を、以下のように語る。
自分たちは人類に領土を奪われ、地上を追われ、放浪の末に地中に居場所を見つけた。
その居場所もまた人類に焼かれ、ようやくたどり着いた迷宮ですら、奪おうとされている。
これに対し、マルシルは彼らの「加害の歴史」を突き返す。
人類が領土を奪ったのは、そもそもオークが多種族の村から略奪を繰り返していたからである。
地中に追いやられたと言うが、地中で暮らす前からオークはそういう(他人種から奪う)スタイルだった。
一緒にパンを作っていなければここで戦闘が始まるのではないか、という臨戦態勢だが、そこが『ダンジョン飯』の良いところだ。
2人とも、パン生地をこねる手は止めずに議論を続け、パンの発酵を待つ間は手も議論も一時休憩となる。
ゾンは言う。
ダンジョンを踏破し、「狂乱の魔術師」を倒した者が国を手に入れると言われているが、人間がそのような力を手に入れることなどあってはならない、と。
「だから我々は、地上の者を見かけ次第、殺す」のだと。
この言葉がマルシルの逆鱗に触れ、彼女は怒鳴り返す。
「へりくつだ!
ならあなたたちも、王座に挑戦すればいい。
それともオークは、奪うことしかできないの?」
この歴史認識の差異や、自分たちの「被害の歴史」と相手の「加害の歴史」をぶつけ合って議論になるのは、実にリアリティがあると思った。
どこかで聞いたことのあるような話ばかりだ。
一触即発の気配だったゾンとマルシルだが、パンが焼き上がり、主菜や副菜が並べられ、一緒に食事をとるシーンになると和やかな雰囲気に一変する。
現実世界の紛争や歴史認識の食い違いがこんなにシンプルに解決するはずはないが、「同じ釜の飯を食って仲直り」という結末は『ダンジョン飯』らしく、希望を感じられてとても良かった。
最後にゾンがライオスたちに「頑張れよ」と言うシーンは、実に和やかだ。
またこの回は、締めのナレーションもとても味わい深い。
最後にこのナレーションを引用して、終わりにしたい。
意見はちがえど、腹が減るのは皆同じ。
たかがダンジョン飯、されどダンジョン飯。
🥘
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