現場の声をカタチに ─ 私の技術者人生を変えた工場移転プロジェクト(1)
第一章(油にまみれながら老朽化設備と格闘する日々)
1.1 配属と初期経験:新人保全技術者としての戸惑い
(大規模生産技術部から製造部へ──期待と不安の狭間で)
私は大学を卒業して、とあるメーカーの製造部に配属されました。
それまでの2年間は本社にある生産技術部に所属し、設備投資など会社全体に関わる大規模な仕事に携わっていました。
あるきっかけで現場の責任者に評価され、製造部への異動が決まりました。
製造部では、主に新規設備の導入、既存設備の改善、そして設備のメンテナンスを担当しました。
しかし、その中でも最も多くの時間を費やしたのは設備メンテナンスでした。
当時、現場の設備はすべて導入から20年以上が経過しており、老朽化が進んでいたのです。
老朽化した設備は毎日のように何かしら調子が悪く、油まみれになりながら修理に追われる日々が続きました。
1.2 老朽化設備との格闘:時間との戦い
(20年以上稼働のライン停止は一分が命取り)
製造ラインは1本しかなく、その一箇所が故障すれば工場全体の生産が止まってしまうため、修理は常に時間との戦いでした。
「ラインを一分停止させることは保全技術者にとって恥ずべきことです。」
一方、故障の原因を突き止め修理を終えて設備が再び動き出す瞬間を見るのは、この上ない喜びで、技術者として大きなやりがいでした。
そんな仕事ぶりを見ていた現場作業員の皆さんとも次第に打ち解け、様々な相談を受けるようになっていきました。
1.3 精神的重圧と挫折:配線ミスが招いた異常停止
(ちょっとした勘違いが招く大きな代償と自己嫌悪)
一方で、毎日の修理作業は精神的にかなりの重圧であり負担でした。
ある時は、長時間の修理により現場作業者が午後から退社せざるを得ない事態を発生させてしまいました。1本の配線ミスが長時間に渡る設備停止を招いてしまったのです。自分の至らなさをいやというほど思い知らされました。
知識の不足と、間違いに気づけない感性の欠如。苦悩し、格闘する日々が続きます。
1.4 プロジェクト担当への抜擢:大転機の到来
(秘密裏に進む工場統合──現場で培った“肌感覚”の価値が試される )
そんな中、大きな転機が訪れました。
工場移転という重要なプロジェクトの担当に任命されたのです。
プロジェクトは極秘に進められていました。
3つの工場を1か所に統合するという、経営にとって非常に重大な使命が課されていたのです。
まずは工場の立地選定から始まりました。
経営側からは、投資を抑えるためにスペースに比較的余裕のある既存工場の活用が強く求められていました。
私と上司2名、計3名で新工場のレイアウトを検討しました。
私は経営の要求に応えようと、何通りものレイアウト案を作成しましたが、上司の2人は初めからそれは無理だと考え、新たに倉庫を建設する案を提案しようとしていました。
上司の2人は、既存工場の活用はリスクが大きすぎるとして、新工場建設案を推進するよう私に指示しました。
しかし私は、既存工場を活用できる可能性を強く感じていました。
そこで、何度もレイアウトを練り直し、ついには既存倉庫を活用する案を考え出すことができました。
検討したレイアウト図は、100枚近くにも及びました。
「100枚の図面の中には、技術者としての意地と執念が詰まっていた。」
教訓:設計段階の失敗はどのそのあとのどの段階でもリカバーすることはできず、長年現場を苦しめ続けることになる。
