がん治療を納得して受けるために~医療情報リテラシー
「がんです」と告げられた瞬間、頭が真っ白になった——。
多くの患者さんがそう語ります。治療法は一つではなく、標準治療、先進医療、さまざまな情報があふれる中で、「自分は何を選べばいいのか」と迷うのは当然のことです。
今回は、大同病院腫瘍内科部長・浅井曉先生をゲストに迎え、“納得してがん治療を受けるために必要な「医療情報リテラシー」”について、医師の話の聞き方、インターネット情報との向き合い方、セカンドオピニオンの活用まで、具体的に話してもらいました。(2023年10月6日、Voicyにて配信)
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医師の話を聞くときのコツ
イズミン がんと告知されると、「頭が真っ白になる」という声をよく聞きます。治療の説明を受けても、なかなか内容が頭に入らないことも多いと思うのですが、そういうとき、どうやって話を聞いたり、質問したりすればよいのでしょうか。
アサイ 正直、簡単ではないですよね。最初は誰でも混乱します。ただ、私がおすすめしているのは、とにかく紙に書くことです。箇条書きで構いません。「どんな病気なのか」「どんな治療を考えているのか」「よく分からなかった言葉」など、聞いたことをメモしておく。
一通り説明を聞いたあとで、そのメモを見返して、「ここが分からなかった」「ここが納得できなかった」という点を、もう一度医師に確認する。それだけでも理解はずいぶん深まります。ご自身で調べてきた情報や、インターネットで見つけた治療法を持参して、「これはどうですか」と聞いてもらっても構いません。
最近は、説明を録音したいという患者さんも増えています。私自身は、録音は基本的にOKです。ただし、最初に「録音してもいいですか」と一言声をかけていただきたいですね。録音されていると分かっていれば、誤解が生じないよう、より正確な表現を心がけます。こっそり録音されるよりも、正直に伝えてもらえる方がありがたいです。
治療法をいくつか提示する中で、患者さんは迷ってしまうことも多いと思います。そういうときは、「先生だったら、あるいは先生のご家族だったら、どれを選びますか」と聞いてみるのも一つの方法です。もちろん、年齢や生活背景、経済的な状況によって最適解は変わりますが、判断のヒントにはなると思います。
インターネット情報にはどう向き合う?
シノハラ 最近は、インターネットで調べすぎて、かえって混乱してしまう患者さんも多い印象があります。
アサイ その通りですね。インターネットは、私たち医療者も使いますし、最新情報が手に入る便利なツールです。ただ一方で、個人の体験談や根拠の乏しい治療法、さらには悪質な商業目的の情報も混在しています。まさに玉石混交の世界です。
人はどうしても、自分にとって都合のいい、耳障りのいい情報だけを信じてしまいがちです。例えばGoogleで「がん治療」と検索すると、上位には広告が混ざって表示されます。一見すると分かりにくいのですが、これらは治療情報ではなく宣伝であることも多く、注意が必要です。また、特定の民間療法ばかりを見ていると、同じ傾向の情報が優先的に表示される仕組みになっています。内容を吟味せずに信じてしまうと、大きな誤解につながることもあります。
さらにテレビや新聞など、従来のメディアについても必ずしも安心とは言えません。視聴率や売り上げを意識した、刺激的な内容が優先されることもあり、過去には首をかしげたくなるような治療法が大きく取り上げられた例も少なくありません。
ですので、インターネットで調べるのであれば、国立がん研究センターやがんセンター、大学病院など、公的で信頼性の高いサイトを見るようにしてください。そこで大枠を理解した上で、必要に応じて情報を広げていく。そして何より忘れてほしくないのは、「一番身近な専門家は主治医である」ということです。
シノハラ そのために私たち医師も日々研鑽を積み、情報を更新しながら、主治医として信頼してもらえる存在にならなければなりませんね。
イズミン 治療そのものだけでなく、これから起こりうることや、どんな選択肢があるのかを一緒に考える。情報に振り回されるのではなく、主治医を信頼しながら、納得できる治療選択につなげていくことが大切なのですね。
セカンドオピニオンを受けるタイミング
イズミン 納得して治療を受ける方法として、セカンドオピニオンがあります。患者さんの大切な権利でもありますが、どのタイミングで切り出すのがよいのでしょうか。
アサイ 基本的には、いつ受けても構いません。ただ、やはり適したタイミングはあります。もっとも良いのは、診断がついて、治療方針を決める前ですね。手術が終わってからでは、選択肢が限られてしまうこともあります。
治療が始まってからの場合は治療に専念していただくのが大前提ですが、再発したときや、治療効果が思ったほど得られなくなったときなど、一つのタイミングになると思います。
中には、治療を進めながら、納得のためにセカンドオピニオンを受ける方もいますが、それも全く問題ありません。ただし、どこで受けるかはとても重要です。根拠に疑問のある治療を行っている施設に行ってしまうと、かえって混乱してしまうこともあります。がんセンターや大学病院、がん拠点病院など、日頃から研鑽を積んでいる施設を選んでほしいと思います。当院も愛知県からがん拠点病院の指定を受け、日々努力を重ねています。
「医者を選ぶのも寿命のうち」という言葉もあります。これは患者さんを突き放す言葉ではなく、私自身は「医師は選ばれる存在でなければならない」という戒めとして受け取っています。
シノハラ 私たち医療者も、信頼される医師であり続けなければならない。患者さんが安心して治療を選べるよう、医師側も努力を続ける必要がありますね。
ゲスト紹介
浅井暁(あさい・ぎょう)
大同病院 腫瘍内科部長。静岡がんセンターや愛知県がんセンターなど国内有数の専門施設で研鑽を積み、病院の開院と閉院の両方を経験した稀有なキャリアの持ち主。現在は外来化学療法室を中心に、各診療科の抗がん剤治療のサポートや、がんサポートチームを通じて緩和ケアにも携わり、縁の下の力持ちとして患者さんを支える。
趣味はアマチュア無線。世界160の国・地域と交信した実績を持ち、アマチュア無線連盟のアワード「DXCC」も取得。遠い国の知らない人とつながる面白さと“どこまで電波が届くか”という挑戦が魅力と語る。
