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まさかの実写化!?京伝の黄表紙『江戸生艶気樺焼』|べらぼう29話

大河べらぼう、29話の感想・考察です。

山東京伝の一大傑作『江戸生艶気樺焼(えどうまれうわきのかばやき)』

獅子鼻(あぐら鼻)が特徴的な艶二郎。
『江戸生艶気樺焼』国立国会図書館デジタルコレクション

艶二郎が浮名を流すために、おバカなモテ活を繰り返すも、すべて失敗するところが笑いを誘うコメディー作品です。まさかこの江戸時代の黄表紙作品が実写化されるとは…!原作ファンとしては感無量です笑

恋川春町、朋誠堂喜三二、大田南畝、おていさん、鶴屋、そして誰袖と、べらぼうキャストオールスターズで演じられた劇中劇。特に艶二郎を演じた京伝役の古川雄大さんのつけ鼻も話題になりましたね。

✍️京伝の一大傑作『江戸生艶気樺焼』のあらすじや見どころについてはこちらの記事へ。ドラマではカットされたラストシーンについても解説していますよ👇

✍️前回、28話の感想・考察記事はこちら。田沼意次の決意、そして仇討ちについて、そして艶二郎のモデルとなったのれんから覗く男についても書いています👇


今回は、京伝たちの劇中劇を追いつつ、原作との違いや、なぜ“笑える”が“仇討ち”になるのかを解説していきます。また、実写キャスティングの考察もしていますので、お楽しみあれ!

蔦重の仇討ち、それは黄表紙が持つすべてを笑いに変える力

前回の28話、佐野政言に斬りつけられ命を落とした田沼意知。その仇を親である田沼意次は、「息子の志を継ぎ、成すべきことを成す。それが俺の仇の取り方だ」と決意し、蔦重に「お前は一体どんな風に仇を討つのか?」と文で問うていましたね。

耕書堂での楽しすぎる編集会議

蔦重が考えた仇の取り方。
それは、誰袖の笑顔を取り戻すこと。

そのために、山東京伝(画工としての名は北尾政演)が描いた「のれんから覗く男」をヒントに、腹がよじれるほど大笑いできる黄表紙を作ろうと戯作者たちを集めました。

久しぶりに戯作者の面々が集まったこのシーン、とっても楽しかったですよね。
京伝「ひょんなことから絶世の美女がこいつの顔になっちまう」
唐来参和「ひょんなことからこの男が一寸法師になっちまう」
恋川春町「ひょんなことから誰にも見えぬようになる」

一寸法師のネタに志水燕十が「真似ゑもんじゃねえか」と突っ込んだのも笑いましたね(※鈴木春信の春画『艶色真似ゑもん』のことです)。

そこへ現れたのが鶴屋喜右衛門。「この作品は京伝先生が書くといい。最近ヒット作が出ていないし、そろそろ一作欲しいところです。地本問屋のためにも」と提案します。

自分のお抱え作家・京伝を耕書堂に貸してもいいというのは、過去作も売れるようになるから。蔦重とは今や良好な関係ですが、しっかり自分の利益も計算しているのが、鶴屋らしいですね。

しかし、京伝は浮かない顔。自分には荷が重すぎると言いますが、そこを「この際、鍛えようぜ男の背中をよ!」と蔦重に押し切られてしまいます。

そこでなんとか書き上げた原稿をもって、再び京伝は編集会議の場へ。
しかし、大田南畝には「上々吉であって極はつけられない。これはふふふであってガハハではない」。
おていさんや新之助には「田舎者が江戸に出てきて騙される話は気の毒、そもそも最近は江戸に出てくるのは一旗揚げようというのではなく飢えた流人ばかり」
とバッサリ切られてしまいます。

「素人の言うことそんなにアテにしちゃっていいんですかい?」と、京伝は拗ねたように蔦重に言いますが、このときの蔦重の返事が良かったですね。

「世のほとんどは素人じゃねえか。素人も面白え、けど『通』もうなる。そういうもんにしねぇと『大当たり』なんか無理だろ」

ああ、耳が痛い。でもこれは編集者としてごもっともな意見です。ぐうの音もでなくなった京伝は、「俺、降りまさ!」と逃げてしまった。おい待て!と追いかけようとした蔦重を止めたのは、恋川春町。

「蔦重、ここは俺に任せてくれねぇか」


春町にバレた「こちらの者」だった京伝

三味線の女師匠のもとへ転がり込んでいた京伝。
そこへ喜三二と春町が訪れます。
「絵やら戯作やらやって女にモテりゃそれでいいってぇか。いいもん作るとか『大当たり』とかどうでもいいんですよ」

そうやって不真面目な遊び人風をきどって語る京伝を横目に、春町がとなりの襖を開いて見つけたのは、大量の書き損じの紙でした。

実は京伝は陰で努力していたんですね。しかも、手本にしていたと思われる春町の『金々先生栄華夢』にはびっしりと朱書きが。

見抜いた春町は「些末なことにこだわり悩む、お前はこちらの者だ、来い!」と熱く抱きしめます。

21話の「蝦夷桜上野屁音」で、京伝に嫉妬し拗ねて筆を折ると言った春町の騒ぎを思い出すと、なおさらおかしみのあるシーンでした。


そして生まれた『江戸生艶気樺焼』

田舎から出てきた男をからかう話は、浅間山の噴火や飢饉で生活困窮者があふれる今となっては、もう笑えない。

それなら、と蔦重がピンと来たのが、手拭の「のれんから覗く男」でした。

私は前回、蔦重が手拭いに目を留めたときからそのつもりだったのかな、と思ったのですが、今回鶴屋に「その男は佐野様に似ている」と言われて気づいたようですね。

これ、すごいキャスティングだったんだなあ、と改めて感心したのですが、のれん男の顔に似た役者ということで、若手の中でも名バイプレイヤーと人気の矢本悠馬さんが選ばれた、ということですよね。

佐野政言に似たこののれん男を、政言の不遇だった立場をすべてひっくり返して、大金持ちの一人息子で甘い汁しか吸ったことがねぇバカ旦那にする。それならどんな苦い汁を飲まされても笑えるだろう。

この蔦重の思いつきが京伝の創作心に火をつけました。命をかけても家名をあげたかった佐野に対して、命をかけても浮名を流したい艶二郎が、ここに爆誕していくというわけです…。


原作と徹底比較!劇中劇『江戸生艶気樺焼』の楽しさ

艶二郎は誰が演じるべきだった?


さて、黄表紙の原作ファンとして実写化にあたっての素直な感想を言いますと、やはり古川雄大さん演じる艶二郎は付け鼻をつけても色男感がにじみ出ているな~と笑

ここはいっそ矢本悠馬さん、つまり佐野政言に艶二郎を演じてほしかったなあと思います。だって艶二郎のどこか憎めない雰囲気が矢本さんにぴったり。そもそものれん男を意識してのキャスティングなわけですから。

しかも、不遇な人生を送った佐野政言が、今度は大金持ちの若旦那になって浮名を流すために命をかける~という夢の逆転劇も見れて二重にいいなあと。

しかし、実はこの特徴的な艶二郎の獅子鼻(あぐら鼻)は、『江戸生艶気樺焼』が大ヒットとなったことで、京伝自身を指すアイコンになり「京伝鼻」と呼ばれるようになるのですよね。

だからこそ、やはりここは京伝役である古川雄大さんが演じる意味があった、とも言えますよね。もしかしたら最初の段階で、脚本家やスタッフの方々も悩まれたのでは…?

ちなみに実際の京伝も、古川さんのように鼻筋の通った面長の顔立ちだったそうですヨ。

💡この特徴的な鼻が京伝のアイコンとなるまでの話は下記の記事にまとめています。ぜひあわせてどうぞ👇

原作に忠実?カットされたシーンは?

劇中劇として、恋川春町や喜三二が艶二郎の悪友・悪井志庵(わるいしあん)、北里喜之助(きたりきのすけ)になって登場した段階で私としてはテンションがあがりました笑

原作では、腕に女の名を彫っては消す、人気芸者をかけこませる…などドラマで再現された以外にも、艶二郎は、色男としてモテるために様々な馬鹿なことをやっています。たとえば:

  • やきもちを焼いてもらうために、妾になってもらう

  • 役者が作らせる提灯にあこがれて、自分も作ってみる

  • 色男は金がないのがつきものだからと、形だけ親から勘当してもらう

  • 色男が多い商売だという理由で、扇に貼る紙(地紙)を売り歩いてみる

…などなど。

ドラマの最後は、心中の真似事をするために妓楼のスタッフに見送られながら派手に出てゆく…というところで終わりでしたね。

このシーン、艶二郎と浮名(誰袖が演じた花魁)が着ていた着物の柄は、原作どおりの吉原繋ぎの柄でした(これはわざわざ艶二郎が流行りの柄で呉服屋に作らせたもの)。

しかし、さらに原作ではあっと驚く、というか思わず吹き出すオチがあります。今回の『江戸生艶気樺焼』に興味を持った方は、ぜひ下記の記事でくわしいあらすじをどうぞ!


おわりに(松平定信が興味を持った?歌麿が絵師として成長しそう?)

以上、29話の伝説となりそうな黄表紙の実写化回の感想・考察でした。
かくして、この大ヒット作『江戸生艶気樺焼』で世間の話題は佐野大明神から艶二郎に移り、誰袖に笑顔が戻ったことで、蔦重の本屋としての「仇討ち」は成功しました。

そうそう、若旦那の屋号の「仇気屋(あだきや)」には、蔦重の仇討ちの意味がかかっていたんですね。ここもドラマとしてよくできてるなあと思いました。ちょっと強引な気もしますけれど笑

また、笑える本を作ったからといって、愛する人を亡くした誰袖の気持ちが晴れるのか、という意見もみかけました。
たしかにシリアスに考えれば、恨みはそんな簡単に消えるものではないでしょう。

けれど、この「べらぼう」という作品は、サブタイトル「蔦重栄華乃夢噺」からも察するとおり、「金々先生栄華夢」、つまり「黄表紙」を意識して作られているのだと思います。

一般的に黄表紙は、正月に売り出される縁起物で、必ず最後は「めでたしめでたし」で終わるというお決まりがあります。どんなめちゃくちゃな展開でも、最後は「めでたい」と収める。そのためには、物事を遠くから見たり、別の角度から見るという視点の妙が生まれてきます。

これは私の勝手な解釈ですが、このドラマはそのような「黄表紙」の構造にのっとって進んでいるのではないでしょうか…。

な~んて、語ると長くなりそうなことは山ほど。
また追々別記事にしていこうと思っていますので、引き続きお楽しみに。

今回の終わりで気になったのは、松平定信が黄表紙を手にしていたこと。定信に関しては、実は黄表紙など戯作に興味を持っていたといわれるので、ドラマではそのあたり、定信や寛政の改革がどのように描かれるのかとても楽しみです。

また、歌麿が自分の絵と向き合う成長回でもありそうですね。

ますます楽しみな大河べらぼう。次の30話が待ち遠しくてなりません。

春町の抱擁、京伝の付け鼻、誰袖の笑顔…、あなたが気になったのはどのシーンでしたか?
コメントでぜひ教えてくださいね。

それではまた次の記事でお会いしましょう~♪




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