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意次と蔦重、因果は巡るそれぞれの仇討ち|べらぼう28話

「覚えがあろう、覚えがあろう!」
不遇の末に刃を抜いた佐野政言。殿中に響く怒号のなか、田沼意知はとっさに脇差の鞘で刃を受け止めた——。

前回の選挙速報による放送休止から1週間を経て、2人の青年が散り急ぐ桜のように命を落とした、大河べらぼう28話。

わかってはいたものの、残された者たちの想いが描かれると胸が詰まりそうでした。息子を亡くした父、愛する人を亡くした女。歴史上の刃傷事件は年号と共に記号化されて刻まれるものですが、当時の一つひとつの事件関係者の悲痛な思いはいかばかりだったでしょうか。

今回は意次、そして蔦重のそれぞれの仇の取り方を中心に感想・考察しつつ、最後に出てきた京伝の手拭いに描かれた"あの男”についても紹介していきます。

◎前回のおさらいはこちら👇
“丈右衛門だった男”にはめられていく政言、志をもって政事に取り組もうとしていた意知、念願の身請けが叶い喜びにひたる誰袖——切なさがつのる28話の感想・考察です。
江戸城内で実際に何度も起きていた刃傷事件についても触れています。



意次と蔦重、それぞれの仇討ち

江戸城内で政言に斬りつけられた意知は大けがを負い、父・意次に看取られながら息を引き取りました。

史実では、斬りつけられたのは天明4年(1784)3月24日の午後1時頃。その後26日に死去。しかし公表された表向きの死去日は、4月2日。その翌日の3日に、佐野政言は小伝馬町の揚屋座敷の前庭にて切腹。
ステラ べらぼうコラム #28 より

意知にとって思いもよらない突然のわが身の死。そして何より父・意次にとっては耐え難い苦しみ。

「なにゆえ意知なのだ、なにゆえ俺ではなかったのだ!」

憎らしいことに、その後のシーンで出てきた一橋治済がその答えをこう言いました。

「主殿(とのも/意次のこと)は放っておいても、老い先はそう長くはない。嫡男を亡き者とすることこそ、田沼の勢いを真に削ぐことになる……と考えたのかもしれんな、佐野は」

「佐野は」と言いつつも、"丈右衛門だった男”を使って、そうさせたのは治済自身。つまりこれは治済の考え。

上等のカステラを頬張りながら他人事のようにしれっという治済は、絵にかいたような腹が立つ敵役ですね~。いや、ほんと誰かどうにか止めて?

しかし、相手は徳川御三卿の一つ、一橋家。よほどの証拠でもなければ、どうにもならない。下手に動けば、こちらが消される。

「仇を討ちましょう!」

と願い出てきた蔦重を、源内のときと同じくその身を案じるがゆえに無下に払いのけた意次はすべてわかっていた。

”丈右衛門だった男”を使い、邪魔者を葬り去った黒幕はだれなのか…。

意次は、自分のやり方で「仇をとる」と決めたのです。

そして、偶然廊下で出会った治済へこう告げます。

「息子を失ってなどおりませぬ。あやつはここにおりまする(息子の遺髪を忍ばせた胸をおさえて)。あやつはもう、二度と毒にも刃にも倒れぬ者となったのでございます。志という名の者となって

ここは鳥肌が立ちましたね。

息子は死んでいない、この胸の中に志となって生きているのだ。志は無敵。自分が身体を失っても、また別の誰かの身体の中で生き続ける。失ったどころか、もはや永遠に失われることがなくなったのです、と。

さらに、「毒にも刃にも」と、死を呼ぶ手袋事件と、今回の佐野の事件が同じ犯人と知っていることも含めています。

このときの意次の気迫に圧倒された治済の顔こそ、視聴者にとってもほんの少しではありますが、溜飲が下がる一瞬だったのではないでしょうか。

森下さんの脚本、源内の言葉にしろ、意次の言葉にしろ、胸に残るものが多いですね。源内の想いもまた、本の中で生き続ける。意知もまた、志となって継ぐ者の中で生き続ける。

そして、意次はこう蔦重に返します。
「生きてあいつが成したであろう事を成していく。それが俺の仇の取り方だ。お前は一体どんな風に仇を討つのか?」と。

さあ、蔦重は蔦重のやり方で、本屋として市井に生きる者として、一体どうやって仇を取るというのでしょうか。

そのヒントは、ドラマの最後に手拭の図案「のれんから覗く男」として登場していましたね。


後に京伝のアイコンとなる"京伝鼻”の手拭の男は?

さてここからは空気を変えて、最後に現れたあの“のれんの男”について。

「つったじゅうさ~~ん!」
と、今までの重苦しいストーリーを跳ね飛ばすようにイキイキと暖簾から顔を出した京伝。
そのアングルは下記の手拭いを意識したものでしょう。


北尾政演 画 ほか『志やれ染手拭合』,白鳳堂,天明4 [1784] 跋. 国立国会図書館デジタルコレクション

ドラマで京伝が、「絵心のある人に手拭の絵を考えてもらって、一冊にまとめようかと。蔦重さんもひとつ、入銀しませんか?」と言っていましたね。

それがこの『志やれ染手拭合(しゃれぞめたなぐいあわせ)』(たなぐいとはてぬぐいのこと)。大名の子弟から吉原の遊女に至るまで、手拭の図案をずらり79種も掲載した本です。

その中に、特徴的な鼻の男がのれんからこちらをのぞいている図案があります。


この男は史実でもこの後、京伝の一大傑作『江戸生艶気樺焼』の主人公・艶二郎として登場します。

そしてあまりに人気がでたためか、「京伝鼻」と呼ばれて、京伝自身の自画像、アイコンとして使われるようにもなりました。
※実際の京伝は男振りがよかったそうで、自画像といっても、あくまで人気キャラを自画像がわりにしたということです。

次週の回ではこの男・艶二郎に、なんと京伝役の古川雄大さんが付け鼻をつけて扮するところが予告編で映っていましたね笑

そこまでする~?なんて麗しきミュージカルスターの古川さんファンは驚くかもしれませんが、艶二郎はおバカだけれどなんだか憎めないかわいい男なのですヨ。

こちら👇は私のXのポスト。

実はこののれん男は、この手拭いが初出かと思いきや、その前に京伝自身が描いた黄表紙「客人女郎」に原型が出てくるという話があります。

そのあたりも恋川春町とからんでとっても面白い。来週のドラマのネタはもしかしたらここからじゃないかなー、もしそうならめちゃくちゃ深い!なんて思うところもあります。が、長くなりますので、これについては後日別記事で書いてみますね。しばらくお待ちを。

◎艶二郎の誕生秘話を紐解く記事をアップしました!特徴的な獅子鼻をもつあのキャラは一体どこから来たのか?
そのルーツに迫ります!

◎京伝の一大傑作『江戸生艶気樺焼』って何?来週まで待てない~!という方は下記のあらすじや見どころを紹介した記事をご覧ください。👇
【黄表紙】モテたい男の末路⁉ 京伝の傑作『江戸生艶気樺焼』がおバカで愛おしい

それにしても古川さんは、どこまでやってくれるんでしょう…?


おわりに(次回は艶二郎が登場⁉)

以上、今回は意次の仇の取り方、そして次週へ続く蔦重の仇の取り方について感想・考察しました。

重く苦しい展開の中にあっても、志を継いでいこうという意次の強さに胸を打たれます。そして、ドラマのラストに登場した“のれんの男”——次回、いよいよ艶二郎が登場⁉

久しぶりに戯作者たちもたくさん出てきて、わちゃわちゃしそうですね。呪詛するほど思いつめた誰袖に、再び笑顔は戻るのでしょうか。

来週の展開も見逃せませんね。
意次の仇の取り方、あなたはどう思いましたか?
蔦重は、どうやって仇を取るのでしょうか?
次回の展開を想像しながら、みなさんの予想もぜひ聞かせてください!

それではまた次回の記事でお会いしましょう~♪




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