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大河べらぼう史実とスゴ本解説!蔦屋重三郎の歩み

大河ドラマ『べらぼう』の蔦屋重三郎が手掛けたスゴ本を史実で解説! 蔦重の歩みを作品一覧で振り返ります。

◎前回16話、壮絶な平賀源内の最期について感想・考察した記事はこちら。私のnoteのべらぼう関連記事の中で一番たくさんの方に読んでいただいています。源内ロスの方こそぜひ! ↓


4月27日(日)は、大河べらぼうのドラマはお休み。
その代わり「ありがた山スペシャル」という、今までの話題となったシーンを出演者の方と一緒に見ながら楽しむ特番がありました。

特番内では、蔦重と瀬川の切ない恋模様や、平賀源内の怪演ぶりなどが大きく取り上げられていましたね。ほかにも特番に出演されていた、尾美としのりさん演じる「オーミーを探せ」で盛り上がった朋誠堂喜三二や、水野美紀さん演じる松葉屋の女将・いね、中村蒼さん演じる蔦重の義兄・次郎兵衛も、本当に魅力的!

前回の大河ドラマ「光る君へ」で清少納言を演じ、専門の研究者の方たちからも「まさに清少納言そのもの」とその演技を絶賛されたファーストサマーウィカさんの細かな質問も楽しく、いつもと変わらずあっという間のスペシャルタイムでした。

ということで、今回の記事では本ドラマの主人公・横浜流星さんが演じる蔦屋重三郎について、史実の生い立ちから手掛けた作品まで、現在放送されたドラマ16話(安永九年あたり)までの期間をふりかえってみたいと思います。


蔦重のおいたち

大河べらぼうの考証・指導を担当されている鈴木俊幸氏の「蔦屋重三郎」(平凡社刊)によると、蔦屋重三郎が生まれたのは、寛延三年(1750)年。つまり2025年の現在からみると、275年前に生まれた人ということになります。本名は柯理(からまる)。

江戸の吉原生まれで、父は丸山重助、母は広瀬氏とのこと。父重助は尾張出身で、縁故を頼って吉原で働いていたのではとされますが、両親とも詳細は分かっていません。

七歳のときに両親が離婚し、その際に喜多川氏という人の元に養子に入ったようですが、この喜多川氏というのもそのいきさつも不明。

鈴木氏いわく、「吉原という地は血縁・地縁の密に絡み合って一体化した共同体。蔦重は吉原に生まれて吉原に育てられたと言っていい」とのこと。

後述しますが、駿河屋市右衛門(ドラマでは高橋克実さん)など吉原の有力者たちとの強いつながりが、蔦重の本屋としての出発を後押ししたことでしょう。

蔦重が最初に関わった本として挙げられる、吉原細見『細見嗚呼御江戸』が示す通り、蔦重はまずは吉原の宣伝マン、吉原ブランドの仕掛け人として出版業界に乗り出していったのです。


蔦重が手掛けた主な作品

ドラマでも、蔦重が手掛けた数々の作品が出てきましたね。もはやドラマファンにとっては懐かしいとまで思えそう笑
ここで整理のため、史実として残る主な作品を書き出しておきましょう。

平賀源内が序文を書いた『細見嗚呼御江戸』

『細見嗚呼御江戸』(国文学研究資料館所蔵) 出典: 国書データベース

安永三年七月、鱗形屋発行の吉原ガイドブック。巻末に「此細見改おろし」(最新情報を調べた&卸売りや小売りした)として蔦屋重三郎の名がある。平賀源内は「福内鬼外」という別号で序文を書いている。

遊女を花になぞらえた『一目千本』

『一目千本』(大阪大学附属図書館所蔵) 出典: 国書データベース

安永三年七月刊行。掲載を希望する遊女や馴染み客から出資を募った入銀本と思われる。蔦重の最初の刊行物であり、吉原から発信された史上初の出版物。当時の流行画工・北尾重政が絵を担当。

安く作り安く売れる吉原細見『籬乃花』

『[新吉原細見]/籬乃花』(江戸東京博物館所蔵) 出典: 国書データベース

安永四年秋刊行。節用集の重版事件発覚のため制作できなかった鱗形屋に変わり、蔦重が初めて発行した吉原細見。これまでと様式が異なり、一回り大きな中本仕立てで、各町の通りを挟んだ向かい側同士の遊女屋を上下にらみ合わせの形で記載。紙代など製作費を大きく削減し、ここから吉原細見はほぼ蔦重の独占となる。

遊女のオフの姿を描く『青楼美人合姿鏡』

〔北尾重政(1世),勝川春章//画〕『青楼美人合姿鏡 3巻』,山崎金兵衛,蔦屋重三郎,安永5(1776)刊. 国立国会図書館デジタルコレクション

安永五年正月刊行。北尾重政と勝川春章が合作した豪華な彩色摺の絵本。客がいないときの遊女のリラックスした姿が描かれる。これも入銀本とされる。(本を読む瀬川の姿があり、ドラマとのリンクに鳥肌が立ちましたね)

俄祭の楽しさが詰まった『明月余情』

稀書複製会 編『明月余情』第3編,米山堂,大正9-10. 国立国会図書館デジタルコレクション

安永六年刊行。吉原の八月のイベント「俄(にわか)」の各催しを活き活きと描いたパンフレット。大文字屋のすずめ踊りなど、祭りの楽しさがそのまま描かれている。絵は勝川春章、序文は朋誠堂喜三二。

吉原の各町を国に見立てた『娼妃地理記』

道蛇楼麻阿『娼妃地理記』,耕書堂,安永6 [1777] 序. 国立国会図書館デジタルコレクション

安永六年刊行。朋誠堂喜三二が、別号・道陀楼麻阿の名で書いた遊女評判記。吉原の各町を国に見立て、遊女屋を郡に、遊女を名所に見立てる。タイトルは雅楽の「笙・篳篥(しょう・ひちりき)」をもじったもの。

蔦重が初めて刊行した黄表紙の一つ『見立蓬莱』

『見立蓬莱 : 2巻』,[蔦屋重三郎],[安永9 (1780) ]. 国立国会図書館デジタルコレクション/この巻末ページで幕を開けているのが蔦重

安永九年刊行。この年から蔦重は黄表紙の出版をスタート。その一つがこの『伊達模様見立蓬莱』。作者は不詳だが、巻末には蔦重本人が芝居の幕を開ける役として登場する。開いた舞台には新刊のタイトルが短冊となって桜の枝に下がっているという、洒落たデザインの新刊告知ページが特長。


どうですか。こんなにも江戸の出版物が出てきたドラマ、ありました? これだけで私としては、今回の大河の功績は大きいと思っています。

ほかに富本節の正本もありましたよね。また蔦重が手掛けたわけではないですが、黄表紙ブームのきっかけ、恋川春町の「金々先生栄華夢」や、平賀源内の「放屁論」、杉田玄白の「解体新書」、鱗形屋が重版(ドラマでは偽版)したとして問題になった節用集などもからんでいました。

私自身も、まだまだ聞いたことがないような本もあって、本当に毎回学びが多いドラマです。

蔦重自身が書いたオモシロ跋文

さて、今回いろんな作品を見てみながら、気づいたのは蔦重もかなり熱くて面白い文章を書くんだな、ということ。
平賀源内や朋誠堂喜三二に序文を頼んでいるところはドラマでも描かれていますが、蔦重本人も序文や跋文(ばつぶん/あとがき)をよく書いてるんですね。

例えば、この「明月余情」の跋文にはなぞなぞ遊びも取り入れています。同じ「明月余情」の序文は喜三二が書いていてそちらは名文ですが(「俄の文字整いはべり」という例の文)、蔦重もなかなかサービス精神旺盛でがんばってるなーと思いました。

稀書複製会 編『明月余情』第1編,米山堂,大正9-10. 国立国会図書館デジタルコレクション

「郭中に物あり、首(かしら)は茶番、尾は祭礼、足手は躍(おどり)乃如くにて啼(く)聲(こえ)芝居(しばい)に似たるものハ何也何也(なんだなんだ)。是即俄てふ物にして日日夜夜(にちにちやや)趣向同じからず。きのふの興(けふ)ハ飛鳥川替り安きを花にして、余さず漏(もら)さず図画せしめ、明月余情と題し、初編より二篇三篇及び追々(過々?をいをい)に数編を継で遊客の電覧(でんらん)に備ふと云爾(しかいふ)大門口つたや十三郎板」

(大意)
「吉原遊郭にある物。頭は茶番、尾は祭礼、足手は踊りのようで、鳴く声は芝居に似ているものってなんだなんだ?
それはつまり『俄(にわか)』という祭りです。その祭りは日々同じ趣向のものはありません。
まるで変わりやすい飛鳥川の流れのように変化するそのイベントの様子を、余さず漏らさず絵に描いて、『明月余情』とタイトルをつけ、初編から二編、三編と続きものにして出版し、お客様のご覧に備えたいと、こういう次第です。
大門口蔦屋重三郎版」

ね? 実際にも蔦重って楽しい人だったのかも、と思えてきますよね。

◎「明月余情」や、喜三二の序文については下記の記事で詳しく書いてますので、こちらもぜひ!


吉原が行なった「教養」というブランディング

そもそも蔦重が生まれ育った吉原自体が、格式の高さを謳うために、遊女も三味線や踊りだけでなく和歌や書を習うのはもちろん、妓楼の主人自体がそれ相応の教養人である必要があった場所でした。

山東京伝が書いた黄表紙『御存商売物(ごぞんじのしょうばいもの)』という作品(天明二年刊)は、擬人化した本たちが巻き起こす騒動を描いたもの。その中に、「源氏物語」と「唐詩選」という日本と中国の古典たちが吉原の扇屋という遊女屋で遊んで帰るシーンが出てきます。なぜ扇屋かというと、扇屋の主人も女将も共に詩文をたしなみ、古典作品をよく読んでいるということで評判だったから。

「扇屋へ 行くので 唐詩選 習ひ」

という川柳もあるほどだそう。

◎『御存商売物』についてはこちらの記事で紹介しています。めちゃくちゃ面白いのでついでにどうぞ♪


また、仲ノ町の引手茶屋の主人・駿河屋市兵衛(ドラマでは高橋克美さん)という人も俳諧など文芸の嗜みがあったようです。

ドラマでは出てきませんでしたが、安永五年に蔦重が刊行した、吉原に伝わる怪談を集めた本『烟花清談(えんかせいだん)』。この作者はなんと駿河屋市兵衛なんですよ。

つい先日、その翻刻と大意をまとめた本『吉原の怪談』(白澤社)が出版されました。こういったレアな関連書籍が出版されるのも、大河ドラマ効果ですね。ご興味ある方はぜひ。私も読みましたがとても面白かったので、またnoteに感想書こうと思ってます。



おわりに(次回は往来物が登場!)

以上、今回は大河べらぼうの特番「ありがた山スペシャル」に合わせて、史実の蔦重の歩みを作品で振り返ってみました。

ドラマの蔦重は、今まさに吉原の入り口、五十軒道の間借りしていた次郎兵衛の店から独立して、その数軒先に店を構えたところ。黄表紙にも取り組み始めて、いよいよ本屋として力をつけていく…という感じですね。

次回は往来物が出てくるようです。往来物とは教科書のことで、吉原細見、富本節の正本と共に、この往来物という三本柱を手にいれることによって、耕書堂の経営基盤が強化されます。

さらには次々回あたりで歌麿もでてきそう?
予告編は気になる要素てんこもりでしたね。
皆さんは、今まででどんなシーンが印象に残っていますか?また予告編で気になるシーンはありましたか?
やはり瀬川かな。源内の狂気もすごかった。
歌麿の登場も待ち遠しいですよね。
私的には次郎兵衛義兄さんの癒しをもっと各話にほしいところ笑
お気軽にコメントで教えてくださいね。

また日曜夜を楽しみに!
それでは、次回の記事でお会いしましょう~~♪


参考文献/「蔦屋重三郎」鈴木俊幸著(平凡社)、「別冊太陽 蔦屋重三郎 時代を変えた江戸の本屋」(平凡社)、「黄表紙・洒落本集」水野稔 校注(岩波書店) ほか



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