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第13回:DX人材とは何者なのか ーIT&Scienceで再定義する「DX人材」

第12回のおさらい

『IT・AIは魔法ではない ー構造・モデル・仮説で読み解くAI活用の本質』として、AIを使いこなす人の本質を構造的に整理し、理系的思考の重要性を再確認しました。

いまいちどDX人材とは

DX人材という言葉は、ここ数年で急速に広まりました。

しかし実際には、その定義はかなり曖昧で、人によって概念が変わります。

AIを使える人ですか?データ分析ができる人でしょうか。
あるいは、プログラミングがで、ITに詳しい人?

こうした概念が思い浮かびますが、どれも部分的な役割に視点が行っているものかなと感じます。

では、DX人材とは何者なのか。
エンジニアなのか、企画職なのか、データサイエンティストなのか。

IT&Scienceという観点で整理すると、DX人材の本質はもっと別のところにあるのではないかと考えています。

DXの本質は「技術導入」ではない

まず整理すべきは、DXそのものです。

DXは、単にITツールを導入して従うことではありません。
ただAIを活用することでも、データを集めることでもありません。

第11回あたりで『不確実性』として整理してきた本質は、
「変化し続ける現実に対して、構造を理解しながら意思決定を更新し続けること」ではないかと感じます。

つまりDXとは、技術の話である前に、認識と判断の問題なのです。

なぜDXが止まるのか

現場ではよく、「人材不足」「データ不足」「ツールが古い」といった理由が語られます。

それらの問題をクリアするのも本当に大変なことですが、
実際には、それらが揃っていてもDXが止まる組織は多いと感じています。

その理由は不確実性を扱うことに慣れていないから。

現実のビジネスは非線形で、

・小さな変化が大きな影響を生む
・合理的な施策が逆効果になる
・時間差で結果が現れる

つまり、「やってみないと分からない」ことが前提の世界。

この世界では、完璧な計画も、唯一の正解も存在しません。

DX人材とは「構造を扱える人」

ここで重要になるのが、理系的思考です。

理系的思考というと、数学が得意とか、プログラミングができるというイメージを持たれがちですが、ここで言いたいのははそういった点ではありません。

本来の理系的思考とは、

・現象を観測する
・構造を捉える
・モデル化する
・仮説を置く
・検証し修正する

という、現実を理解するための思考プロセスです。

DX人材とは、この思考を使って不確実な現実を扱える人ではないでしょうか。

エンジニアでも企画職でもない

DX人材を職種で分類しようとすると、議論がズレます。

なぜならDX人材は、特定の職種ではなく「現実への向き合い方」だからです。

もちろん、
エンジニアリング知識は重要です。
データ分析能力も重要です。
業務理解や企画力も必要です。

しかし、それらはあくまで手段です。

本質は、

「複雑な現実を構造化し、不確実な中でも意思決定できること」

にあります。

つまりDX人材とは、
エンジニアか企画職かという分類を超えた存在なのです。

組織の大半の人が持つべきもの

DX人材は、一部の高度専門人材だけを指すものではなく、
組織の大半の人が持つべき「現実への向き合い方」だと考えています。

DXは一部の推進部門だけで完結するものではなく、現場の日々の意思決定の積み重ねでこそ進めることができます。

だからこそ現場一人ひとりが、
「仮説を置く → 小さく試す → 観測する → 修正する」
というサイクルを回せることがとても重要です。

一部の専門家だけが考え、他は指示待ちの構造では変化速度に対応できません。

DXを進めるとは組織全体が“更新し続ける構造”へ変わること。

その土台として、理系的思考を持つ人材が組織全体に必要なのだと思います。

AI時代にDX人材が重要になる理由

生成AIの登場によって、この傾向はさらに強まっています。

AIは、文章生成や要約、分析支援を高速に行えますが、「何を計算するか」は決められない。

つまり、

・どの問題を解くのか
・何を前提にするのか
・どこを観測するのか
・どの仮説を検証するのか

これらはすべて人間側の役割です。

だからこそAI時代には、単純な知識量よりも、構造設計能力の価値が上がります。

DX人材は「翻訳者」である

IT&Scienceの観点で見ると、DX人材は「翻訳者」とも言えます。

現場の曖昧な問題を、構造化し、モデル化し、仮説に変換する。

そしてそれを、ITやAIで扱える形へ落とし込む。

逆に、技術側の可能性を、現場の意思決定や業務へ接続する。

つまり、

現実 ↔ モデル ↔ 技術

をつなぐ役割です。

つなぐ役割を担えるようになるには、
現場の環境や状況を構造化してとらえられている必要があります。
この点は第6回、第7回あたりで整理しました。

ここにも理系的思考が重要であり、
DX人材の本質があるのではないでしょうか。

教育で育てるべきもの

現在の教育は、依然として正解を当てる力を中心に設計されています。

しかしDX時代に必要なのは、

・正解がない問題を扱う力
・仮説を置く力
・小さく試す力
・失敗から修正する力
・不確実な中で決断する力

つまり、正解を当てるための知識量ではなく、
仮設、検証、修正、判断を繰り返し行うための更新力です。

結論:DX人材とは「更新できる人」

DX人材とは、ITに詳しい人ではありません。
AIを使える人でもありません。

不確実な現実に対して、

構造を捉え、モデルを描き、仮説を置き、検証し、更新し続けられる人。

それが私が考えるDX人材の定義です。

そしてその中心にあるのが、IT&Scienceで整理している「理系的思考」なのだと思います。

最後に

ここまで13回に渡って、IT&Scienceが大事にしている「理系的思考」の視点から、多くの企業が進まず悩んでいるDXの構造と、それを進めていくために必要な力について整理してきました。

私が「理系的思考」が重要だと考える全体像については今回をもって終了にしたいと思います。長文、冗長な文章ばかりで大変恐縮ですが、目にとめていただきありがとうございました。少しでも皆様からご賛同が得られたり、皆様の中にご意見が浮かんだりされていれば幸いです。

繰り返しになりますが、ありがとうございました。

次回からはこの基本的内容を軸に、派生テーマや応用場面などを考えてみたいと考えています。引き続きよろしくお願いします!!

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