売上分析②:AIの仕事は計算ではなく「次の問い」
前年比の表が無事に会議を通った。
そこで部長が言う。
「で、どこから手をつければいい?」
表は答えてくれない。
前の章で作ったのは「何が起きたか」の表だ。会議が本当に知りたいのは「次にどうするか」。
その間を埋めるのが、この章だ。

AIはExcelの速い版でしかないのか
正直に言う。計算だけならExcelでできる。
前年比もこれからやるパレート分析も、計算自体はピボットテーブルで足りる。関数が得意な同僚ならAIなしで同じ表を作る。
だからAIを電卓の代わりに使っているうちは価値の半分しか受け取っていない。
AIの本当の仕事は、計算ではない。
出てきた数字を解釈し「次に何を見るべきか」を提案することだ。
AIが60点の答えを作り、あなたの問いが100点にする。#02で書いた質問力の勝負はこの場面のことだ。
パレートと着地を、どう聞くか
パレート分析とは、「どこが稼ぎの大半を生んでいるか」を並べて見る方法だ。名前は仰々しいが、やることは並べ替えと足し算だ。
プロンプト①:粗利のパレート分析+次の問い
【目的】
どのカテゴリが粗利の大半を生んでいるかを特定し、次に見るべき場所の提案までもらう。
【前提データ】
商品カテゴリ別の売上・粗利データ(1年分あるとよい)。
【プロンプト全文】
商品カテゴリ別の粗利で、パレート分析をしてください。
・粗利の大きい順に並べ、累積構成比を計算してください
・全体粗利の80%を生み出している上位カテゴリを特定してください
・その上で、この結果から「次に確認すべき問い」を3つ、それぞれ理由つきで提案してください
【出力の見方】
上位カテゴリの顔ぶれはたぶんあなたの予想通りだ。見るべきは下位。売上はあるのに、粗利にはほとんど貢献していないカテゴリがだいたい見つかる。
値引きか、原価か、売り方か。次の問いはそこに眠っている。
【注意点】
提案された3つの問いは、指示ではなく候補だ。全部やらなくていい。
会議で使えるのは1つ。選ぶのは、あなただ。
プロンプト②:期末着地の見立て
【目的】
「このままいくと期末はいくらか」を前提つきで試算する。
【前提データ】
今期の月別売上実績と期の目標額。
【プロンプト全文】
今期の月別売上実績をもとに、期末の着地を試算してください。
・「今期ここまでの平均ペースが続く場合」「直近3ヶ月のペースが続く場合」の2通りで計算してください
・それぞれの計算の前提を明記してください
・目標額に対する達成率も、2通りそれぞれで出してください
【出力の見方】
2通りの数字の「差」が大事だ。差が大きいなら直近で何かが変わっている。上向きか、下向きか。
会議に出すときは1つの数字ではなく幅で報告する。
【注意点】
これは機械的な試算であって当てものではない。来月の大口案件も主力顧客の異変も、AIは知らない。
数字に命を吹き込むのは、営業の現場情報だ。
「次の問い」を、どう引き出すか
やり方は簡単だ。どの出力にも最後に一行足す。
「この結果を疑うなら、どこを疑うべきですか」
「次に見るべきデータを3つ、理由つきで挙げてください」
これだけでAIは電卓から壁打ち相手に変わる。
たとえばパレート分析の後ならこんな問いが返ってくる。
「下位カテゴリの粗利率は、値引きによるものか、原価によるものか。値引きデータと突き合わせてはどうか」
「上位カテゴリへの依存度は、去年より上がっていないか。集中はリスクでもある」
どれも計算ではない。見る角度の提案だ。
そして角度の提案はExcelの関数からは出てこない。
私は多くの現場でAIが「人が気づいていなかった切り口」を返してくる瞬間を見てきた。導入の決め手がその一撃だったという会社もある。
ただしそれが起きるのは、こちらが問いを重ねたときだけだ。
1回聞いて満足する人のAIは、ずっと電卓のままだ。
落とし穴を1つ。
AIの提案に乗って分析のはしごを無限に登り続けること。
目的は分析ではない。会議で次の一手が決まることだ。
問いを1つ選んだらそこで止める。深掘りは、来週の30分でいい。
分析が上手い人とは、たくさん計算する人ではない。
止めどころを知っている人だ。
📝 この章のチェックリスト(3点)
計算だけでなく、解釈と「次の問い」まで頼んだか
着地の試算を前提つきの「幅」で報告したか
提案された問いから1つだけ選んで、次の宿題にしたか
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