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売上分析①:前年比の表を聞くだけで作る

明日の朝10時から月次会議がある。

夕方。部長に言われた。

「例の資料、前年比も入れておいて」

去年までのあなたなら前年のファイルを探しVLOOKUPを書き、夜遅くまでExcelと格闘していたはずだ。

今夜は違う。
今月と前年同月のデータをAIに渡して聞く。それだけだ。

この章から実践に入る。
第一走者はどの会社でも必要になる「前年比の表」だ。


なぜ前年比の表は「聞くだけ」で作れるのか

集計の手順が完全に定型だからだ。

前年比の表づくりは、並べ替え、突き合わせ、割り算。判断のいらない単純作業の積み重ねでできている。
AIがもっとも得意とする種類の仕事だ。

あなたの仕事は、手を動かすことではない。

「誰が・何を・どう見たいか」を言葉にすることだ。#05で書いた質問の型をここで初めて実戦で使う。

今回ならこうだ。
誰が=月次会議の部長たち
何を=部門別の売上と粗利
どう見たい=前年同月と比べて

これをそのままプロンプトにする。

何を、どう聞くか

プロンプト①:部門別の前年同月比較

【目的】
会議資料の骨格になる比較表を作る。

【前提データ】
今月と前年同月の売上データ(部門・売上・粗利が分かるもの)
ファイルが2つに分かれていてもそのまま両方渡していい。

【プロンプト全文】

今月と前年同月の売上を、部門別に比較する表を作ってください。

・列は「部門/今月売上/前年同月売上/前年比/今月粗利/前年同月粗利/粗利率の差」としてください
・前年比が90%を下回っている部門に印をつけてください
・最後に全社合計の行を入れてください
・計算に使った前提(対象期間、除外したデータ)があれば、表の下に書いてください

【出力の見方】
最初に見るのは合計行だ。
全社合計が自分の知っている月次の数字と合っているか。
次に前年比の「率」と「実額の差」を両方見る。
率が悪くても実額の小さい部門より、率はそこそこでも実額が大きく減っている部門のほうが会議では重い。

【注意点】
部門名が去年と今年でズレていると、同じ部門が別々に集計される。組織改編があった年は先に「この部門とこの部門は同じです」と教えておく。

プロンプト②:12ヶ月の推移と、気になる月

【目的】
前年比の表に「流れ」の文脈を足す。

【前提データ】
直近12ヶ月(あれば24ヶ月)の月次売上

【プロンプト全文】

過去12ヶ月の月次売上推移を表にまとめ、次の2点を教えてください。

1. 毎年繰り返している季節的な山と谷
2. 例年のパターンから外れている月と、考えられる要因の候補

要因の候補は、「データから言えること」と「推測」を分けて書いてください

【出力の見方】
AIが挙げる「要因」は仮説にすぎない。
大口の失注、値上げ、担当の交代——データの外の事情をAIは知らない。
知っているのは、あなたと現場だ。仮説に自分の知識を突き合わせて初めて「説明」になる。

【注意点】
月ごとの営業日数の差だけで数字は普通に上下する。小さな凸凹に意味を求めすぎない。

出た表を、そのまま会議に出していいか

だめだ。検算してからだ。

AIの出す表は見栄えがいい。だからそのまま貼りたくなる。ここで一手間かける人とかけない人の差が3ヶ月後の信用の差になる。

やることは、#05で決めた検算3点セットだ。

合計一致——AIの全社合計と、基幹システムや経理の月次合計を突き合わせる。

件数一致——元データの行数と、集計に使われた件数が合っているか。

3行突合——適当な部門を3つ選び電卓で前年比を計算し直す。

全部で5分だ。

AIの事故でいちばん多いのは、もっともらしい嘘ではなく地味な集計ミスだ。
この5分を飛ばすと、いつか会議室で「この数字、違わない?」が起きる。そのときどうするかは#13で書く。

検算が済んだら表の上に一行だけ添える。
「対象期間と部門の定義はこの通り」と。

前提を書いた表は反論に強い。
前提のない表は最初の質問で崩れる。


翌朝の会議を想像してほしい。

部長が表を眺めて聞く。
「この前年比、どの期間で切った?」

あなたは表の下の一行を指せばいい。
「そこに書いてあります。検算も済んでいます。」

それだけで会議室の空気が変わる。徹夜で作った表よりも確かめてある表のほうが強い。

聞くだけで作れる時代になった。
だからこそ確かめた人だけが信用される。

次の章ではこの表が出た「後」の話をする。
実は、そこからがAIの本領だ。


📝 この章のチェックリスト(3点)

  • 前年比は「率」と「実額の差」の両方を見たか

  • 会議に出す前に、検算3点セットをやったか

  • 表に前提(対象期間・部門の定義)をひとこと添えたか


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