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[13]【もう、逃げる自由すら残っていなかった】人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。-新聞配達編-


■この物語は筆者の実体験をもとに執筆しています。
・正直、極限まで恥をさらしています。
・僕が生きてきた記録(ノンフィクション)です。
・ほぼ毎日更新を目指しています。


【逃げる自由すら残っていなかった】


3部の誤配___。

いや、販売所に連絡が来たのが
3部というだけだ。

他にもあるかもしれない。

契約の切れた家に
入れてしまってないか。

新規の家を
飛ばしてしまってないか。

思い出せ___。
思い出さなければ。

でも、浮かぶのは
転倒した場所ばかりだ。

あの瞬間。
泥だらけの新聞。
倒れたバイク。

肝心の配達順路が、
どうしても出てこない。

3件の誤配さえ、
どこだったのか思い出せない。

転ばないことに必死すぎた。
それ以外の記憶が、
頭の中から抜け落ちていた。

社長が言う。

「まぁ、あれだ。
もし他にも誤配があっても、
新聞届けりゃええから。
気にすんな。」

そう言って、
ポンと肩を叩いてくれた。
励ますように。

「誤配あったら連絡ください。
僕が届けます。」

そう言うのが
精一杯だった。

すると社長は
少し笑って言った。

「いや、今日は帰って休め。
全身から疲れてるオーラ
出とるぞ。」

宮本さんも
横から口を挟んだ。

「最初は誰でもあるよ。
次から気をつければいい。」

「はい___。」

責められない。

そのことが、
かえって苦しい。
心臓に矢が刺さったまま
生きてる感じだ。痛い。

「腹減ったやろ?
パン食べよ。」

配達員用に置かれた
菓子パンの中から、
僕はアンパンを取った。

飲み物は
コーヒーじゃなく、
牛乳にした

ひと口かじる。

美味い___。

アンパンと牛乳が
こんなに合うなんて、
今まで知らなかった。

少しだけ、
身体に力が戻る気がした。

でも、家に帰って
いつものようにコーヒーを飲むと、
味がしなかった。

あれ___。

もう一口飲む。

やっぱり、
味がしない。

どういうことだろう。

吉田を裏切ったから、
今度はコーヒーにまで
裏切られたのか___。

そんな馬鹿げたことまで
本気で考えてしまう。

もう一度、
誤配がなかったか思い出そうと、
地図を広げた。

でも、
指先が震えて、
うまくなぞれない。

思い出せない。
手も、頭も、
言うことをきかない。

もうダメかもしれない___。

みんな優しい。

社長も。
宮本さんも。

だからこそ、
罪悪感だけが
どんどん膨らんでいく。

でも、
応えなければならない。

辞めるわけにはいかない。

新聞配達が
好きになったわけじゃない。

得意でもない。
自信もない。

この不規則な生活もきつい。

そして何より___


怖い。深い恐怖。


それでも、
今の僕には
ここしかない。

住む場所もある。
飯も食える。

全部、
ここで繋がっている。

だからもう、

逃げる自由すら、
自分には残っていなかった。

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4/18更新




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「人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。」

【第一章・失踪編】
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1話から読む

【第二章・新聞配達編】
目次から読む
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