[5]【誰にも教えてもらえない夜】人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。-新聞配達編-
■この物語は筆者の実体験をもとに執筆しています。
・正直、極限まで恥をさらしています。
・僕が生きてきた記録(ノンフィクション)です。
・ほぼ毎日更新を目指しています。
【誰にも教えてもらえない夜】
14時。
携帯のアラームで目が覚めた。
15時から、昼の業務が始まる。
「じゃあ今日は、宮本さんに付いてもらおう」
宮本さん___。
「俺もさ、まだ半年くらいなのさ。
すぐ近くで
親の代からやってる布団屋の2代目でさ。」
「もう、どうにもならなくなって。
今はここで働いてる。
まぁ___バイトなのか、本業なのか分からんけどさ。」
そう言って、少し笑った。
バイク2台で事務所を出る。
途中、自販機の前で止まり、
缶コーヒーを一本。
「昼はね、集金と契約。
切れそうな家の延長と、
新規の契約を取る。」
「でも今日は初日だし、適当に流そう。
配達もあるし、体力残しとかないとさ。」
優しいのか、諦めているのか。
どこか達観した人だった。
大学生の娘がひとりいるらしい。
寂れた布団屋では、
生活も楽じゃなかったんだろう。
缶コーヒーを飲む

___この銘柄。
まただ。
吉田が買ってくれていたやつ。
どこへ行っても、ついてくる。
「19時に事務所戻って、
20時まで報告と会議。で、2時から配達。」
「終わったら昼まで寝る。
それがこの仕事の流れやね」
過酷なサイクルだった。
でも___
やるしかない。
午前1時。
言われた通り、
事務所の仕事が終わってから起きていた。
外に出る。
寒い。3月下旬の夜。
自販機の前に立つ。
缶コーヒーを買う。
___ああ。
また、これか。
吉田が買ってくれたやつだ。
一口、飲む。
___やめろ。
考えるな。
今は、生きることだけだ。
顔を上げる。
新聞店。
でかい。
人が多い。
皆、黙々と動いている。
速い。
無駄がない。
空気が違う。
___誰に言えばいい?
近くの人に声をかける。
「すみません___。」
「あっち。」
短い一言。
指さされた方向へ行く。
また聞く。
また「あっち」。
宮本さんを探す。
いない。
昨日、教えてくれた人もいない。
誰に聞けばいいのか。
何をすればいいのか。
分からない。
僕は___
忙しく動く人たちの中で、
ただ、
突っ立っていることしかできなかった。
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「人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。」
【第一章・失踪編】
→目次から読む
→第1話から読む
【第二章・新聞配達編】
→目次から読む
→第1話から読む
