(28)【一度だけ、のつもりだった】 人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。-失踪編-
■この物語は筆者の実体験をもとに執筆しています。
・正直、極限まで恥をさらしてます。
・僕が生きてきた記録(ノンフィクション)です。
・ほぼ毎日更新を目指しています。
【一度だけ、のつもりだった】
朝4時。
【朝のコーヒー】
いつもと同じはずなのに、
少しだけ、味が違う気がした。
昨日のことを思い出す。
松下さんの言葉。
「また勝分折半で。」
——あれは、悪くなかった。
いや、違う。
悪くなかったんじゃない。
「勝った」んだ。
あの感覚だけが、
頭に残っている。

コーヒーを飲む。
苦い。
——こんな味だったかな——?
少しだけ、考える。
今日は日曜日。
休み。
別に、いいじゃないか。
たった一日。
たった一回。
それで何かが壊れるわけじゃない。
むしろ——
少しだけ、取り戻せるかもしれない。
失ったものを。
——そう思った。
5時。松下さんは来ない。
6時。まだ来ない。
7時になっても部屋のノックがない。
___待っている自分に気づいた。
気がつくと、
携帯を手に取っていた。
「今日、行きます。」
短く送る。
すぐに返事が来た。
「コーヒーあるか?
部屋に迎えに行くわ。」
その文面を見て、
少しだけ笑った。
——大丈夫。
今日は、遊びだ。
自分で決めた。
自分で選んだ。
誰のせいでもない。
コーヒーを飲み干す。
自分用にもう一杯、
入れることはしなかった。
___もう、落ち着く気がなかった。
松下さんの分だけいれよう。
縁起を担いでモーニング。
喫茶店に入る。
シッカリと朝食をとった。
「そろそろ行くか?」
「ハイ。」
店に入る。
音。光。匂い。
全部、覚えている。
身体が、自然に動く。
席に座る。
メダルを入れる。
回す。
回す。
回す。
___当たらない。
まぁ、こんなものか。
まだ大丈夫。
まだ、取り返せる。
そう思って、続ける。
回す。
回す。
回す。
気がつけば、
手元の金は減っていた。
でも、不思議と焦りはない。
——次で当たる。
(そんなわけないのに)
そう思っている。
天井まで行くか。
天井で天国モード当たれば良いだけ。
いや、思いたいだけかもしれない。
それでも、手は止まらない。
外に出た。
日が傾いている。
手元には、ほとんど何も残っていない。
風が、少し冷たい。
___負けた。
その事実だけが、
静かに落ちてきた。
悔しさは、あまりない。
ただ、分かってしまった。
___ああ、こうやって崩れるのか。
ゆっくりと。
静かに。
気づかないうちに。
帰り道。
コンビニの前で立ち止まる。
コーヒーを買おうか、迷う。
でも、やめた。
今日は、いらない。
___飲みたくなかった。
そのまま、歩き出す。
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「人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。」
【第一章・失踪編】
→目次から読む
→第1話から読む
【第二章・新聞配達編】
→目次から読む
→第1話から読む
