(10)【僕は逃げた】人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。-失踪編-
■この物語は筆者の実体験をもとに執筆しています。
・正直、極限まで恥をさらしてます。
・僕が生きてきた記録(ノンフィクション)です。
・ほぼ毎日更新を目指してます。
【僕は逃げた】
プリペイド携帯のバイブで目が覚めた。
松下さんは、まだ眠っている。
起こさないように
そっと外へ出て、電話を折り返した。
東京の彼女からだった。
「ねぇ。。。大変な事になってるよ。」
僕の失踪を知った母親と弟が
東京に来ているという。
小熊さん(従業員)が対応しているらしい。
ヤミ金。
家賃。
会社名義のトラック。
倉庫。
本人でないと対応できない事ばかり。
怖い人たちも
チラホラ来ているらしい。
どうしようもない、と。
電話を切って
呆然としたまま部屋に戻る。
松下さんは
まだ眠っていた。
僕は立ったまま
しばらく松下さんを見ていた。
(松下さん。。。ごめん。)
声には出さず
心の中でそう言った。
僕は荷物を持って
アパートを飛び出した。
分かっていた。
周りに迷惑をかける事も
全部、覚悟の上の失踪だった。
それでも。。。
家族に迷惑がかかっていると知ると
東京に戻るしかないと思った。
松下さんの携帯から
何度も着信が入る。
僕は出ない。
出られない。
やがてメールが届いた。
「どうしたん?
電話も出ないで。
明日、2人で逃げるんやろ?
待っとるで。」
責める言葉は
ひとつも無かった。
それが
余計に胸に刺さった。
東京に着いても
結局、何も出来なかった。
夜まで
戸越銀座の入り口の公園で過ごした。
ベンチに横になり、目を閉じる。
ここから彼女の家まで
徒歩5分。
だけど
電話もメールも出来ない。
連絡して
何と言うのか。
連絡して
何の意味があるのか。
行き交う人々の声。
笑い声。
みんな
幸せそうだった。
なのに僕は
ひとり恐怖している。
ベンチに座り直し
缶コーヒーを飲む。
ふと見上げると
冬の空は澄んでいた。

星が
とても綺麗だった。
信じられないくらいの美しさだった。
これから先も僕は何度も
星空に救われる事になる
涙が出そうになる。
でも
僕は泣かなかった。
それでも
頬を温かいものが流れていく。
僕は「失踪者」だ。
そして「逃亡者」だ。
これからは
その十字架を背負って生きていく。
そしてルビコン川を渡ったのだ。
もう戻れない。
僕は携帯を取り出した。
「松下さん、心配かけてごめん。
朝までには帰るから。」
電話した。
名古屋行き
最終の新幹線に乗った。
アパートに着いたのは
深夜だった。
ドアを開ける。
「ただいま。」
松下さんが
振り向いた。
「おう、早かったな。」
そしてニカっと笑って言った。
「明日の逃亡の計画、練ろうや。」
その言葉が
胸に沁みた。
僕は失踪者で
逃亡者だった。
そして松下さんは
その道の先輩だった。
今
頼るべき人は
この人しかいない。
「とりあえず今日は寝よ。」
「明日4時起きやで〜。」
深い人だった。
ここから
絶対にやり直そう。
僕は
そう決めた。
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「人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。」
【第一章・失踪編】
→目次から読む
→第1話から読む
【第二章・新聞配達編】
→目次から読む
→第1話から読む
