[34]【おかえり。ただいま。】人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。-新聞配達編-
■この物語は筆者の実体験をもとに執筆しています。
・正直、極限まで恥をさらしています。
・僕が生きてきた記録(ノンフィクション)です。
・ほぼ毎日更新を目指しています。
【おかえり。ただいま。】
買い物をした。
食品以外の買い物だ。
いつ以来だろうか。
ダイソーに入る。
色んな物が売っている。
生活に必要なコップですら、今までは借り物だった。
情けない。
けれど、生きるのに必死だった。
食べる物にも困った日々を思えば、ずいぶん人間らしい生活に戻ってきた。
良さそうなカップを見つけた。
少し大きめだ。
これならコーヒーをたっぷり飲める。
箸も買った。
今までは割り箸ばかり使っていた。
スプーンもフォークも、弁当屋やコンビニでもらったものばかりだった。
この際だから全部そろえよう。
楽しい。
買い物がこんなに楽しいものだとは思わなかった。
今日から生活が変わる。
携帯電話も変わった。
人夫出し。
冷蔵庫の処理。
地獄のような階段。
奢ってもらった焼肉。
居酒屋。
ずいぶん昔のことのように感じる。
みんな元気だろうか。
人間は勝手だ。
自分勝手だ。
自分の都合で逃げて、自分の都合で寄っていく。
いや。
松下さんや吉田に連絡するのはまだ早い。
今の自分には何もできない。
いつか、あの人たちを助けられるくらいになってから連絡しよう。
そんなことを考えながら買い物を続けた。
気が付けば会計は五千円近くになっていた。
こんなにも何も持っていなかったのか。
本当に紙袋の男と変わらない。
店を出て、ラーメン屋に入った。
自分で稼いだ金で食べるラーメン。
自分で稼いだ金で買い物ができる幸せ。
この気持ちは忘れてはいけない。
そう強く思った。
家に帰る。
早速、新しいカップでコーヒーを淹れた。
豆は同じなのに格段に美味い。
買ってきた物を整理していると、あっという間に配達の時間になった。
外田新聞店へ向かう。
店に入ると、僕が何か言う前に宮本さんが言った。
「おかえり」
ありがたかった。
僕は土産を差し出しながら答えた。
「ただいま」
宮本さんにだけ、少し多めに土産を買ってきた。
さあ。
また今日から配達を頑張ろう。
見上げると、鹿島の星空が綺麗だった。
→[次の話]第35話【身体が覚えていた】
26/06/03掲載
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「人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。」
【第一章・失踪編】
→目次から読む
→第1話から読む
【第二章・新聞配達編】
→目次から読む
→第1話から読む
