[29]【帰る場所がまだあった】人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。-新聞配達編-
■この物語は筆者の実体験をもとに執筆しています。
・正直、極限まで恥をさらしてます。
・僕が生きてきた記録(ノンフィクション)です。
・ほぼ毎日更新を目指してます。
【帰る場所がまだあった】
昼、2時。
今日はゴールデンウィークの
連休シフトが決まる日だ。
コーヒーをいれながら考える。
2連休でも取れたら嬉しい。
新聞配達の仕事は変則な分、
休みも変則だった。
新聞を配り終えた
夜中から、
次の夜中まで休みなので、
油断して昼寝すると
日中の休みがなくなる。
でも、日中は眠い。
そのジレンマがある。
15:00の勤務に行くと
ゴールデンウィークのシフトが
決まっていた。
僕の休みは、
ゴールデンウィーク明けだった。
その代わりに
3連休が与えられていた。
世間は遊んでいる。
自分は配っている。
でも、世間が終わったあとに、自分にも休みが来た。
嬉しい。なんて嬉しい事だろう。
ゴールデンウィーク明けだから
3連休は多分口実で
認められたんだろう。
勝手にそう思った。
何をしよう。
その時、最初に浮かんだのは、
この前、やっと声を聞けた
母の顔だった。
3連休あれば
福岡に帰って一泊できる。
皆に謝ることもできる。
元気な顔も見られる。
夕方の勤務が終わった後に
お母さんに電話しよう。
そう決めると、
心が軽くなった。
集金もいつもよりまわれた。
新規契約も取れた。
頼れるとか、
頼れないとかじゃない。
最後に思い出すのは、
家族だった。
夕勤が終わって、母に電話した。
呼び出し音を聞いている間、
手が震えた。
持っていたカップの中で、
コーヒーが揺れていた。
何を言えばいいのか分からなかった。
謝りたいことは山ほどある。
でも、
電話で全部言えるわけがない。
母が出た。
「もしもし」
その声を聞いただけで、
胸の奥が詰まった。
「お母さん。俺、一泊だけ帰れる」
そう言った。
一泊だけ。
福岡に帰れる。
顔を見に行ける。
それだけを伝えた。
電話の向こうで、
母が黙った。
怒っているのかと思った。
違った。
泣いているのが分かった。
僕は、何も言えなくなった。
「お母さん、ありがとう」
それだけ言って、電話を切った。
切ったあとも、
しばらく携帯を握っていた。
帰る場所が、まだあった。
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「人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。」
【第一章・失踪編】
→目次から読む
→第1話から読む
【第二章・新聞配達編】
→目次から読む
→第1話から読む
