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メタバースは「ウェルビーイング弱者」を救う

 「ウェルビーイング」という言葉、最近よく耳にしますよね。けれど、実際には何を指すのか、説明できる人は少ないかもしれません。世界保健機構(WHO)はそれをこう定義します。

 「個人と社会が経験するポジティブな状態であり、健康と同様に、それは日常生活のための資源であり、社会的、経済的、環境的条件によって決定される」もの。

Well-being is a positive state experienced by individuals and societies. Similar to health, it is a resource for daily life and is determined by social, economic and environmental conditions.

World Health Organization - Health Promotion Glossary of Terms 2021 10p

 つまり、ウェルビーイングとは単なる「幸せ」という感情ではなく、私たちを取り巻く環境や条件によって大きく左右される状態なのです。

 内閣府の調査によると、ウェルビーイングの重視事項として「家計と資産」「健康状態」「生活の楽しさ・面白さ」「仕事と生活(WLB)」などが多く選択されています。

 「家計と資産」や「健康状態」は一旦脇に置くとして、「生活の楽しさ・面白さ」や「仕事と生活のバランス」には、メタバースがポジティブに作用する可能性があります。

まず、重視事項の選択者の割合を、各分野別に確認する。「家計と資産」「健康状態」「生活の楽しさ・面白さ」「仕事と生活(WLB)」などが多く選択されており、特に「家計と資産」「健康状態」は全体の5割以上が重視している。

内閣府 政策統括官(経済社会システム担当) 
満足度・生活の質に関する調査報告書2024 ~我が国のWell-beingの動向~

 今回は特にこれらの項目について満足できていない—— 例えば、仕事に追われて趣味の時間を持てない人、孤立を感じている人、そんな“ウェルビーイング弱者”に焦点を当てます。

 これらの項目に関して満足はできていない。ですが、メタバースと関わることで生活満足度を上げることができ、結果的にメタバースがウェルビーイング向上に作用すると私は考えます。

メタバースがもたらす“心の報酬”

 メタバースはいくつかの重要な特性を持っています。

 まず1つが、チャレンジしやすいプラットフォームということです。

 現実世界では、新しいことにチャレンジするのに多くの障壁があります。失敗のコストが大きい、周囲の目が気になる、そもそも機会がない……。こうした理由です。

 一方、メタバースではそのハードルが圧倒的に低くなります。試行錯誤がしやすく、新しいスキルや活動にも気軽に挑戦できるのです。

 さらに、ダイレクトな反応が得られるという特性もあります。

 メタバース内での活動には、フィードバックが返ってくることが多いです。「この人イベントが盛り上がった」、「このワールドが高く評価された」。そういった反応がわかりやすいです。

 最後に、感謝のループが生まれることです。

 人間関係の起点になるのが「感謝」です。メタバース内では、誰かを助ける、誰かのために何かを作る、そうした行動に対する感謝がダイレクトに返ってきやすい環境になっているのです。

 クラスター社の加藤直人CEOも、メタバースコミュニティにおける「感謝のループ」を指摘しています。

「感謝経済」と「やりがい経済」の誕生

 バーチャル美少女ねむさんのレポートによると、メタバース内の活動によってお金以外の価値を感じた事があるのは81.5%。つまり、メタバース内では、従来の「金銭価値」だけでは説明できない経済が成立しています。

メタバース経済:ソーシャルVRライフスタイル調査2025(Nem x Mila, 2025) 53p

 それを「感謝経済」と呼ぶなら、メタバースでは直接的な報酬がなくても、「感謝されること」自体に大きな価値を感じる人が多いのです。

 通貨とは本来「感謝の気持ちの表現」であり、メタバースではそれが純粋な形で機能しているのです。

 たとえば、あなたが作ったアバターやワールド、イベントなども含みますが、それらが評価され、感謝される。その体験から得られる充足感は、時給で得られる金銭価値を上回る場合もあるでしょう。

 実際に私もイベントを開催したり、メタバース内でその他の活動をしたときに大きな充足感を得たことが何度もあります。

 「ウェルビーイング弱者」が「感謝される体験」を積み重ねることで、短期的なウェルビーイング向上が期待されます。

 そして、その活動の先にメタバース内の経済が大きくなったときに生まれる金銭的な収入が紐付けば、金銭面でも満たされ、長期的なウェルビーイングの向上が期待されるのです。

メタバース経済:ソーシャルVRライフスタイル調査2025(Nem x Mila, 2025) 66p

 つまり、メタバースは単なるエンタメ空間ではなく、心の空腹を満たし、人生に充実をもたらす新しい経済圏として機能するのではないでしょうか。

 もちろん、メタバースが万能な解決策ではないことも認識しておく必要があります。

 バーチャル美少女ねむさんのレポートにも掲載されているように、メタバースへの長時間接続ユーザーが増加しています。メタバース内でウェルビーイングが満たされるあまり、現実世界との関係性が相対的に低下してしまうかもしれません。

メタバース経済:ソーシャルVRライフスタイル調査2025(Nem x Mila, 2025) 15p

 それは、生活空間がメタバースに移行していると捉えられますし、メタバースに依存しているとも言えます。

 現実世界の繋がりがどこまで大切か。この問いに対する答えは人それぞれです。ただ、フィジカルな肉体が現実世界に存在する以上、多かれ少なかれの影響はあるのは事実でしょう。

メタバースが育む新しい幸福のかたち

 ここまでの考察を踏まえると、メタバースは単なる娯楽ではなく、「感謝される体験の積み重ね」により、重要なウェルビーイング向上の機会を提供していると言えます。

 今回は深く触れていませんが、ウェルビーイングに重要な「社会との繋がり」や、「ワークライフバランスの改善」にも影響します。

 社会との繋がりを作るという意味ではメタバースにおける人間関係はポジティブに作用しますし、メタバースで行われるビジネスがもっと大きくなればワークライフバランスに変化が生まれることでしょう。

 つまり、「生活の楽しさ・面白さ」だけでなく、「社会との繋がり」や、「ワークライフバランスの改善」これらが同時に実現する環境の1つとして、メタバースは機能する可能性があるのです。

 ウェルビーイングによる自己実現、そしてその先にある「個々人の幸福が相乗効果を生む社会」へ——。メタバースは、まさにその変化を支える新しいプラットフォームへと広がっています。

 メタバースは、変化を支える新しいウェルビーイングの舞台です。そこから生まれる幸福の形は、無限に広がりはじめています。

作家・ライター:咲文でんこ


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