【第5話】体に突き刺さる3本のチューブ。アメリカのICUで知った本当の孤独
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「……え、ICUって、あの『集中治療室』のICUですか?」
ドクターから告げられた言葉に、僕は言葉を失いました。
どうやら僕は、自分が思っていたよりも数倍
「シャレにならない状態」
だったようです。
肺炎は確定わかったと、
あとはウィルスが他にもあるかもしれない。
それが分かるまでは隔離が必要で、部屋から一歩も出るなという厳戒態勢。
もしあのまま無理してマイアミに飛んでいたら……と想像するだけで、
背筋が凍りました。
夜の22時、救急外来(ER)のベッドからICUの個室へ移動。
ウイルスを外に出さないための密閉された部屋でしたが、
テレビ付きの立派な個室でした。
驚いたのは病院のご飯。
皮肉なことに、
語学学校の寮の食事より数段美味しくて、
思わず
と声が漏れてしまいました。

点滴や薬の効果もあり、その夜は
久しぶりにぐっすりと眠ることができたんです。
しかし、本当の地獄は翌日に待っていました。
「心臓の周りに膿やウイルスが溜まっている。それを取り除くために、3本のチューブを体に刺す必要があるんだ」
……マジかよ。アメリカまで来て、体にチューブを刺されるなんて。
意識がある中で行われた、3本のチューブを挿入する小さい手術。
正直に言わせてください。……無茶苦茶、痛かった。
呼吸をするたびに、内側から抉られるような苦しさ。
術後は点滴と3本のチューブに繋がれ、
ベッドから一歩も動けない「囚われの身」になりました。
そんな僕を追い詰めたのは、
肉体的な痛み以上に「孤独」という名の恐怖でした。
担任の先生に送ったメールは返信がなく、
頼りにしていた日本人の友達からも連絡が途絶える。
「……あれ、僕、このまま異国の地で、誰にも知られずに消えるのか?」
震える手で日本のエージェントに連絡し、そこから語学学校へ。
ようやく月曜日、
学校のスタッフであるAさんがお見舞いに来てくれることが決まりました。
検査の結果、新種のウイルスではないと判明し、
ようやく人との接触が許可されたんです。
ICUの重い扉を開けて現れたAさんの腕には、
学校のみんなからの寄せ書きと、
なぜか一匹の「サメのぬいぐるみ」。
「明日、寮から荷物を持ってくるからね」
その言葉に、どれだけ救われたか。
実はこの時、一番きつかったのは
「携帯の充電器」がないことでした。
電池が切れるたびにナースに充電を頼み、
スマホが手元にない間、
僕はひたすら病室のテレビで流れている
『ハリー・ポッター』を見て過ごしました。
アメリカのケーブルテレビには、
一つのチャンネルで毎日ハリポタを流し続けている番組があるんです。
入院期間中、全シリーズを5周は見たはずです。
おかげで、僕のサンディエゴ入院の記憶は、
常にホグワーツのBGMと共にあります。
異国の病室、体に刺さった3本のチューブ、
サメのぬいぐるみ、そしてエンドレスなハリー・ポッター。
そんな奇妙で、絶望的で、
でも人の温かさに触れた「入院生活」が本格的に始まりました。
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