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【個別相談実録】#1 ある日、母を施設に入れることになった。〜罪悪感と向き合う、一人の介護者の物語〜

こんにちは、医師のくんぱすです。
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

今日から、新しい試みを始めます。
それは、”たった一人”の認知症介護者の方に長期的に伴走し、そのリアルな個別相談の軌跡を、皆さんと共有していくというものです。

なぜ、この試みを始めようと思ったのか。
それは、私が現場でずっと感じてきた、『認知症介護の悩みは、家族の数だけある』という現実を、綺麗事ではなく一人の人間の”物語”として伝えたかったからです。

いつも読んでいただいている介護者の方々の明日へのヒントや気づき、活力へ繋がるといいなと思います。

ある家族介護者さんとの出会い

先日、私の元に、ある一人の女性からこんな相談がありました。

「母を施設に入れることになりました。
絶対に拒否されると思うので当日まで内緒にしようと家族で話しました。
けれど、当日本人になんと言って伝えたらいいでしょうか。」

80代のお母様と、90代のお父様の老老介護。
日に日に増していくお母様の症状と、それに疲弊していくお父様の姿。
そして、家族としての決断とその罪悪感との間で、彼女は板挟みになっていました。

今日から、この一人の女性(Aさんとします)が、介護という長く険しい道をどう歩んでいくのか、そのリアルな軌跡を、皆さんと一緒に見守っていきたいと思います。

介護者が抱える悩み

Aさんが抱えていた悩みは具体的にはこういったものでした。

母には入所して欲しいが、拒否されると思う。
当日まで内緒にしておこうと思っているがそれでいいのか。
本人へなんと伝えたらいいか。

こういったお悩みを抱える介護者は少なくありません。

入所や入院など環境が変わることを、当の本人に伝えることで怒り出したり拒否されることが怖くて家族の口から言い出せない。

ご本人の気持ちになると、慣れ親しんだ家から離れることが難しいことも想像に容易いですよね。

「できれば母にも納得して入所して欲しい。
父を理由にすると父へ恨みが残るのもかわいそうなので理由をどう伝えたらいいか悩みます。」

そう話すAさんの声は、心なしか震えていました。
お母様にもできれば穏やかに入所して欲しいし、お父様に矛先が向くのも避けたい。
ご両親を想うその優しさに耳を傾ける私も少し胸が苦しくなりました。

私からのアドバイス

私は、彼女にこう伝えました。

「Aさん、一旦『納得してもらおう』という考えを手放してみませんか?」

電話の向こうで、Aさんが息をのむのが分かりました。
「え…いいんでしょうか」と。

私は続けました。

「いいんです。ご本人がすぐに納得できないのは、当然のことだから。
むしろ、『家に帰りたい』と言うのは、ごく自然な反応です。
その気持ちを時間をかけて解きほぐしていくのが、私たちプロの仕事。
そこは、プロである施設の職員さんに任せてください。
Aさんはお母様とお父様を思うその優しい気持ちだけ持っていてください。

家族だからこそ感情移入し、論理で「納得させよう」と考えてしまう。
でも、一番近くにいる家族だからこそ、症状の矛先が向かいやすいんです。Aさんのお母様も、デイサービスでは楽しそうに通えているんですよね?

「家族じゃない方が、うまくいくことも多いんです」

私がそう伝えると、電話の向こうのAさんの声が、少しだけ軽くなったように感じました。

決して、お母様を蔑ろにするわけじゃない。
でも、家族だからこそ、感情移入して身動きが取れなくなる時がある。
その重荷を、少しでも軽くしてあげたかったのです。

Aさんの心境の変化

施設入所が母のためなのか葛藤があった。
➡夫と二人きりという環境から変わることで易怒性が軽減する可能性があること、その症状で本人も苦しんでいることを知った。施設入所が本人のためともなり得ることに気づき安心した。さらに、薬剤調整の余地もまだあると分かった。

施設入所の当日、本人になんと説明し納得させたらよいか迷っていた
➡当日に話してすぐに納得してもらうということは難しいと再認識した。
施設職員さんに入所後の拒否の可能性を共有し、時間をかけて環境の変化を受け入れていけるように協力を得ようと具体的行動へ変わった。

施設入所後の家族の動きがイメージできていなかった。
➡「施設に入れて終わり」ではなく、認知症症状の変化を共有してもらい、生活環境は離れても引き続き家族として病院受診の付き添いなど必要な対処をするのが大事だと理解できた。

モヤモヤとした霧が晴れていくような、Aさんの心境の変化。
私は、これこそが対話の力だと信じています。

そして、初回の相談を終えた後、Aさんからこんなメッセージが届きました。

「くんぱす先生
本日はお忙しいところ話を聞いて下さりありがとうございました。

おかげさまで広く長い視野に切り替えることができました。
身内のことになるとつい近視眼的な考えになるので、相談できて良かったです。
入居して終わりではなく、入居後の様子、認知症も進んでいくことにまた戸惑うだろうなと思っています。
でもこれからの過程でもくんぱす先生に相談できるという後ろ盾があり心強いです。
一人で抱えず先生に頼れるようなスタンスでいようと思います。
ありがとうございました。」

Aさんとお母様の物語は、まだ始まったばかりです。
これから、施設への入所という、大きな転機を迎えます。
第2話はこちら↓

もし、あなたが今、Aさんと同じように悩んでいるなら、あなたの抱えるモヤモヤを、ぜひ一度私にお話してくださいませんか?

私が目指すのは【介護で潰れない社会】です。
そのための第一歩として始めたのが【認知症診療医による認知症介護者の個別相談】です。

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