歩いて、温泉に入って、また書く日。那須塩原ワーケーション2日目
前日の寒さと、ちょっとした予約ミスのハプニング。
冷えた身体で宿に滑り込んだ1日目は、どちらかというと、旅に身体が追いつくまでの時間だったのかもしれません。
▶︎ [Day1:当直明け、寒い那須へはこちら]
でもって、一晩眠って迎えた2日目の朝。
窓の外には、昨日とは少し違う光がありました。
今日は、歩いて、書いて、温泉に入って、また書く日。
場所を変えながら、少しずつ自分のリズムを取り戻していく、そんな1日になりました。
2日目の朝、包丁の音で旅が始まる
朝は7時ごろから、少しだけ作業をしました。
旅先でも、朝にPCを開くと、なんとなく日常が戻ってきます。
でも、窓の外の景色が違うだけで、同じ作業でも少し軽く感じる。
昨日の夜は、寒さと予約ミスと眠気で、かなり心が縮こまっていました。
でも、一晩眠ると、少し戻る。
人間、単純です。
でも、その単純さに何度も助けられている気がします。

朝食会場は、建物の隣にあるファーマーズマーケット兼食事処のような場所でした。
外に出ると、空が広い。
昨日のどんよりした空とは少し違って、青がちゃんと見えている。
「あ、2日目が始まったな」
そんな感じがしました。
中に入ると、昼に向けた仕込みの音が聞こえてきます。
包丁がまな板に当たる、
サッ、サッ、サッ、という音。
その奥で、オルゴールのBGMが小さく流れている。

窓の下には花畑。
その向こうを、東北新幹線が通っていく。
なんというか、情報量としては多いのに、ぜんぜん騒がしくないんですよね。
人の生活の音と、旅の景色と、少しだけ仕事の気配が混ざっている。
朝ごはんは、鮭定食。
特別な料理というより、ちゃんと一日を始めるためのご飯という感じで、こういう朝食がけっこう好きです。
昨日の夜が「知らない味に出会う旅」だったとしたら、
2日目の朝は、身体をゆっくり現地の時間に合わせる朝だった気がします。
昨日は気づかなかったパン屋さん
朝ごはんを食べ終えて、駅へ向かいます。
その途中に、小さなパン屋さんがありました。
昨日も同じ道を通っていたはずなのに、まったく気づかなかった。
夜の寒さと小雨と、予約ミスのことで頭がいっぱいで、
たぶんずっと下を向いて歩いていたのだと思います。

朝になって、少し空が明るくなると、同じ道なのに見えるものが増えている。
旅先って、不思議です。
場所が変わったというより、
自分の状態が変わったことで、景色の方が少し違って見える。
ドアを開けると、小麦のいい香りがしました。
朝ごはんはもう食べたあと。
でも、棚に並んでいたメロンパンを見たら、これはさすがに素通りできませんでした。

「朝ごはん食べたしな」と思いながら、結局ひとつだけ買いました。
旅先の「ひとつだけ」は、だいたい正しい。
昨日は見えなかったものが、今朝はちゃんと見えている。
それだけで、少し回復している気がしました。
太陽が出るだけで、世界はやわらかくなる
駅までは、歩いて15分ほど。
その道が、思っていた以上によかったです。
畦道を歩く。
蛙の声がして、
どこかではスズメたちが井戸端会議みたいににぎやかに鳴いている。
少し背を丸めながら畑仕事をしている年配の女性がいて、
狭い道では車がゆっくり横を通り過ぎていく。
そのたびに、こちらが少し端に寄ると、
「ありがとう」
と声をかけてくれる。
そんな何気ないやり取りまで、なんだかやさしい。
昨日の夜も、同じ場所を通ったはずでした。
でも、見えていた景色はまるで違いました。
あの時は寒くて、小雨も降っていて、頬に当たる風を避けるので精一杯だった。
でも朝になって、太陽が出るだけで、こんなにも世界はやわらかくなる。
昨日の夜にはただ寒かった道が、
朝にはちゃんと暮らしのある道に見えました。
景色が変わったというより、
自分の中の温度が少し戻ったのかもしれません。
朝の作業場所は、川沿いのカフェへ
黒磯駅に着いて、そこから北へ15分ほど歩きます。
道はほとんどまっすぐで、勾配も少なく歩きやすい。
朝の畦道を抜けたあとだったので、少しずつ街の空気に戻ってくる感じがありました。
向かったのは、来る前から少し気になっていたカフェ、BARSMITH。
川沿いにぽつんと佇む、コンクリート造りの建物です。
青い空と白い雲。
その下に、無機質なグレーの壁。
那須の自然の中にあるのに、少しだけ異国っぽい。
リゾート地というより、どこか海外の郊外にあるコーヒースタンドみたいな雰囲気でした。

土曜の10時30分ごろ。
店内は比較的空いていて、落ち着いた空間でした。
白とグレーを基調にした空間。
コンクリートの壁。
大きな窓。
観葉植物の緑。
日差しが差し込んで、無機質な空間なのに、どこかやわらかい。


コーヒーは、ルワンダを選びました。
朝の目覚めにちょうどいい、酸味の強い一杯。
ひと口飲むと、昨日より少し頭が軽いことに気づきます。
Wi-Fiもあって、作業もしやすい。
2階と3階にはコワーキングスペースもあるようでした。
でも、この日は1階で十分でした。
朝の蛙の声。
スズメたちの井戸端会議。
パン屋の小麦の香り。
畦道を通り過ぎる車の「ありがとう」。
そういう小さなものを、身体のどこかに残したまま、また文章に戻っていく。
ワーケーションって、たぶんこういうことなのかもしれません。
観光して、作業して、また歩いて、少し食べて。
その合間に、文章の温度が少し変わる。
いつもの机では出てこなかった言葉が、旅先の空気を通すと、少しだけ違う形で出てくる。
そんな感じがしました。
寄り道したい場所を横目に、鹿の湯へ
カフェで作業をしたあと、黒磯駅からバスに乗って、鹿の湯へ向かいました。
バスの中は、それぞれの目的地へ向かう人たちで思ったより混み合っていました。
観光へ向かう人。
宿へ向かう人。
家族連れ。
一人旅らしき人。
私は席に座ることはできず、立ったままの移動になりました。
揺れるバスの中で、窓の外をぼんやり眺める。
すると、途中に気になる場所がどんどん出てきます。
お菓子の城。
チーズガーデン。
わら納豆。
カフェ。
そして、道の途中にぽつぽつ現れる蕎麦屋さん。
全部気になる。
全部、ちょっと寄りたい。
車で来ていたら、たぶん何度も寄り道していたと思います。
「あ、ここ行きたい」
「ここも気になる」
「帰りに寄れるかな」
そうやって、地図上に小さな未練がどんどん増えていく感じ。
でも今回は、歩き旅。
バスで進んで、降りたら歩く。
寄り道できそうで、意外とできない。
だからこそ、まずは目的地まで信じて向かうことにしました。
途中、東南アジア……?と思うような雰囲気の一角も見えました。
そこで外国人の方々が何人か降りていく。
那須高原というと、温泉、牧場、カフェ、別荘地みたいなイメージが強かったのですが、こういう国際的な一面もあるんだなと少し驚きました。
Geminiが出してくれた候補にはなかった場所も、実際に移動してみると、こんなにたくさん目に入ってくる。
AIが地図を広げてくれる。
でも、寄り道したくなる場所は、自分の目で見つけるしかない。
そんなことを思いながら、バスは山の方へ進んでいきました。
鹿の湯は、身体で読む歴史みたいだった
鹿の湯に近づくにつれて、だんだん空気が変わっていきました。


観光地に向かっているというより、少し山の奥に入っていく感じ。
「鹿が見つけるまでは、たしかに誰も行かなさそう」
そんなことを思うくらい、少し秘境感がありました。
入り口も独特です。
きれいに整った温泉施設、というより、長い時間その場所にあり続けてきた湯治場という感じ。
観光客向けに新しく整えられたものではなく、場所そのものに歴史が染み込んでいるような空気がありました。
そして、近づいた瞬間にわかる硫黄の香り。
ああ、温泉に来たんだな、というより、
これは普通の温泉ではないな
と身体が先に気づく感じ。


中に入ると、さらに独特でした。
まず、入り方。
そして、温度。
これはなかなかすごい。
ゆっくり浸かって癒される、というより、身体ごと湯に向き合う感じ。
熱い。
でも、その熱さに意味がある気がする。
初めて来た人間には少し戸惑うけれど、昔から通っている人たちにとっては、きっとこの形式そのものが鹿の湯なのだと思います。
旅先で、ただ気持ちいい場所に行くのもいいけれど、こういう自分のいつもの感覚が少しずれる場所に出会うのも、かなり面白い。
鹿の湯は、そんな場所でした。

鹿の湯で温めて、カフェまどかで冷ます
鹿の湯を出たあと、バス停近くのカフェまどかへ向かいました。
黒磯からバスで40分ほど。
那須湯本で降りて、道路を挟んで反対側にあるカフェです。
白を基調とした外観で、さっきまでいた鹿の湯の、歴史が染み込んだ空気とはまた少し違う場所。
中に入ると、坂に沿うような階段状のつくりになっていて、視界が開けています。
ボサノバの音楽。
暖炉。
奥に見える緑。
温泉上がりの火照った身体を、少しずつ冷ましてくれるような時間でした。


ここでコーヒーを一杯飲みながら、少し作業。
鹿の湯で身体を温めて、
カフェまどかで頭を冷ます。
この流れ、かなり好きでした。
気づいたら、黒磯に戻っていた
カフェまどかでは、1時間半ほど作業しました。
鹿の湯でしっかり身体を温めて、
コーヒーを飲みながら少し頭を冷まして、
また文章に戻る。
かなり良い時間でした。
そこから、バスで黒磯方面へ戻ります。
帰りは40分前後の下り道。
疲れていたのか、バスに揺られているうちに記憶がふっと薄くなって、気づいたら黒磯駅に着いていました。
行きはあんなに、窓の外の気になる場所を一つひとつ拾っていたのに、帰りはほとんど覚えていない。
身体は正直です。

黒磯の商店街にある、小さな作業基地
黒磯駅に戻って、そのまま今日の宿へ向かいました。
出発前にGeminiがおすすめしてくれていた、chus。
本当は1日目から泊まりたかったのですが、予約が取れず、今回は2日目だけ宿泊することにしました。
静かな、昔ながらの商店街。
その中に、ぽつんと一角だけ今どきな空気が流れている場所がありました。
カフェ。
ピザ屋さん。
雑貨屋さん。
そしてドミトリー。
適度な田舎の中に、ちゃんとおしゃれな空間がある。
でも、無理に都会っぽくしている感じではなくて、黒磯の空気に合わせて、少しずつ今の感覚を混ぜているような場所でした。

1階にはカフェと雑貨。
2階にドミトリー。
3階にはラウンジ。
建物全体が、泊まる場所というより、少し長く滞在するための小さな拠点みたいでした。
部屋は、2段ベッドのドミトリータイプと個室タイプがあるようでした。
今回は個室にしました。
入ってみると、広すぎない。
むしろ、適度に狭い。
でも、その狭さがよかったです。
大きなホテルの部屋だと、なんとなく落ち着かないことがあります。
広すぎて、どこに座ればいいかわからない感じ。
でも、この部屋は、荷物を置いて、PCを開いて、少し身体を休めるにはちょうどいい。
作業するには、こういうこもれる感じがありがたいことがあります。
旅先なのに、少しだけ自分の作業部屋みたいになる。
その感じが、かなり好きでした。
3階のラウンジには、無料のコーヒーがありました。
しかも、豆から淹れられる。
これはコーヒー好きにはかなりたまらない。
旅先で、無料のコーヒーがあるだけでもうれしいのに、豆を挽くところからできるのは、だいぶ嬉しい。
テラスもありました。
暖かい日なら、コーヒーを片手に外で作業するのもかなり良さそうです。
chusは、ただ泊まる宿というより、黒磯で作業しながら滞在するための基地みたいな場所。
このワーケーションには、かなり相性が良かったです。
秘密基地みたいな部屋で、眠くなるまで
夜は少し肌寒かったので、外には出ず、部屋で作業することにしました。

chusの個室は、広すぎないけれど、それが逆によかったです。
少し屋根が近くて、
こもれる感じがあって、
なんとなく秘密基地みたいな空間。
大きなホテルの部屋だと、少し持て余してしまうことがあります。
でもこの部屋は、
ベッドがあって、
荷物を置いて、
PCを開くと、
それだけでちょうどいい。
静かな商店街の上に、自分だけの小さな作業部屋を借りているような感覚でした。
少しだけ作業するつもりが、気づけば12時過ぎ。
眠くなるまで書いて、
眠くなったらそのまま寝る。
ワーケーションとしては、たぶんかなり理想に近い夜でした。
観光して、温泉に入って、カフェで作業して、宿に戻って、また少し書く。
派手ではないけれど、ちゃんと一日が自分の中に沈んでいく感じ。
秘密基地みたいな部屋で、少しだけ夜更かしをして、そのまま眠りに落ちました。

2日目を終えて
歩いて、温めて、冷まして、また書く。
2日目は、そんな一日でした。
AIに提案してもらったルートをなぞっているようで、実際には、途中で目に入った景色や、身体に残った温度や、ふと聞こえた音に、何度も予定をほどかれていく。
それが、すごくよかった。
旅先で作業するというのは、単に場所を変えてPCを開くことではなくて、その土地の光や音や匂いを、少しずつ文章に混ぜていくことなのかもしれません。
朝の包丁の音。
畦道の蛙の声。
ルワンダの酸味。
鹿の湯の熱さ。
カフェまどかのボサノバ。
chusの秘密基地みたいな部屋。
どれも、今日書いた文章のどこかに、少しずつ混ざっている気がします。
心地いい疲労感に包まれながら、今夜はぐっすり眠れそうです。
次回は、最終日。
雨上がりの朝、少しうれしい知らせから始まります。
ちなみに、今回立ち寄ったカフェや作業スペース、宿については、別の記事でまとめる予定です。
黒磯で作業するならどこがよさそうか。
鹿の湯のあとに休めるカフェはどこか。
chusはワーケーション向きなのか。
そのあたりは、旅日記とは少し分けて、実用メモとして残しておこうと思います。
関連記事
今回の旅のはじまりはこちらです。
▶︎ [Part 0:行き先を決めるまで]
▶︎ [Part 1:当直明け、寒い那須へ]
次回は、いよいよ最終日です。
雨上がりの朝、chusのラウンジでコーヒーを淹れて、
画面を開いたら、少しうれしい知らせが届いていました。
また、今回立ち寄ったカフェや作業スペース、宿については、別記事でまとめる予定です。
黒磯で作業するならどこがよさそうか。
鹿の湯のあとに休めるカフェはどこか。
chusはワーケーション向きなのか。
旅日記とは少し分けて、実用メモとして残しておこうと思います。
▶︎ [那須塩原ワーケーション実用メモはこちら](執筆中)
ちなみに、このnote全体の入口として「待合室」のようなページも作っています。
医療の記事だけでなく、診察室のエッセイ、旅の記録、勉強部屋のような記事も、少しずつ並べていく予定です。
ふらっと立ち寄るような感じで、気になる部屋からのぞいてもらえたら嬉しいです。
