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「健康のために野菜を食べてます」その前に知りたい、カリウムの話

こんにちは。内科の医師をしています、くまのです。
いつも読んでくださってありがとうございます


普段の診療で、健診結果や生活習慣病を見ながら、いつも思うことがあります。
それは、身体はすべてつながっているということです。

病気という名前がつく前に、自分の身体が出している小さなサインをすくい取ること。
それが、いちばん優しくて、いちばん身近な予防医療だと思っています。

だから、診察室で伝えきれなかったことや、健診結果の裏側にあるストーリーを、ここに少しずつ言葉として残しています。

私がどんな人間なのか、そこでなぜこのnoteを書いているのかは、こちらにまとめました。
▶︎ [はじめましての記事はこちら]


前置きが長くなりましたが、今日は、
「健康のために野菜を食べてます」その前に知りたい、カリウムの話
について、一緒に考えてみます。

カリウムは、血圧の文脈では“味方”になりうる一方で、腎臓の状態によっては“注意点”にもなる栄養素です。

だから今日は、カリウムを「良い/悪い」で決めるのではなく、今の身体に合っているかという視点で見ていきます。



「野菜は身体にいいですよね?」という、まっすぐすぎる質問

「先生、血圧が高いって言われたので、野菜を増やしています」

外来で、ときどき聞く言葉です。

その言葉を聞くと、まず思うんです。

ああ、すごくまっすぐな努力だな、と。

血圧が高い。
じゃあ塩分を減らそう。
野菜を食べよう。
果物も少し増やそう。
コンビニのお弁当だけじゃなくて、サラダも足そう。

そうやって、自分の生活を少しでも良くしようとする。
これは本当に大切なことです。

いや、わかるんですよ。

健診で「血圧が高めです」と言われたとき、何から変えればいいのか、けっこう分からないんです。

薬を飲むほどなのか。
塩分を減らせばいいのか。
運動すればいいのか。
体重を落とせばいいのか。
何かサプリを飲めばいいのか。

その中で、「野菜を増やす」は、いちばん分かりやすくて、いちばん前向きな行動に見えます。

しかも、だいたい間違ってはいません。

高血圧の食事療法では、減塩だけでなく、野菜や果物、低脂肪乳製品などをうまく取り入れる食事パターンが大切です。
いわゆるDASH食という考え方では、カリウム、マグネシウム、カルシウム、食物繊維を多く含む食事が血圧管理に役立つと考えられています。

ここで出てくるのが、今日の主役です。

カリウム。

カリウムという名前、健診結果や採血結果で見たことがある方もいるかもしれません。
「K」と書かれていることもあります。

でも、カリウムって少し不思議な栄養素なんです。

血圧の世界では、カリウムはわりと“味方”として登場します。
塩分に偏った身体のバランスを整える方向に働き、血圧管理の助けになることがあります。

ところが、腎臓の世界では、同じカリウムが急に“注意点”として登場します。

「腎機能が落ちているので、カリウムに注意してください」
「野菜や果物の摂り方を相談しましょう」
「カリウムが高いので、薬や食事を見直しましょう」

こう言われることがある。

ここで、多くの人が混乱します。

「え、野菜は身体にいいんじゃないの?」
「血圧にはカリウムがいいって聞いたのに?」
「じゃあ、摂った方がいいの?控えた方がいいの?」

そう思いますよね。

でも、この混乱こそ、身体の面白いところです。

栄養素には、いつでも絶対に良いもの、いつでも絶対に悪いもの、というより、今の身体がどう扱えるかで意味が変わるものがあります。

カリウムは、その代表選手のひとつです。

今日は、カリウムを「良い」「悪い」で決めつけるのではなく、血圧、腎臓、薬、食事をつなげながら見ていきます。

カリウムは、敵なのか。
味方なのか。

たぶん答えは、そのどちらでもなくて、
身体の状態によって、付き合い方が変わる存在
なのだと思います。


味方の顔:カリウムは“塩分のブレーキ役”になりうる

まず、カリウムの“味方の顔”から見ていきます。

血圧の話をするとき、どうしても主役になりやすいのは塩分です。

「塩分を控えましょう」
「ラーメンの汁は残しましょう」
「味噌汁は1日1杯くらいにしましょう」

もう耳にタコですよね。

血圧の話になると、だいたい塩分が登場します。
血圧界のレギュラー出演者です。

もちろん、塩分は大切です。

塩分を摂りすぎると、身体の中に水分を引き込みやすくなります。
イメージとしては、しょっぱい漬物が水を抱え込むような感じです。

身体の中で塩分が多い状態になると、血管の中の水分量が増えたり、血管にかかる圧が上がりやすくなったりします。
その結果、血圧が上がりやすくなる。

では、カリウムは何をしているのか。

ざっくり言うと、カリウムは身体の中でナトリウム、つまり塩分の成分とバランスを取りながら、余分なナトリウムを外へ出す方向に関わります。

ここは少しイメージで考えてみてください。

身体の中に、塩分というアクセルがあります。
アクセルを踏みすぎると、血圧という車がぐんぐん進んでしまう。

そこにカリウムが入ると、ブレーキ役として働くことがあります。

もちろん、カリウムひとつで血圧が全部決まるわけではありません。
血圧は、血管、腎臓、ホルモン、自律神経、体重、睡眠、ストレス、年齢、遺伝、いろいろなものが絡みます。

でも、食事の中でカリウムを含む野菜や果物、豆類などをうまく取り入れることは、血圧管理の一部として意味があります。

だから、「血圧が高いから野菜を増やしています」という行動は、基本的にはとても自然です。

むしろ、最初の一歩としてはすごく良いと思います。

ただし、ここで小さな但し書きがつきます。

腎臓がカリウムをうまく扱える状態なら。

この一文が、今日の記事の大事なところです。

カリウムは、身体の中で余った分を主に腎臓から外へ出します。
つまり、腎臓がしっかり働いているときには、カリウムをある程度調整できます。

台所でたとえるなら、食材が入ってきても、冷蔵庫に入れるもの、調理するもの、捨てるものを整理できる状態です。

ところが、冷蔵庫が小さくなったり、片づける人手が減ったりすると、同じ量の食材でも扱いきれなくなることがあります。

カリウムもそれに似ています。

血圧の文脈では味方になりうる。
でも、腎臓の処理能力によっては、注意が必要になる。

ここが、カリウムの面白くて、少しややこしいところです。

【画像①:カリウムは“塩分のブレーキ役”になりうる】

注意点の顔:腎臓が弱ると、カリウムは“ため込みやすい荷物”になる

ここから、カリウムのもうひとつの顔に入ります。

血圧の文脈では味方になりうるカリウム。
でも、腎臓の力が落ちてくると、話が変わります。

腎臓は、身体の中の余分なものを尿として外へ出す臓器です。
もちろん、それだけではありません。
水分、塩分、酸とアルカリ、血圧、貧血、骨の代謝など、いろいろな調整をしています。

その中に、カリウムの調整もあります。

血液中のカリウムは、多すぎても少なすぎても困ります。

少なすぎると、筋肉がうまく働かなかったり、だるさが出たり、不整脈の原因になったりすることがあります。
逆に多すぎても、心臓のリズムに影響することがあります。

つまり、カリウムは身体にとって必要だけれど、ちょうどよい範囲に保つ必要がある栄養素です。

ここで腎臓が大事になります。

腎臓が元気なうちは、余分なカリウムをある程度外へ出せます。
でも、腎機能が落ちてくると、カリウムを外へ出す力が弱くなり、血液中にたまりやすくなります。

すると、同じ食事でも意味が変わります。

腎臓が元気なときには、野菜や果物に含まれるカリウムは、血圧管理の味方になりうる。
でも腎臓が弱っていると、同じ野菜や果物が、カリウムを増やしすぎる原因になることがある。

ここで、読者の頭の中に小さな混乱が生まれます。

「じゃあ、野菜は食べない方がいいの?」

そう思いますよね。

でも、ここで極端に振り切らないことが大切です。

腎臓が悪い人は野菜禁止、という話ではありません。
果物は全部ダメ、という話でもありません。

大事なのは、自分の腎機能とカリウムの値に合わせて、食べ方を相談することです。

たとえるなら、カリウムは普段は役立つ食材です。
でも、冷蔵庫が小さくなったときに、同じ量を買い込むと入りきらなくなる。

食材そのものが悪いわけではありません。
冷蔵庫の大きさと、買い方のバランスの問題です。

腎臓が元気なときは、カリウムという食材をうまく扱える。
腎臓が弱ってくると、扱える量が変わる。

だから、必要なのは「食べる/食べない」の二択ではなく、
今の身体なら、どのくらい、どんな形で食べるのが合っているか
を考えることです。

この視点があると、健康情報に振り回されにくくなります。

「カリウムが血圧にいいらしい」
「腎臓が悪いとカリウム制限らしい」

どちらも一部は正しい。
でも、どちらも一文だけでは足りません。

身体は、いつも文脈つきで動いています。


同じカリウムなのに、なぜ“味方”から“注意点”に変わるのか

ここが、今日の記事のいちばん大事な転換点です。

カリウムは、ある日突然、悪者になるわけではありません。

昨日まで味方だったカリウムが、今日から敵になりました、という話ではないんです。

変わるのは、カリウムそのものではなく、身体の側の受け止め方です。

腎臓の排出力。
飲んでいる薬。
脱水。
便秘。
血液の酸とアルカリのバランス。
採血の条件。
一時的な体調不良。

こうしたものによって、同じカリウムでも意味が変わります。

たとえば、高血圧やCKDの治療でよく使われる薬に、RAAS阻害薬というものがあります。

名前が急に難しいですね。
RAASは、身体の中で血圧や塩分、水分を調整するホルモンのシステムです。

ざっくり言うと、身体の水道と圧力を調整する管理室のようなものです。

RAAS阻害薬は、このシステムの働きを調整して、血圧を下げたり、腎臓を守ったりする目的で使われます。
高血圧、糖尿病、CKD、心不全などで、とても大切な薬です。

でも、この薬を使うと、カリウムが上がりやすくなることがあります。

ここがまた、ややこしいところです。

腎臓を守るために使いたい薬が、カリウムを上げることがある。
でも、カリウムが上がったからといって、すぐに薬をやめればいい、という単純な話でもありません。

診療では、まずいろいろなことを確認します。

採血のときに溶血していないか。
便秘が強くないか。
脱水がないか。
NSAIDs、いわゆる痛み止めを飲んでいないか。
食事でカリウムが増えすぎていないか。
腎機能はどのくらいか。
薬が重なっていないか。

こういう確認をしながら、「カリウムを下げること」と「腎臓や心臓を守る治療を続けること」のバランスを見ます。

つまり、カリウムは敵か味方か、ではありません。

今の身体が扱える量かどうか。
今の薬や腎機能とバランスが取れているか。
そこを見る数字です。

ここに、健診結果の面白さがあります。

Kという小さな項目は、ただの電解質の数字ではありません。

血圧、腎臓、薬、食事、便通、体調。
いろいろなものをつなぐ、小さな交差点のような数字です。

「Kが高いですね」
「Kが低いですね」

その一言の奥には、身体の水道管、冷蔵庫、ゴミ出し、薬の管理室が全部少しずつ関わっています。

例えが渋滞してきましたね。

でも、それくらいカリウムは、身体のいろんな場所とつながっているということです。

もし手元に健診結果や採血結果の紙があるなら、少しだけアルファベットの**「K」**という欄を探してみてください。

たぶん、そこには3点いくつ、4点いくつ、という小さな数字が並んでいると思います。
健診結果の中では、血圧や血糖やコレステロールほど目立たないかもしれません。

でも、その小さな数字の奥には、身体の水道管や、冷蔵庫や、ゴミ出しや、薬の管理室のドラマが詰まっています。

ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、健診結果って、そういう紙なんです。

見慣れた数字の中に、身体の裏側の生活がにじんでいる。

そう思うと、いつもの採血結果が少しだけ違って見えてきます。


カリウムを怖がるより、腎臓が扱えるうちに血圧を守る

では、私たちはどう考えればいいのでしょうか。

ここで、今日の最初の話に戻ります。

「血圧が高いので、野菜を増やしています」

この行動は、責められるものではありません。
むしろ、とても良い入口です。

腎臓が元気なうちは、野菜や果物、豆類などを含む食事パターンが、血圧管理に役立つ可能性があります。
減塩と組み合わせることで、血圧を整える助けになることもあります。

ただし、eGFRが下がっている。
CKDと言われている。
カリウムが高いと言われたことがある。
RAAS阻害薬やMRAなど、カリウムが上がりやすい薬を飲んでいる。
腎臓内科でフォローされている。

こういう場合は、自己判断で「健康のために」と野菜ジュースや果物をどんどん増やす前に、一度相談した方が安心です。

ここでも、極端に考えなくて大丈夫です。

カリウムを怖がって、野菜を全部遠ざける必要はありません。
逆に、身体にいいからといって、無条件に増やし続ける必要もありません。

大事なのは、今の身体がカリウムをどう扱えるかを見ることです。

血圧が高い時点でできることは、たくさんあります。

減塩。
体重管理。
運動。
睡眠。
禁煙。
飲酒の見直し。
必要なら薬物療法。
糖尿病や脂質異常症の管理。
そして、腎臓を守る治療。

血圧を整えることは、将来の腎臓を守ることにつながります。

ここで少し言い方に注意が必要です。

「若いうちからカリウムを摂っておけば、将来カリウム制限はいらない」とまでは言えません。
腎機能は、年齢、糖尿病、高血圧、体質、薬、他の病気など、いろいろな要因で変わります。

でも、こうは言えます。

腎臓がカリウムを扱えるうちに、血圧を整え、腎臓を守ることには意味がある。

将来の制限を減らせるかもしれない。
少なくとも、腎臓への負担を少なくする方向にはつながる。

この考え方は、かなり大切だと思っています。

制限が必要になってから頑張るのではなく、制限が必要になりにくい身体を目指して、今できることをする。

その中に、食事の見直しも、血圧管理も、カリウムとの付き合い方も入ってきます。

健診結果は、怒られるための紙ではありません。

「今の身体は、この栄養素をどう扱えているか」
「この数字は、未来の生活にどうつながるか」
「いま見直せることは何か」

そういう問いをくれる、小さな手紙みたいなものです。

【画像②:カリウムが“味方”から“注意点”に変わるチェックマップ】

まとめ:栄養は“良い/悪い”ではなく、“今の身体に合っているか”で見る

最後に、今日の話を3つにまとめます。

ひとつ目。

カリウムは、血圧の文脈では味方になりうる。

野菜や果物、豆類などに含まれるカリウムは、塩分に傾いた身体のバランスを整える方向に働き、血圧管理に役立つことがあります。

「血圧が高いから、食事を見直そう」
「野菜を増やしてみよう」

その気持ちは、とても大切です。

ふたつ目。

腎機能が落ちると、カリウムは注意点に変わる。

腎臓は、カリウムを外へ出す調整役です。
腎機能が低下すると、カリウムがたまりやすくなることがあります。

だから、CKDと言われている人、カリウムが高いと言われた人、腎臓や心臓を守る薬を飲んでいる人は、自己判断でカリウムを増やしすぎず、食べ方を相談することが大切です。

みっつ目。

大切なのは、血圧・腎臓・薬・食事をつなげて見ること。

カリウムは、敵でも味方でもありません。

今の身体が扱える量か。
腎臓がどのくらい働いているか。
飲んでいる薬は何か。
血圧や食事はどうか。

そこまで含めて見たときに、カリウムとの付き合い方が見えてきます。

もし健診や外来で血圧が高めと言われていて、野菜を増やしているなら、こう聞いてみてもいいと思います。

「血圧が高くて野菜を増やしていますが、腎機能やカリウムは大丈夫ですか?」

もし腎機能が少し低いと言われたことがあるなら、

「腎機能が少し低いと言われました。野菜や果物の食べ方は相談した方がいいですか?」

このくらいで十分です。

難しい栄養学の言葉を覚える必要はありません。
大事なのは、自分の身体に合わせて食べ方を調整する視点を持つことです。

同じ栄養素でも、身体の状態が変わると役割が変わる。

だから健診結果は、食べ方を責める紙ではありません。
身体との付き合い方を見直す手紙です。

「健康のために野菜を食べています」

その前向きな行動を、ちゃんと自分の身体に合う形に整えていく。

カリウムを怖がるのではなく、カリウムを通して血圧と腎臓のつながりを見る。

今日の記事が、そんな小さな視点になればうれしいです。


☆今日の一言

今日の一言:「身体にいいものも、身体に合わせてこそ味方になる。」

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参考文献

本記事は、高血圧、DASH食、CKD、RAAS阻害薬、高カリウム血症管理などに関する医学的知見をもとに、一般の方向けに読みやすく再構成しています。
カリウムと血圧、腎機能低下時のカリウム管理、薬剤と高カリウム血症の関係、腎保護治療の考え方などを参考にしています。

医学情報は今後更新される可能性があるため、実際の診断や治療、食事制限については、主治医や管理栄養士、専門医と相談してください。

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