【健診の読み方】渡された健診結果だけ見ていませんか?|3年分並べるだけで“病気の手前”に気づける読み方
こんにちは。内科の医師をしています、くまのです。
普段の診療で、健診結果や生活習慣病を見ながら、いつも思うことがあります。
それは、身体はすべてつながっているということです。
病気という名前がつく前に、自分の身体が出している小さなサインをすくい取ること。
それが、いちばん優しくて、いちばん身近な予防医療だと思っています。
だから、診察室で伝えきれなかったことや、健診結果の裏側にあるストーリーを、ここに少しずつ言葉として残しています。
📣 はじめてこのnoteに来てくださった方へ
このnote全体の歩き方はこちらにまとめています。
前置きが長くなりましたが、今日は「“少しずつ悪い”健診結果」について、健診結果の読み方から一緒に考えてみます
健診結果って、たいてい渡された瞬間に見る場所が決まっています。
A判定か。
B判定か。
再検査があるか。
赤い文字があるか。
そして、特に大きな異常がなければ、少し安心して、封筒に戻して、引き出しの奥へ。
……いや、すごくわかります。
僕も自分の結果を見るとき、まずそこを見ます。
「よし、今年も大きな異常なし」
「まあB判定はあるけど、毎年こんなもんだし」
「再検査って書いてないなら、とりあえず大丈夫か」
そう思いたくなりますよね。
でも、診療の中で健診結果を見ていると、ふと感じることがあります。
今年の結果だけ見ても、身体の変化は意外と見えない。
むしろ、本当に大事なサインは、今年の1枚ではなく、**去年、一昨年との“差”**の中に隠れていることが多いのです。
📣 健診結果は、1年分の通知表ではなく、数年かけて身体が書いている日記のようなものです。
ここが、今日いちばん伝えたいことです。

A判定でも、身体は変わっている
たとえば、今年の血糖値が基準値内だったとします。
HbA1cもまだ糖尿病の数字ではない。
だから「大丈夫」と言われる。
もちろん、それはそれでひとまず安心していいことです。
今すぐ病気と診断される状態ではない、という意味では大事な情報です。
でも、そこで終わらせるのは少しもったいない。
去年よりHbA1cが少し上がっている。
一昨年より腹囲が増えている。
中性脂肪がじわじわ上がって、HDL、いわゆる善玉コレステロールが少しずつ下がっている。
それぞれは小さな変化です。
でも、並べてみると、
「あれ、身体が少しずつ同じ方向に向かっているな」
と見えてくることがあります。
これは、数字にビビれという話ではありません。
むしろ逆です。
病気になる前に気づけるなら、それは怖い話ではなく、かなり優しいサインです。
いきなり救急車で運ばれるより、
いきなり薬が必要になるより、
いきなり「もう少し早く来ていれば」と言われるより。
健診結果の小さな変化に気づけることは、身体がまだこちらに話しかけてくれている、ということだと思うのです。
📖 血糖値だけを見ていても、将来の血管リスクは読みきれません。
血圧、脂質、体重、喫煙習慣、腎臓の数字まで含めて見ることで、身体全体の流れが見えてきます。
“少しずつ悪い”が見逃されやすい理由
病気は、ある日突然始まるように見えることがあります。
「急に糖尿病と言われました」
「急に血圧の薬が必要と言われました」
「急に腎臓が悪いと言われました」
外来でも、こういう言葉を聞くことがあります。
でも、健診結果を数年分並べてみると、実は急ではないことも多いです。
体重が少しずつ増えていた。
腹囲が毎年1cmずつ増えていた。
血圧が120台から130台に近づいていた。
HbA1cが5.5、5.7、5.9と上がっていた。
eGFRがじわじわ下がっていた。
尿蛋白が「±」で何度か出ていた。
ひとつひとつは、たしかに小さい。
でも、身体の変化はだいたい小声で始まります。
最初から大声で叫んでくれればいいのですが、残念ながら身体はわりと控えめです。
いや、控えめすぎることもあります。
特に腎臓なんて、かなり我慢強い臓器です。
多少悪くなっても、痛くもかゆくもない。
だからこそ、数字でしか気づけないことがあります。
💡 「まだ正常範囲」よりも、「どちらへ向かっているか」
ここを見るだけで、健診結果の意味はかなり変わります。
3年分並べるだけで、見える景色が変わる
では、具体的にどうすればいいのか。
まずおすすめしたいのは、難しい計算ではありません。
健診結果を3年分並べること。
これだけです。
今年の紙だけを見ていると、A判定かB判定かに目が行きます。
でも3年分並べると、数字の“流れ”が見えます。
見る項目は、最初から全部でなくて大丈夫です。
まずはこのあたりです。
体重・腹囲
毎年少しずつ増えていないか。
特に腹囲は、内臓脂肪のサインとして見たい数字です。
血圧
まだ高血圧と言われていなくても、少しずつ上がっていないか。
病院での血圧だけでなく、家庭で測る血圧もかなり大事です。
HbA1c・空腹時血糖
糖尿病の数字に届いていなくても、じわじわ上がっていないか。
中性脂肪・HDL・LDL
LDLだけでなく、中性脂肪が高くなっていないか、HDLが下がっていないか。
脂質は単独ではなく、血糖や腹囲ともつながります。
eGFR・尿蛋白
腎臓の数字です。
特にeGFRは、今年の数字だけでなく“下がり方”を見ることが大切です。
📖 eGFRは、今年の数値だけでなく“下がり方”を見ることが大切です。
前年から大きく低下している場合や、数年かけてじわじわ下がっている場合は、腎臓の変化が進んでいないか一度立ち止まって確認したいところです。
ここで大事なのは、完璧に理解することではありません。
「なんとなく、全部が少しずつ悪い方向に行っている気がする」
この違和感を拾えるだけでも、十分に意味があります。
健診結果は、身体全体の物語として読む
生活習慣病のややこしいところは、ひとつの数字だけで完結しないところです。
血糖だけ。
血圧だけ。
コレステロールだけ。
体重だけ。
もちろん、それぞれ大事です。
でも現実の身体は、そんなにきれいに分かれていません。
内臓脂肪が増える。
インスリンが効きにくくなる。
血糖が上がりやすくなる。
中性脂肪が増える。
血圧も上がる。
脂肪肝も出てくる。
腎臓にも負担がかかる。
こんなふうに、身体の中ではいろいろな変化がつながっています。
だから、健診結果もバラバラの数字としてではなく、
身体全体の物語として読んだ方がいい。
たとえば、腹囲が増えて、中性脂肪が上がって、HDLが下がって、HbA1cも少し上がっている。
このとき、ひとつひとつの数字がギリギリ基準値内でも、
「内臓脂肪やインスリン抵抗性の方向に進んでいるかもしれない」
と考えることができます。
逆に、少し悪かった数字が、体重や腹囲の改善と一緒に良くなってくることもあります。
それは、身体がちゃんと反応してくれているサインです。
こういう変化を見ると、健診結果はただの判定表ではなくなります。
ちょっと大げさに言えば、
身体との交換日記みたいになります。
……交換日記って、今の若い人に通じるんでしょうか。
まあ、身体からのLINEみたいなものです。
未読スルーしすぎると、あとで通知が大変なことになります。

📖 脂肪は、ただ体についている“余分な重り”ではありません。
特に内臓脂肪は、血糖・血圧・脂質・腎臓・心臓にまで影響する、全身の代謝のハブのような存在です。
まずやってほしいこと
この記事を読んで、いきなり生活を全部変えようとしなくて大丈夫です。
明日から毎日運動して、食事を完璧にして、睡眠も整えて、ストレスもゼロにして……
そんなことができたら、たぶんこの記事を読んでいません。
少なくとも僕はできません。
まずは、家にある健診結果を探してみてください。
できれば3年分。
なければ2年分でも大丈夫です。
そして、A判定やB判定だけでなく、同じ項目を横に並べてみてください。
体重。
腹囲。
血圧。
HbA1c。
中性脂肪。
HDL。
LDL。
eGFR。
尿蛋白。
そこで、少しだけ考えてみる。
自分の身体は、ここ数年でどちらに向かっているんだろう。
良くなっているなら、それは素晴らしいことです。
横ばいなら、それも身体が踏ん張ってくれているのかもしれません。
少しずつ悪くなっているなら、責める必要はありません。
ただ、気づいてあげてください。
数値はあなたを責めるためにあるのではなく、
未来のあなたを守るためにあります。
📣 健診結果は、渡された紙ではなく、あなたの身体が毎年書いてくれている小さな日記です。
今年の1枚だけでは見えないことがあります。
でも、3年分並べると、身体が少しずつ話していたことに気づけるかもしれません。
病気という名前がつく前に、身体の小さなサインをすくい取る。
それはたぶん、いちばん優しくて、いちばん身近な予防医療です。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
この記事が、あなたの引き出しの奥に眠っている健診結果を、もう一度開いてみるきっかけになれば嬉しいです。
☆今日の一言

📍 健診結果を、もう少し全体で見てみたい方へ
血圧、血糖、脂質、腎臓、体重、睡眠。
健診結果の数字は、ひとつひとつ別々に見えるけれど、身体の中では静かにつながっています。
このnoteでは、健診結果を「正常・異常」だけではなく、身体から届いた小さなメッセージとして読み解いています。
参考文献
本記事は、以下の診療ガイドライン・臨床テキスト・レビュー内容をもとに、一般の方向けに読みやすく再構成しています。
日本糖尿病学会 編. 糖尿病診療ガイドライン 2024
American Diabetes Association. Standards of Care in Diabetes 2026
日本高血圧学会. 高血圧治療ガイドライン / JSH 2025 関連資料
日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版
KDIGO. KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease
日本腎臓学会. CKD診療ガイド 2024
日本肥満学会. 肥満症診療ガイドライン / 肥満症関連資料
日本循環器学会. 急性・慢性心不全診療ガイドライン 2023年改訂版
また、記事内の考え方は、血糖・血圧・脂質・体重・腎機能を個別ではなく包括的に捉える臨床資料、eGFRを単年の値ではなく経時変化で見る考え方、内臓脂肪を全身代謝に影響する要素として捉える資料を参考にしています。
※本記事は診断や治療を目的としたものではありません。健診結果で気になる項目がある場合は、自己判断で放置せず、医療機関で相談してください。
