レベル上げって必要ですか? ――ルカニの人によるHD-2D版ドラクエ1&2「いばらの道だぜ」じっくりレビュー
はじめに
昨年の今頃、私はこんな記事を書きました。
そして今年も書きます。
対象はその続編であるHD-2D版ドラゴンクエスト1&2です。
……本来の商品名は「ドラゴンクエストI&II」なのですが……まぁとりあえずこの記事ではHD-2D版ドラクエ1&2と書くことにしておきますね。
スクエニ メンバーズでは、『ドラゴンクエストI&II』をプレイした方を対象に、ゲーム内容に関するアンケートを実施中です。
— SQUARE ENIX MEMBERS (@SQEX_MEMBERS_JP) December 1, 2025
ご協力よろしくお願いいたします。https://t.co/i5ij2K2kAC
※回答期限:2025年12月14日(日)23:59まで#DQ1and2 pic.twitter.com/mW6OvZyOj7
さて、この記事では昨年のHD-2D版ドラクエ3の記事とは違い……
良かったぞこれは良作だな!と褒める部分と、でもここはなぁとご意見申し上げる部分の両輪になっています。
本作でもプレイスタイルによって天寄り地寄りに分かれる難易度バランスの問題があるのです……が、前作に比べればかなり高尚な悩みです。
総じて、本作は迷ってるならば買いです。ドラクエ好きなら特に。
ネタバレにならないうちにプレイしとくのをオススメ。
※この記事にはゲーム内容に関する記述を含みますが、なるべく核心に至るネタバレは含まないように記述を行っています。
目次
良ゲーです!
詳細は後で書きますが、原作のドラクエ1&2とは別物であり、かつ制作の力の入れようから見ても、明らかにドラクエ3よりこちらを本命に据えていたとわかる完成度です。
なので、ドラクエ3で様子見に転じた皆様には、ドラクエ1&2は買ってよいですとお伝えすべき作品だと判断しています。
ネタバレ防止のために少しボカシた表現にしておきますが、HD-2D版ドラクエ3を遊んで「コレがドラクエのHD-2Dかぁ」と思ってしまうのは早計かつ損失であり、HD-2D版ドラクエ1&2のHD-2DでやっとHD-2Dという作品表現の意味を発揮できたといえます。
もっとハッキリ言ってしまえば、SFC版やスマホ版など他機種でドラクエ3を既プレイの方が、いまからわざわざHD-2D版ドラクエ3を買って遊ぶ理由はありません。ドラクエ3についてはHD-2Dにした意味が特になかったからです。
堀井雄二さんもおっしゃってた通り、HD-2Dシリーズにおいてロト三部作を時系列に沿った3→1→2の順でプレイすることには意味があります。その意味で3をプレイしていることは、1&2を隅々まで味わうためには必要な体験ではあります。
しかし、HD-2D版のドラクエ3でないといけないという強い理由はありませんし、いまから嫌々HD-2Dドラクエ3をプレイするくらいなら迷わず最初からHD-2D版ドラクエ1&2を買ってください。

アプデの甲斐あって、直近のレビューは「非常に好評」になっています。
で、私を始めとするHD-2D版ドラクエ3を発売日にフルプライスで買った人たちが一体何の価値を得たというのかという話については、スク(エニ)の悪い伝統が露骨に出たと言わざるを得ない……という意味で後味の悪さが残ります。
もっともっとハッキリ言えば、これHD-2D版ドラクエ3を無理に出さないほうが誰にとっても幸せだったよね。と、まぁそれはそれとして……
HD-2D版ドラクエ1&2という作品には、HD-2Dにはまだこれだけの地力があり、ドット絵はまだ戦えるという感動を味わえる演出もありました。そういう意味でも、個人的にはぜひプレイしていただきたいタイトルです。
ただし、真エンドまで到達するかどうかでも評価が大きく異なる作品であるということは注意すべき点として記しておきます。
「ただし」という部分
上記の真エンドの件もそうですが、ゲームとして手放しですべてを褒められるかというとそうではなく、改善点やアラとして目につく部分がママあります。
おそらくこれから私の記事を読んで、あるいは他の方のレビューに「悪いところへの指摘はやけに具体的で数多いのに、良い点の内容が褒めてる割に薄くない?」というご感想を抱く方が多いかなと思います。
それには幾つかの明確な理由があります。
ひとつはネタバレ防止のため。
終盤以降の展開に「良さ」が詰まっているのですが、やはり現段階でそれを詳らかにするのは気が引けます。
また「良さ」がストーリーなど演出面などの比重で大きく、かつそれは全編にわたっているので具体的な言及がしづらいことぜんぶよかったっていう知能指数低下オタク構文になる
また、「その中でも特に何処が良かった?」と聞かれても「終盤のあの辺なんだけどネタバレになるからな〜〜〜!」と布教したいのにうまく言語化できない限界オタクになる……のが、本作の口コミ評価に対してなかなかピンとくる表現が増えないひとつの理由だと私は考えています。
総じて、良かったと思える部分は抽象的であり心に訴えかける部分なのに対して、大きく指摘されがちな難易度調整関係のプレイング要素については具体的かつロジカルに問題と感じる部分を指摘しやすいという環境が出来上がっています。
そもそも日本のゲームレビューは減点式になりがちであるという事実も合わせて、本作のレビューには気を配る必要があると思います――もちろんこの記事もです。
前作からの改善点
ここで次の項へと進もうと思ったのですが、あまり他のレビューで具体的な改善点を挙げているものがないなと思ったので、参考のためにわかる範囲で列挙していきます。かなり多いです。
特に演出面での改善点や本作にしかないシステムなど、見落としやあえて書いていないものもありますので目安程度にご承知おきください。
また、アプデで改良されたものは書いていません。逆に言うと、おそらく以下の要素はドラクエ3にはアプデ後ですら存在しません。
なお、筆者のプレイ環境=Switch→Switch2による強化要素がおそらく含まれます。
(本文書き終えた後に挿入してる項なので本文と説明の重複があります)
全体的に大きく作り変えられていて原作を大きく補完している
モンスター保護など取ってつけたような収集要素がない
イベントシーンできちんと時間の経過(夕暮れになるなど)が表現されている
というか主人公たちがきちんとイベントで棒立ち以外のアクションをしている
キャラクターの斜め向きのドット絵が追加されている
……だけではなくドットパターンが大きく増えており、イベントシーンではドット絵で様々なジェスチャーを取るなど表現力が大幅に豊かに。

レベルアップ時に回復する設定を難易度とかかわらずオフにできるオプションの追加
HP0でも死ななくなる(無敵化する)設定をオフにできるオプションの追加
楽ちんプレイ以外で使用不能なのは前作と同様

宝箱の配置をマップで見えるようにできるオプションが追加されている
未発見の秘密の場所のヒントを出すオプションが追加され理不尽感がなくなっている
さらに、発見済みの場合は地図にきちんと表示される

敵の弱点をつく行動にヒントを表示できるオプションが追加されている
耐性まではわからないので、「丸わかり」にはならない

「アイテムさくせん」が追加され、さくせんを設定した仲間に装備を使わせないなど道具に対する細かい設定が可能に
「さくせんで つかわない」が追加され、さくせんを設定した仲間に特定の特技や呪文を使わせないなど細かい設定が可能に


会心必中ばっか使う問題を解消
敵味方のバフや状態異常すべてを戦闘中にアイコンで確認することができるようになった
前作ではエフェクトから読み取る必要があり、非常に視認性が悪かった

キラキラや秘密の場所から本来まだ入手できない極端な強装備が拾えてしまったりするケースが減った
『2個目』などの形で後から入手するパターンやモンスタードロップ品を狙うなどの要素はある
上記に関連し、武器防具屋が機能するようになり、終盤までゴールドの正当な使い道がある
無理やりゴールドを使わせるような理不尽お使いイベントがない
新システムにより、終盤でのどうぐコマンドの価値が上昇した(回復アイテムの価値が上がった)
悪質な遅延行為、ハメコンボ的な行動を行う敵が減った

耐性装備などの重要性は増している
ファンファーレ待ちでテンポが悪いような場面がだいぶなくなった
いのりの指輪を拾ったときにジングルが鳴らなくなった
ルーラ位置が「町はずれ」や「入口」ではないマップの登場
ただし一部。とはいえ頻繁に訪れるマップなので利便性は高い
要所でのイラストカットの挿入
前作にもあった気がするものの、比較にならないほど枚数が多い

細かい遠近感やカメラワークを活かした演出
斜め視点見下ろし視点以外のマップなどの細やかな演出

空間を感じさせるライティング演出
イベントシーンでの風に揺れる樹木など細やかな演出面の強化

圧倒的なセリフ量とシナリオ量と密度
「真エンディング」や「隠し要素」の追加
思い出した範囲での改良点の列挙は以上です。
以後の文章ではあまり良くない点を指摘していきますが、それはこれだけの純粋な改善点を踏まえたうえでの追加の指摘だということはご承知おき願えればと存じます。
戦闘システムは革命を目指した。しかし――
レベル上げ論争
ドラクエ1&2の発売後、こんな話題がSNSやYahooニュースなんかを賑わせました。
お察しかもしれませんが、冒頭で述べた本作が賛否両論になりがちであるというのはこれに関連した話題です。
え?若い人ってRPGでレベル上げ作業することが嫌?
— ホリメロ(2代目)@YouTubeチャンネル【レトロゲーム好き・電光石火チャンネルD】 (@holymeroyoutube) November 3, 2025
新しい場所に進むと苦戦する敵と出会う。
体力ギリギリで町にたどり着き、武器屋へ行き、強い装備を買う。
すると、さっきまで苦労していた敵を少し楽に倒せるようになる。
そしてレベルを上げ、新たな呪文を覚える。
その『成長する喜び』… pic.twitter.com/1NG0tgQ9fO
そう、いわゆるレベル上げ論争というやつです。
このツイートや連なる話題では、「若い人という主語がデカすぎる」として別の意味でも議論を呼んでしまいましたが……しかし、このような議論が本作をプレイした人たちから湧き上がるのも致し方ないというような調整がされていたのが本作の戦闘システムへの総評だと言えます。
上記のような伝統的なドラクエシリーズ作品の戦闘バランスについての根源的な問いが論争として自然に生じてしまったのは、本作のバランス調整が革命を試みながら中途半端に終わっていることに起因しています。
中途半端とは書きましたが、本作ではドラクエ3側では改善されず放置されたままの問題点が様々にケアされ改善しています。
たとえばレベルアップ時に全回復するという仕様をオフにすることができたり、最低難易度の場合でも死なない設定(無敵化)だけオフにできたりと、大きく指摘のあった点に多数のテコ入れがされています。

(私は「めいれいさせろ」ばっか使ってたけど)
なお、これらの改善点は執筆時点でドラクエ3の方にはアプデ適用されていません。記事冒頭で向こうをわざわざ買わなくて良いとしたのには、そのような事情もあります。
……ですが、レベル上げは、こうした細かい改善点とは別の話ですよね。
つまり小手先の話ではなく、「このゲームは何を目指させるものなのか」という目的がプレイヤーごとにバラバラになってしまう……ゲーム側がハッキリとした指針を示す作りになっていなかったことにあると私は愚察しています。
レベル上げを推奨するゲームであるのか、あるいはレベルを求めないゲームであるのか……その態度をゲーム側が示しきらなかったため、プレイヤーが振り回されてしまった。それが、本作にまつわる賛否両論やレベル上げ議論を引き起こすキッカケになったのだと私は考えるのです。
「レベル上げは必要」派のみなさまへ
いや待て、ドラクエなんだからレベル上げは当然だろう……と仰りたいお気持ちはわかります。
しかし、本作が旧態のドラクエの戦闘バランスとは違うぞということも、同様にお気づきではないでしょうか。
私がドラクエ3記事を書くに至ったキッカケであるルカニやスカラの仕様変更は本作でも引き継がれていますし、特技の導入により「ただ殴る」だけではない戦闘も味わえたものかと思います。
また、防具による耐性の重要性もアクセサリー枠の追加などにより原作よりかなり強調されていたかと思います。
これらを総合すると、レベル上げ以外に戦闘を左右する要素が大幅に拡充した……と言えるのではないでしょうか。このことを踏まえつつ、以降の項をお読みいただければ幸いです。
「レベル上げは不要」派のみなさまへ
実は私もレベル上げはあんまやりたくない派です……というか、本作がそう感じさせる設計を一部取り入れてしまっているという事情がそれを加速させたと言うべきでしょう。

タネ類の使用もしませんでした。
この画像は私がドラクエ2をクリア(1回目のエンディング)したときのものです。おそらく他のプレイヤーさんの平均と比べるとレベルが圧倒的に低いはずです。
私の数少ない友人いわく「レベル47~48程度でいばらの道だぜは断念してクリアした」と言ってましたので……サンプル数が少ないんですが……

まぁともかく、本作はこれくらい試行錯誤で勝てる目があるバランスである……ということに気づいたので、歯ごたえのある戦闘を楽しみたいがためにレベルを低めに保ってクリアするという楽しみ方をしました。
この記事を書く予定もあったので検証のため……というのは建前で、ヒリつくような戦闘を楽しみたいという欲求が一番の動機でした。
ドラクエ2リメイク
— おりはぬと (@orihanut) November 24, 2025
アビスファングとかいうクソ強いボスにレベル41で挑んで30分近い激闘の末撃破
黒い霧凶悪過ぎるだろ
何度も全滅しかけたけど何とか立て直して初見クリア達成した瞬間奇声あげての脳汁ドバドバだった
ギリギリの選択肢繰り返すコマンドバトル捨てたもんじゃない
ドラクエ2面白い pic.twitter.com/kjfiKcUCrF
……概ねこの方と同じですね。
レベルをあげちゃうとこの楽しみ方ができなくなるという意味で、レベル上げは取り返しがつかない要素だという認識で私は進めていました。
……とはいえ、これでも途中で何回かメタル狩りをして意図的にレベル稼ぎはしています。
最低限のレベル確保は必要なゲームであるという事実は、本作の前提だ……という上で、以後の文章をお読みいただければと存じます。
意見が割れた理由
さあ、ここからが本題なわけですが。
本作を単刀直入に言うと、臨機応変にその場面ごとの戦闘を突破すればよいという解法と、レベルを上げてどんな敵にも対応できるようにするという解法のふたつのバランス調整軸が中途半端に混ざっていることが混乱を招いているのだ……と考えます。
勘のよい方はお気づきかもしれませんが、これは「現代的なバランス調整」のゲームと、「オールドスタイルな(原作準拠の)ドラクエのバランス」とがそれぞれに主張し合ってしまっているという状況を意味しています。
本作をドラクエとしてプレイしがちな若くない人(婉曲的表現)と、新たな作品としてプレイする若い人(大まかな表現)で、それぞれ取り組み方が違ってもクリアできてしまうし、それゆえに意見を募ると平行線になりがちである……というのが事の真相なのだというのが私の主張です。
これらの意見の相違はユーザーのプレイスタイルに依存しているため、よほどの理由がなければひとつのゲームのプレイ途中で宗旨変えをすることもない(わざわざ別の解法を試さない)ことでしょう……
……し、もちろん中にはそうでない人もいるでしょう。
私も最初は堅実にレベルを上げつつ進行している派でした。しかし、実は途中である仕様に気がついてしまったことで流れが変わりまして……
それは……「逃げる」
人はなぜ逃げるのか
ドラクエでは雑魚戦からは逃げられます。
逃げることを戦略的撤退であると嘯くこともありますが……
プレイヤーはどんなときに『逃げ』を選択するでしょうか?
前提として、ドラクエでは逃走成功判定は確率であり、連続して逃げに失敗することも多いです。
そして逃走に失敗したときは一方的に敵から殴られるターンが発生しますし、連続で逃走失敗すれば全滅のリスクは高まります。
また、逃走した場合は経験値やゴールドなど戦利品は何も得るものはなく、レベルアップも当然遅くなります。
そのうえで……
逃げることなんてない。見敵必殺、敵はすべて滅する。
負けそうになったときに一か八かで逃げることがある。
雑魚になどかまっていられない。道中は全逃げ。
3つのスタンスのうち、本作でもっとも効率が良くなると考えられる行動はどれになるでしょうか?
そう、答えは全逃げです。
なぜなら本作では、フロア切り替え時と戦闘の終了時に必ずオートセーブが入るため、全滅することに対するリスクがゼロになるからです。
強いて言えば、前の戦闘から全滅位置までの数十歩を歩き直すことだけ損失となるでしょうか。

……なぜ、逃げることが「効率がよい行動」になるのか?
普段「逃げ」を選択しないのでピンとこない……という方は、以下をお読みいただくと伝わるのではないかなと。
リソース管理ゲームとしてのRPG
ドラクエシリーズ、特にFC版あたりの初期作品群は、限られた資源で探索を行い何処まで進めるかというルールを基本に据えていました。
これはつまり、資源管理がゲームの核に据えられていたという意味になります。
ひとりが持てるアイテムの数は限られており、MP回復できる手段も限られている。そのような中でHPをゼロにしないように気を配りながら、所定の到達点を目指して未知の敵たちの攻撃をかいくぐって進軍する……という部分がゲーム性の本質でした。
初期ドラクエにおいては、戦闘とは資源をすり減らす試練です。
言ってみればダンジョンの道のりはボスの一部ですらあり、なるべく消耗を抑えて最奥までたどり着き、ボスと戦い、それを打ち倒し、さらには無事に最寄りの街や村まで帰って来るまでが冒険でした。
その最たるものがボスのいない洞窟という初期ドラクエに顕著だった仕掛けであり、これはダンジョンそのものがボスだという扱いなわけです。
というか、洞窟は入ったら出てこなければいけないという点で探索を強く意識させるエッセンスでもありました。

それがドラクエから派生したのは、今思えば必然だったのかも。
こういうリソース管理ゲームとしてのドラクエでは、全滅は大きく資源を損なう(手持ちゴールドが半分になる&蘇生費用出費)ために絶対に回避したい事象でした。
仮に全滅してしまえば死んじゃうと悔しいというモチベーションが生まれ、なるべく死なない立ち回りや死んでもリカバリーできる計画性なんかが養われる……という仕掛けでした。
(その前提として、失敗しても再チャレンジできるという救済策でもあるわけですね)
この場合、「逃げる」という行動は運が良ければリソース消費なしに切り抜けられるけれど、失敗すればリソースを大量消費、下手すれば一発で全滅してパーになるかもしれないという形で、究極の運否天賦を与えるのが「逃げる」コマンドの立ち位置だったわけです。
ボス討伐ゲームとしてのRPG
一方で、こうした文脈にはあまり沿わないRPGも多くあります。
有名どころだとFFシリーズ(特に4以降)……所持できるアイテム数にはほぼ限りがなく、またMPリソースを回復できる施設がダンジョン内に用意されているのも通例です。
このリソース管理施設のことを、一般的にセーブポイントと呼んだりなんかしますね。この手のゲームにおいては、リソース管理の要素は薄めです。

同作には偽セーブポイントだとか自分で置けるセーブポイントだとか妙にネタが多い。
ならばこの手のゲームにおいての戦闘とは、負ければそこで終わりという障害としての性質が強いものになります。
その最たるものがボス戦であり、逆に言えばボス戦に全力で挑んで自らの今の実力を発揮するというのが、こうした思想でのゲーム性の核となっています。だからセーブポイントを設置する必要があったんですね。
実際、FFシリーズの多くの作品では負ければゲームオーバーになることも、この説を補強しています。
そしてこの観点だと、逃げるという行為には特に大きなリスクがないことになります。
ATBを採用した作品に顕著ですが、逃げるコマンドが通常のコマンドと分離していて一方的に殴られなかったり、必ず逃げられる「とんずら」があったりというのもその理由ですし、どのみち逃げ切りさえすれば大量に持ち込める資源で回復できますし、ボロボロでもセーブポイントまでたどり着きさえすればいいのです。
強いて言えば経験値を得られないということがリスクなのですが、セーブポイント周辺でリソースを気にせずに狩りができたりするので、ドラクエで切実ななるべく無駄な消費を抑えたいという欲求とは別の働きが起こります。
では、今作は?
上記で挙げたようなリソース管理ゲームとしての楽しみ方と、ボス討伐ゲームとしての楽しみ方。
これらのゲーム設計についてのスタンスは、それぞれ「どちらが正しい」と言うものではありませんよね。ゲーム側が「そういう設計のゲームです」と示していれば、それはそれがそのゲームについての正解ということになります。うまいこと両者のバランスを取っているゲームも多いです。
では、本作はどちらの楽しみ方のために設計されたゲームなのでしょうか?
ポイントは『逃げる』ことがリスクを伴う行為であるかどうかです。
先述の通り、本作ではフロア移動や前の戦闘の終了時にオートセーブが入り、全滅することに対するリスクが実質ゼロになっています。
またボス戦が原作よりも増やされている上に、そのボス戦がかなりの難関になっていて、ボスを討伐したあとに一度回復して戻って来るという選択肢を取ることも難しくなくなっています。
(※何処からでもキメラのつばさをつかって帰還でき、またすぐ同じ場所にルーラしてこられるという意味)
一方で、本作が旧態のドラクエとしてのゲームバランスから完全に脱却しているわけではありません。
むしろ、同様のセーブシステムを持ちながらスキルリセットなどの育成の幅によりゲーム的な自由度を増してバランスを取っているドラクエ11sなどに比べて、FC版のシステムを基盤に置いている本作ではゲームのバランス的な自由度はだいぶ狭くなっています。
よって、逃げるまたは撤退するという選択肢がアタマにあるかどうかで、ゲーム性はほぼ真逆になります。
ゲームのバランス的な自由度が低いというのは、極論を言えばレベルを上げて殴るしかなくなるという意味と同じだからです。
そしてこれは必然的に……逃げまくったほうがレベル上げは苦痛になり、あんまり逃げないほうがレベル上げは気楽に終わります。そりゃあ得た経験値が違うんですから、当然そうなりますよね……
ここで余談。
本作にセーブポイントはありませんが、ボス前で「くちぶえ」を吹くなどの手段でエンカウントを行い、その場で逃げ出すことで簡易セーブポイントが完成します。
ボス戦で敗北したときの即時再戦だと装備などをやり直せませんが、この手段だと事前準備も含めて出直しせずにやり直しが可能です。
またこれだと『本物』のセーブポイントと違いリソース回復の手段としては使えない……のですが、いのりの指輪が壊れたらリセットという禁断の果実に手が出しやすくなるという意味ではリソース管理の意味がだいぶ薄れますが……
本当に「逃げる」と効率は良いのか?
私は先ほど逃げたほうが効率がいいと書きました。仕様上「逃げる」ことにリスクがないのはわかるとして、なぜ逃げると効率が良くなると判断したのでしょうか?
理由1つめ。
本作には探索によって強くなる要素が非常に多くあるから。
大前提として、敵を倒して得られる経験値がいつでも一緒なのだとしたら、強くなってから敵を倒して経験値を得たほうが安全だし効率的だという考え方があります。
というか、強くなってレベル上げが必要なくなるなら、そのほうが私みたいに低レベルを維持したい場合にも有効です。
ドラクエでは船を入手したら各地を行脚してアイテムを集めるのが恒例行事なわけですが、本作ではその要素がかなり強化されています。
そのおおめだま要素として「巻物」があります。レベルに依存せずに呪文や特技を覚えられるという巻物はこの条件にピッタリですね。
もちろん、従来作と同様に武器や防具の更新も可能ですし、ゴールドがなくても拾えるものがかなりあります。
この探索によるレベル上げ否定について、ひいては本作がレベル上げを脱却したレベルデザインになっているということについては、上記のIGN Japan 福山氏のレビューでも詳述されています。
(ただし、私の記事のスタンスは「そのレベルデザインは完成していない」というものなので、主張には差異があります)
理由2つめ。
本作には稼ぎ場所がある一方、通常の雑魚敵は美味しくないから。
人はなぜメタル狩りをするのか。メタル系のモンスターの経験値が美味しいから……というのは、メタル系以外の経験値が美味しくないからという話と表裏です。
逃げまくりつつ各所のアイテム類を集め、レベル上げは効率の良い場所で行えばいい。すなわちメタル系の出現する場所で……
同様の理由で、本作ではゴールド稼ぎにおあつらえ向きの場所も存在します。この場所では終盤レベルのかなり強い敵も混ざって登場するのですが、全滅にペナルティがないことはこんなところでもプラスに働きます。
倒せる敵だけ倒せばいいし、逃げ損なって全滅しても大した被害はないのです。
理由3つめ。
工夫と試行回数で低レベルでも倒せるように本作のボスが設計されているから。
全滅してもオートセーブで復帰できる本作ですが、先述のようにボス戦についてはその場で再戦を挑むことができます。
(また、先述の余談のように簡易セーブポイントでも復帰が可能です)
これ自体はドラクエ11sなどでも採用され、ちょっとした操作ミスや運の悪さによる理不尽死をノーカンにできるのでプレイヤーにとっては掛け値なしにありがたい仕組みです。

本作ではサマルトリア妹に『遊び人要素』があるわけですが。
ついうっかりアサシンダガーなどを装備していると……

という本作屈指の理不尽死が訪れたり。
(※成長とともに遊びの確率は下がります)
……一方、本作の特徴として、戦闘中の被ダメで物理攻撃が大きな比重を占めているという特徴があります。これは痛恨を含んでの話です。
物理攻撃にはミスがあるうえに、多くの場合は単体対象で誰を狙うかにより被害度が違うため、その場で再戦すると運次第で勝てるという傾向が大きくあります。
この話題を出すと、それを最大限に実践して運任せの暴力をやらかしたドラクエ1の某ボスの顔が浮かぶ人も多いのではないでしょうか。

はかいのつるぎを持ってる上にまじん斬りを仕掛けてくるので……
本作の「ぼうぎょ」や「だいぼうぎょ」をしても痛恨が貫通してくるという謎の仕様変更のおかげで、彼はまぁ極端な例としても……攻撃を耐えるより回避をお祈りして何回かの試行回数でほぼ無傷で勝てるという「正解」を引くというスタイルも選択肢に入ってきます。
このように、物理偏重なバランスは物理攻撃さえシャットアウトすればどうとでもなるということであり、実際それで完封できてしまう相手がかなりいます。
また、防具の耐性をしっかりと整えればダメージを大幅に減らせるという相手もかなりいます。それに合わせて耐性持ちの防具の数も増えましたし、ドラクエ1についてはDay1パッチで炎のイヤリングと氷のイヤリングが追加されるという動きもありました。
※Day1パッチというのは発売初日に配信されるアップデートのことで、ダウンロード版では最初から適用済み、パッケージ版ではインターネットにアクセスすると適用されるというものです。
参考:https://www.4gamer.net/games/999/G999905/20181227045/
これらのバランス調整は、試行錯誤によって(敵に合わせて戦術を最適化することで)、想定レベルより大幅に低くても案外なんとかなるものを目指していると言えるでしょう。
特にドラクエ1のラスボスに関するある仕様(伏せておきます)を考えると、これは偶然ということもないはずです。つまりそういう設計になっていると考えるのが自然というもので、ゲーム側の態度がそうなっているのです。
私のように半ば縛りプレイをやってる……というのは極端な例ですが、そうでなくとも普段はレベル上げをせずに要所で最低限を稼げばよいという結論になる可能性があるわけです。
「レベルが必要」と「レベル上げが必要」
……と、ここまで書くと攻略にレベルは不要だと思われてしまうかもしれませんが、そんなことはありません。
ドラクエでは基本的に主要な呪文はレベルで覚えるしかないからです。FFでは買ったりして覚えることも多い魔法ですが、ドラクエではそうは行きません。
ただし注意すべきは、レベルが必要だということと、レベル上げが必要だというのとはイコールではありません。
言葉の使い方だとも言えますが……「レベル上げ」を「稼ぎ行為」として、通常の進行と別に行う行為だと仮定すると、例の「レベル上げは必要か」という議論は「稼ぎ行為が必要か」という意味になり、少し違った様相を見せます。
つまり最初の問いは「レベル上げという稼ぎ行為を進んで行いたいか」という問いになりますね。その答えは「人による」とか「内容による」としか言えないものになるでしょう。
有意義かつやっていて楽しいという稼ぎ行為なら問題ありませんが、あまりに無為な時間、無駄な時間を過ごさざるを得ないようなものは、ちょっと……
ボールペン工場でひたすらボールペンとキャップを組み立て続けるだけのような作業を心から楽しいと感じる人も中にはいるのでしょうけれど、基本的にはそれは苦行と呼ばれるものに分類されると思います。

画像はねとらぼ「どうかしているゲームの世界:薪割り、心霊写真、ボールペン工場…… 電気グルーヴが手掛けたまぎれもない怪作「グルーヴ地獄V」を語ろう」より引用
https://nlab.itmedia.co.jp/cont/articles/3300130/
はぐれメタルに頼りすぎ?
その点で、本作をはじめドラクエシリーズのレベル上げの定番であるメタル狩りですが……その本質はギャンブルです。
特に、メタル狩りに有用なスキルや道具を手に入れたり、所定以上の素早さを得るまでは、ひたすら逃げないことを願うお祈りタイムになります。
以前の記事でも書いた記憶がありますが、服を買いに行くための服がないという状態が起こりやすいわけですね。
さて、本作のうちドラクエ2では、HD-2D版ドラクエ3のようにスライム島は登場するものの、そこでのはぐれメタルの登場頻度が非常に低くなっています。一方、はぐれメタルが出現しやすいのは終盤またはクリア後のダンジョンとなっていて、そちらでは強さが足りないと稼ぐどころではありません。
これが何を引き起こすかというと……メタルスライムでは経験値がもの足りないがはぐれメタルの出現域では勝てないというレベル帯のとき、服を買いに行くための服がない状態を生じさせます。
つまり、このレベル帯のときにMOD使ってでもいいからはぐれメタル逃げないようになんねぇかなぁという思いが最も強くなるのではないかと推測できます。
なぜこうなってしまったのか。
レベル上げにテコ入れできるスライム島は早めに登場させてあげたいが、そこではぐれ狩りをされすぎてレベルが上がりすぎてしまうとバランス調整が狂ってしまう。
そこではぐれメタルの出現率を下げることで、レベル上げが必要以上に捗りすぎないように抑制した……こういうことなのでしょう。
しかし、眼の前に吊るされた人参に追いつけない状況に置かれたプレイヤーに残るのはフラストレーションです。特にまったく出現しないわけではないが出現率が極めて低い上に逃げガチャを強いられるのはかなり苦痛です。
こうした事態の根本的な理由として……大幅なテコ入れによりゲームの規模が大きくなり、レベル99まで上げる選択肢すらあるようになったゲームであるのにもかかわらず、幅広いレベル帯の経験値稼ぎ担当モンスターをメタルスライムとはぐれメタルの2種類だけに背負わせてしまったという構造的な欠陥にあると私は考えます。
……たとえばですが……
本作、メタルブラザーズが出演しても問題なかったのではないでしょうか。ドラクエ9と同様、メタルスライム→メタルブラザーズ→はぐれメタルという経験値請負人のステップアップがあったなら、レベル上げに対する悲喜交交は軽減されていたりしたのではないでしょうか。
メタルスライムよりは強いけど、はぐれメタルよりは弱い。経験値もそこそこだけど、メタルスライムよりは儲かる……という。

または、せっかく追加されているメタルハンドをドラクエ11仕様にしてクリア後担当にしてもよかったのではないだろうか、など……メタルキングを出すと天空シリーズとの整合性がややこしくなる、として避けるのだとしても、他にこれくらいの代案は出せます。
作品の稼ぎバランスに文句を言うのは筋違いだとおっしゃられる方も多いかなとも思うのですが、やはり本作「そこさえあれば」というような導線が奇妙にぶつ切りにされているように思えてしまうのです。
それは本作の悪い意味での特徴のひとつだと思います。これが良い点とセットになってしまっているために、この手のレビューがイマイチ評価をしているように見える原因だと思うのです。
あえて苦言を
勘違いのないように再三再四と申し上げますが、HD-2Dドラクエ3にはここまで作品を改善しようとする意思はなく、だからこそ、これらの点がHD-2Dドラクエ3の時点では顕著に問題になっていなかったのだ……ということにはご留意ください。
ドラクエ1&2に問題点が多くなるように見えているのも、言わば「高尚な悩み」であって、ドラクエ3が抱えていた問題点とは次元が違います。
「殺人も放火もした泥棒だが、ただの一度蜘蛛を踏み殺そうとしたのを止めた犍陀多」というのを美談というのか。
「勤続35年無遅刻無欠勤だったが午後の会議を欠席して2~3時間ほど外出する、と社長に告げる会社員」を怠惰というのか。
このレビューではそのようなことを問うており、いわば「なぜ会社員がそこまでして外出をしなければならなかったのかマウント斗羽とアントニオ猪狩の対決にどれほど意味があったのか」を「レビュー」する記事なのです。
この文章ではあえて良い部分「勤続35年無遅刻無欠勤の会社員がどのような生活を送っているのか」にフォーカスしている記事ではないという点には、重ねてご留意ください。
(そこは需要があればまた書きます)
令和に攻略本の意義を問うゲーム
え、スクルト……?
ここからは少し別角度から「導線が奇妙にぶつ切りにされている」例を見てみます。
さきほどしれっとスクルトが最重要呪文であると書きました。このことに、こいつ頭がお詳しいぜ!と思われた方もいるかもしれません。
皆さん、本作のスクルトの仕様、どれくらい理解されてますか?
まず、本作ではスカラやスクルト(ルカニやルカナン)を重ね掛けできます。敵からの物理ダメージを痛恨の一撃も含めて割合で軽減可能になり、またその軽減率も重ね掛けをすることで劇的に増加します。
その減少割合はドラクエ3RTA勢によると……
割合は1~6段階で最終ダメージに0.75倍/0.65倍/0.55倍/0.40倍/0.30倍/0.20倍
https://susuru.hatenablog.jp/entry/2025/06/20/185141
なんと0.20倍=1/5までダメージを下げられます。40ダメージが8ダメージ、200ダメージが40ダメージ、500ダメージでも100ダメージへと軽減できます。
本作のローレシア王子はレベル40前後でも最大HPが400はありますし、ベホマはHPを無条件に全快する呪文ですので、物理攻撃だけなら標準状態の2000ダメージ分を食らっても1ターンで立て直せます。
さらにローレシア王子はにおうだちを覚えるため、一人ですべてを背負うことも可能です。物理攻撃しか行わない相手なら、先攻スカラ重ね掛けさえ決まればほぼ封殺できます。

……ですが、この仕様。軽減率がゲーム内で言及されないのもさることながら、6段階まで重ね掛けが可能だということも普通にプレイしていたら気づかないことでしょう。
スクルトの重ね掛け状態は、スカラが味方一人を2段階上昇、スクルトで味方全員を1段階上昇させる仕組みになっていますが、この上昇段階についても気づきにくいです。
なぜなら説明がないですし、相変わらずスカラの説明は「しゅび力を上げる」としか書いていないですし、本作の補助呪文の効果時間が一定ではないことと、重ね掛け段階が大まかにしかわからないことにより、スクルト類の挙動を非常にわかりにくくしているからです。

せめて「ぶつりぼうぎょ」とか書いてくれてもよいのでは
ここでスクルト類の挙動を見てみましょう。
ややこしいのでアタマが痛くなる人は読み飛ばしてください。
ここでは説明のために、スカラの効果時間は3ターンで固定(注:実際には4ターン程度のことが多いようです)、そしてドラクエ2での挙動を考えることとします。理論はドラクエ1でも同じです。
まず1ターン目。先頭に立っているローレシアの王子(脳筋)に、後方からサマルトリアの王子(兄)、王女(妹)がそれぞれスカラをかけたとします。
このとき、1ターン目の終了時にローレシアは4段階スカラの状態になっています。

2ターン目には同様にサマル妹がスカラをかければ、2ターン目終了時にはローレシア王子は最大値の6段階スカラの状態になっていることになりますよね。

ここから、サマル妹にはスカラをかけ続ける機械になってもらいましょう。
スクルトの仕様がなんか難しいですが、毎ターンかけ続ければきっと最大値を維持できるはずです。
……そう思って3ターン目と4ターンめにもスカラを連発しますが……

3ターン目と4ターン目のスカラは「ローレシアの王子の しゅび力は これ以上 あがらない!」となってミスになります。
まぁでも、ミスといっても毎ターンかけ続けているし……

と思っていたら、4ターン目の終了時(5ターン目のコマンドを選択するとき)にはスカラは2段階までガクンと下がり、さらに次ターンに効果切れになるというアラート(防御アイコンの点滅)まで始まってしまいました。
とりあえず仕方がないので、スカラをもう一度かけてみましょう。


ターン中に一瞬だけ4段階まで上がったように見える(※それを画面から推測する手段はないです)ものの……ターン終了後にはスカラは2段階=スカラを一回かけただけの状態まで戻ってしまいました。
毎ターンスカラをかけ続ければ維持できるだろう、というのは旧来のドラクエ作品をプレイしていればしているほど陥りがちな罠です。
……というか、一般的なRPGにおけるバフの直感とは異なる挙動に見えると正直思います。

こうした挙動は、スクルト類がHD-2D版ドラクエ3以後に次のような仕様へと変更されたことが理由です。
スクルト類は呪文の発動単位で効果時間が管理されている
1度かけたスカラ/スクルトは効果切れまで更新されない
この仕組みを意識したうえで先ほどの挙動を見ると……

内部的には、このように兄と妹がかけたスカラが別管理されています。
見た目でスクルト4段階目に見えるのは、ふたつのスカラの合算だということですね。
まぁ、ここまでは良いとして……

2ターン目でスカラをかけたとき、内部的にはこのように3つのスカラが共存した状態になっています。そして、1ターン目のスカラは効果時間のターン数が消費されます。そして……

3ターン目と4ターン目のスカラは、すでに最大値の6段階に達しているためにミスになります。このとき、既存のスクルトが更新されることはありません。
ですが、4ターン目のターン中まではスクルトは最大値を維持しているわけです。4ターン目のターン終了時に効果時間が消費されることにより……

……こうなりますよね。残り効果時間がゼロになったスカラは失効し、あと1ターンで切れるスカラだけが残ります。このスカラは2ターンめにかけたスカラです。

……となれば、5ターンめにはこのように、新たなスカラをひとつ追加しても、古いスカラは消費されることになるので……

これが本作のスカラにおける、なんだかしっくり来ない感のある挙動のカラクリです。
ただし、実際にはもう少し複雑になっており……本作ではスカラなど大半の補助呪文の効果ターン数が一定ではなく、発動ごとに毎回ブレる仕様になっています。
全員が無敵を得ることができる妖精の守りでさえ、1ターンで効果切れになるか2ターン保ってくれるかはわかりません。
なんだ、効果時間が伸びてくれるならいいことじゃん……というべきかもしれないのですが、ことスクルト類においては内部管理されている各スクルトの効果時間がわからなくなる上に、それを外部から知る由もないという意味で戦闘を必要以上にハラハラさせる不確定要素になっています。
『混乱は加速』する
本作のスカラのこうした挙動は、もちろんゲーム内に説明はありません。まぁ細かい部分は仕方ないというか、一般のゲームでもいちいちバリアの仕様を細かく説明しているものはありません(たぶんスパロボとかのシミュレーションゲームくらい)。
……いや、しれっとバリアと書きましたが、こうした効果は一般的に防御力の上昇ではなくバリアと呼ぶべき効果かな、と。
……とはいえ、本作のこれはさすがにちょっと不親切だと私は感じます。
同じく防御系呪文に分類されるフバーハやマジックバリアは一度掛けでよいし、重ねがけは自動的に効果時間の延長になってくれます。それに対して、スカラやスクルトはフバーハなどと同じ割合軽減の効果でありつつも重ねがけがまったく異なる挙動になり、また効果時間は延長されません。

「フバーハやバイキルトは重ねがけで効果が大きくならない」ともわからない。
(いちおうエフェクトの種類や右上のアイコンでスクルト状態だと判別はできるものの)
また、上記のスカラ類の挙動は言ってみれば基本編であり、応用編となる様々な発展仕様があることも理解をややこしくしています。
ひとつめはようせいの剣。
ドラクエ1,ドラクエ2ともに登場する武器で、道具として使用することで防御力を上昇させる効果があります。ドラクエ1においては唯一の防御バフを可能とする手段でもあります。
ナンバリング順にプレイしたなら、最初に手にする防御バフ手段ということですね。

なるほど、道具使用することでスカラやスクルトが発動するんだな――と思った方は残念ながら誤りです。これは味方一人に対してスクルト状態を1段階上げる効果になっているようなので……言ってみれば単体版スクルトを発動する道具になっています。
過去作であるドラクエ5やドラクエ7にようせいのけんとして登場したときにはスカラの発動効果であったため、例によって過去作をやっている人ほど引っかかりやすいポイントになっています。
というか、ドラクエでは道具使用すると呪文と同効果が発動するというアイテムが多くなっており、呪文と同効果ではない効果が発動するアイテムのほうがレア……だと記憶していました(あくまで私の認識として)。
◆同効果の例
くさなぎの剣 「ルカナン」効果
まどうしのつえ 「メラ」効果(3,7,8,9,10,11,HD-2D)
いかずちのつえ(いかづちのつえ) 「バギ」効果(2)または「ベギラマ」効果(2,9以外の大半)
けんじゃのいし 「ベホマラー」効果
◆異効果の例:
たたかいのドラム 全体版バイキルト(5およびHD-2Dシリーズ)または全体版バイシオン(11)
◆微妙な例:
まどうしのつえ 「※ギラ」効果(FC版2。ギラはギラでも敵仕様のギラが発動する仕様。またメラの登場は3から)
いかずちのつえ(いかづちのつえ) 敵グループに雷・爆発系ダメージ(9。ギラ系が欠席したので「ベギラマ」ではないものの、おそらく開発段階ではベギラマ扱い)
…………
しかし、きちんと調べるとドラクエ4でのほのおのつめ(単体版ベギラマ。HD-2Dではメラミ)や、FC版2でのひかりのつるぎ(全体版マヌーサ)などの事例もあるため、私の思い違いだったかもしれません……
なお本作HD-2D版2でのひかりのつるぎは通常の「マヌーサ」効果になっています。なんでや!(※敵の出現数が増えたので調整として妥当だからでしょうか)。
なお、補助呪文の重ねがけについてはドラクエ1でもほぼ同様の説明が表示されます。
ドラクエ1→2という順でプレイしたプレイヤーはこちらを先に目にすることになりますね。私もそうでした。
ただし、この説明を見てスクルトの補助効果が重なるとエフェクトが派手になる……ということに気付けるかどうかは試される要素かもしれません。

でも、ようせいの剣入手時に表示されるので、スクルト系なら行けそうという推測は可能。
いちおう、私はこの説明画像から「そうかな……?」と気付いた派でした。
しかし、実際にその仕様だと確信できるようになるのはドラクエ2に入ってからです。重ね掛けをしてもスクルト一段階と二段階ではエフェクトは変わらないので、ようせいの剣を2ターン続けて使用したくらいでは変化に気づけないからです。
きちんと被ダメは減っているのですが……重ねがけには効果がないのだろうかという勘違いと諦めをここで生じやすくなっているのです。
なお重ねがけによるエフェクトの派手さは3段階しかなく、スクルト1段階と2段階、3段階と4段階、5段階と6段階、これらは同じ輝きの強さになります。
単体版スクルトであるようせいの剣を2回使っても、2段階強化でしかないので輝きの強さは1段階目と変わりません。
さらに、バフを盛っている間にダメージを受けて回復を行おう……と1ターンか2ターンを無駄にすると、その間にバフが1段階切れます。
そこからようせいの剣をさらに使用しても3段階には到達しないので……エフェクトの輝きで重ねがけがわかる⇔輝きが変わらないなら重ねがけはできていないのかな?とドラクエ1時点では勘違いしがちなわけですね。
せめてエフェクトが1段階ずつで変化する、あるいは段階を盾アイコンの中に数字で表示するとか、スクルトの数だけ盾アイコンを並べて表示するくらいの仕様があれば……
ここでも「導線がぶつ切りになる」という残念な仕様が表出しています。
『混乱』は『加速』するッ!
また、ドラクエ2だけに登場する、とあるアイテムもスクルトの仕様についての理解を深めてくれます。ふくびきじょで手に入るきんのブレスレットです。

過去作ではその売価と効果から金メッキなのではとかおうごんのうでわを見習えと言われていた腕輪が本作では大化け。ふくびきじょで手に入れるべきアイテム第一位とでもいうべき効果を手に入れました……が。うまく活用するには工夫が要るという、本作を象徴するような装備になってしまっています。
私の低レベルクリアはこの装備なくしては成立しませんでしたが、この装備にまつわる挙動の謎の解明のおかげで一時期攻略が停滞したという罪作りなアクセサリーでもあります。
その効果は、「守備力アップ系の呪文特技の上昇効果を強化する」というもの。装備者が一段階防御アップを与えられたとき、それが二段階防御アップへと化けます。
つまり簡単に言えば、全員コレを装備することでスクルトが全体スカラに化けます。こう聞くと、非常に効果の高い装備で幸せしかないように聞こえるのですが……問題は、パーティにきんのブレスレットを装備しているメンバーとそうでないメンバーが混在している場合に起こり得ます。
先ほどのスカラの挙動の説明を思い出していただきたいのですが……スクルトがスカラになるということは、スクルトを連打するときんのブレスレットを装備したメンバーだけがいち早くMAXである6段階強化状態へと到達するということです。
そして他メンバーはまだ3段階強化にしかなってないし、とスクルトを追加しようとすると……装備者のスクルトだけがミスになります。
ということは、パーティ内でスクルトの切れるタイミングの周期が混在することになり、結果的に全員にスクルトを行き渡らせるのが非常に面倒な状態になります。
矢面に立つローレシア王子にだけ装備させておこうとすると、かえって彼が無防備になるタイミングが増えてしまいかねないという、運用を間違うと罠装備になりうる可能性を秘めています。
最大限に活用するには、におうだち作戦のように一人にしかスカラを使わない、または全員にコレを装備して誰も倒れないようにしながらスクルトを使う必要が出てきます。
(※きんのブレスレットとは無関係に誰かが倒れてスクルトが解けることでも周期ズレは発生するので)
そうでない場合、何故かきんのブレスレットの装備者のほうが早くスクルトが切れるという不思議な現象を目の当たりにする可能性があります。
……そう、私のスカラ/スクルトに対する知見はこの挙動をじっくり解明する過程で得られたものだったのです……
命の紋章
本作では原作ドラクエ2にあった紋章を集めるという要素が深堀りされ、ストーリー的にもゲームシステム的にも深い意義が与えられています。
特に命の紋章。
キャラHPが50%を切ったときまたは特定の強化状態にあるとき、既存の呪文や特技の一部が超絶技に変化して非常に強い行動へと変化するというものです。

先ほど言及した、味方全員に無敵化バフをかける妖精の守りもそのひとつですね。発動方法は、コマンド選択時にYボタン長押し、またはキャラが行動を行うときに割り込みでYボタン長押しです。妖精の守りなら「におうだち」がYボタン長押しで変化します。

(※本プレイでは「弱点を表示」オプションをオンにしています)


消費MPもメラ(2)→メラストーム(18)と増加しており「別のもの」という扱い
この仕組みは、少年漫画的な「ピンチのときに底力が発動する」というケレン味をゲーム的にうまく落とし込んだ仕組みでもあり、またドラクエ特有の行動選択後はメッセージを見ているだけという仕様に切り込んだ、戦闘システムの革命を目指す意味でも非常に秀逸なアイデアであると私は思いました。
……が、それが十全に発揮されただろうか……と考えると、何故か存在する枷がイマイチすっきり感を与えてくれません。
ともかく説明が少ないというスカラと同様の問題が、その良さを殺してしまっている思うのです。

超絶技がどのような条件下で発動し、どのような効果であるかを当初から知ることができないというのは、自らの秘められた力を偶然知るという、まさに少年漫画的な王道展開の追体験として(やや不親切ながら)理解のできるところなのですが……
ゲームを進行しても、戦闘中に詳しい効果や消費MPが表示されてくれないという問題が、せっかくの超絶技の活用を阻害していると思うのです。

いちおう最終的にはゲーム中のヘルプページに表示はされますが、戦闘中にヘルプページは開けません。なので自分で撮ったスクショを見返すか……まぁそれをやるくらいなら手元のスマホで攻略サイトを見るでしょうね。
なぜなら、特に消費MPがわからないのが致命的だからです。
本作の仕様では、発動条件を満たしてY長押しでコマンドは受理されても、変化後の超絶技がMPが足りない!で不発になることがあります。また、不発の際も変化前の技へフォールバックすることはありません。

……本作はネタバレについて珍しいほどに気を配っており、箝口令が引かれたかのように各所でそれが伏せられています。
実際にプレイを終えてこの文章を書いている私もそれに準じているように、この作品にはネタバレを伏せる価値があると思う作品なのは間違いないでしょう。
しかし、だからこそ攻略サイトや攻略本を見ないとプレイに不自由さを感じるという仕組みになっているのはどうなのだろうかと思う部分は大きいです。
Yahooニュースにも掲載されたこのレビュー記事の通り、超絶技もまた駆使することでドラクエの戦闘に新しい爽快感や一発逆転の妙味を加える素晴らしい仕組みです。
しかし、それを万全に活かすためにはゲーム内情報が少なく、それを補うために攻略サイトや攻略本を読む必要性が出てきます。
特に、このレビュー記事を読んで「へー気になる」くらいのモチベーションで始めた人に「ゲーム内に説明があるから安心してね」と言えないのも本作の口コミ評価の根幹に関わる問題点です。
超絶技の発見について、試行錯誤による発見という面白さは肯定すべきものでしょう。しかし、その発見難度の高さは自力発見を諦めるという選択肢を与えます。
一方で、それについて攻略サイトなどを見るなというのは考え方ですし、その手のサイトを見てネタバレを踏み抜くというのを自己責任だと突き放すのも考え方の一つです。
しかし、試行錯誤によって自ら発見した超絶技について、プレイヤーがメモを取らないといけないというのは、仕組みを用意したゲーム側として「不便の押し付け」というものではないでしょうか。
たとえば、Yボタン長押しでコマンドウインドウが超絶技表示に切り替わって、そこで発見済みの超絶技の説明文と消費MPが見られる仕様にすることがそれほど難しかったのだろうか、そうしなかったことにどのような設計哲学があったのか……ということが気になって仕方がないのです。
こと、ハードウェアの進化によって可能になったリメイク作品という立場を取るならば一層のこととして……

Switchは携帯モードですら横1280x縦720ピクセルで1677万色。うーん性能差。
画像は GAME Watch「あの興奮の日々から36年。「ドラゴンクエストII 悪霊の神々」の思い出を実機の画像とともに振り返る」より引用
https://game.watch.impress.co.jp/docs/kikaku/1472892.html
発見済みだけ表示するなんてのは実績システムと同じなわけで、現代のゲームハードの性能をもってすればファミコン時代のように説明書を別途参照するような手段を取らなくてもそれは可能なはずです。
基本仕様に関わる必要な情報を外部に探しに行かなければならないというのは、令和のゲーム基準として不親切すぎないだろうか。
また、本作の攻略情報を外部に頼らざるを得ないというのは、それだけネタバレを踏みやすくなるということでもありますので……
さらに巻物をドーン!
そうそう、ファミコンといえば。
ファミコン時代に比べれば、令和の現代はエンタメだけとってみても飽和気味で忙しいというほどの選択肢が与えられていますなんなら任天堂のゲームだけですら遊びきれてないし。
そのため、現代人のプレイヤーはファミコン時代以上にイベントの取り逃しを恐れます。攻略サイトで取り返しのつかない要素を最初に確認しないと落ち着かないという方も多いでしょう。
本作では、そうした問題は比較的少なめです……が、ストーリー面で大きなものが一つ(私は取り逃しました)。
そしてシステム面でも、よりによって肝心な部分で取り返しのつかない要素が発生してしまいました。
これは巻物と命の紋章の悪い意味での合わせ技一本です。
勘違いされないようにまずご説明しますが……
巻物という仕組み自体、私は高く評価しています。ただしそれは、ドラクエ1において……の話です。
ドラクエで巻物というとトルネコの大冒険での巻物など、使い捨ての魔法発動器具を思い出す方も多いかと思います。しかし本作では、ドラクエ5に登場した「盗賊のカギの技法」と同じように読むことで呪文や特技を習得できる使い捨て式の特殊な書物という役回りです。

ドラクエ5にもあった通り、この仕組み自体は単純な話です。しかし、これをドラクエ1では設定的な背景を与えることで意義深いツールへと昇華しています。
探索の利便性のためにはぜひ勇者に覚えてほしいが、しかし設定や雰囲気的に勇者が覚えてしまうと台無しであろう「とうぞくのはな」であったり、ドラクエ1の原作には登場せずロトシリーズでは魔法使い系の使う呪文に位置づけられる「ヒャド」など、覚えてはいけないスキルを覚えさせるツールとして、巻物がこうした課題の解決を担っていたからです。
さらに、これらの巻物に「ロトの勇者の仲間(パーティメンバー)たちから現代の勇者へ向けた手向けである」という背景を与えることで、ロト三部作としての整合性を再整理しつつ、物語に深みを与えています。
特にドラクエ3をプレイしたプレイヤーなら、過去の自分の行動(パーティ編成や転職遍歴)が肯定されるような気持ちを持ってこれを受け取れる……というのもエモみを深める粋な演出になります。
このように、複数の課題を一気に、かつ物語やプレイヤーの心情に寄り添うように昇華したこの仕組みを、私は高く評価しています……ドラクエ1においては。
……残念ながら、ドラクエ2ではちょっと事情が変わります。
ドラクエ2の巻物には特に設定的に深い理由が感じられないということがひとつ。
ドラクエ2がパーティ制になったことにより巻物を読める人物が選べるようになったことに付随して、習得者が限られる上に、なぜその人物だけに習得が限られるのかというプレイヤーに寄り添わないゲーム側の理由が特に一部の巻物で生じるという問題も発生するからです。

キャラクターによっては習得できないものがあるという趣旨の文言が追加されている。
さらに巻物を読めるキャラクターが選べるということは、逆に言うと選ばれなかった方は覚えられないことになります。
基本的に巻物は1でも2でも有限個しか手に入りませんし、2では覚えられる人数より少ない数しか手に入らない巻物も存在します。
そう、取り返しのつかない要素になってしまっているのです。
そしてこの問題を深刻化させるのが、例の合わせ技……命の紋章による超絶技への変化という仕様です。巻物で覚えられる呪文や特技の中にも超絶技に変化するものがあるのです。
そして……同じ呪文や特技でも覚えさせる人物によって違う超絶技になったり、一方のキャラでは超絶技にできるのに他方ではできないというような格差があります。


一本しかない「いなずまの巻物」をどちらに使うべきか……?
それがせめて、「超絶技にならないけど有用ではある」という択ならば救いようはあるのですが……メタル斬りあたりは擁護しようがないくらいにサマルトリア兄有利(というかローレシアにはほぼ使い道がない)になってしまいます。
サマルトリア兄だけがメタル斬りをアルテマソード(敵1体に約510〜630のダメージを与える。メタル系にも有効)に変化させて利用可能だからですね。
そして、こうした悩みの部分でも足を引っ張るのが「超絶技についての説明が当初は開示されず、かなりストーリーを進行してから明らかにされる」という例の仕様です。
「実はローレシアにメタル斬りを覚えさせるとアルテマソードは使えないんですよ」というのを後出しで言われるのは、「いやー さがしましたよ」と同じくらい神経の逆撫でに感じる人も居たのではないでしょうか。

さて、こうした取り返しのつかない要素を防ぐためにはどうしたら良いのでしょうか?
そうですね、攻略サイトを見るしかないですね。攻略本(公式ガイドブック)を見るのもいいかもしれません。
……代わりにネタバレを踏んでも知りませんが。
(※これは制作側への皮肉として言っています)
気高い革命の心は
ドラクエ2における巻物は、もちろん悪意を持った実装というわけではないでしょう。機能不全を起こしているだけであろうと私は位置づけます。
巻物は旧態ドラクエ的な「レベルさえ上げれば誰でも同じ戦闘方法の解にたどり着く」という形を、「人によって創意工夫で様々な突破方法のある遊びの幅の広いゲーム」へと進化させようとした工夫の一端の切れ端である、と感じるからです。

画像はGameWith「【ドラクエ3リメイク】盗賊の転職おすすめと性格・特技【HD-2D】」より引用
https://gamewith.jp/dq3hd2d/471338
……これはたとえばFFシリーズにおけるマテリアの着脱のように、レベルとは異なる基軸で、プレイヤーの裁量で戦術に幅を持たせるための成長要素として実装されようとしたものの中途半端に終ってしまった要素なのだ、と解釈しています。
そうなってしまった大きな理由が、覚えることができても忘れることができないし、お試しをすることもできないし、効果を記した説明書を読むこともできないという不親切な仕様です。
いろいろな効果を探してみましょう!のためにはセーブデータをいくつにも分けて実験を繰り返さなければならないわけですね。
ドラクエ本編シリーズでも、11sまでのナンバリングを重ねる中で「遊びの幅」のための「任意習得スキル」に相当するような仕組みは色々と導入しています。
その最初期のものはドラクエ5の仲間モンスターであったり、直近のドラクエ11(s)では、スキルパネルおよびスキルリセットという仕組みを使って、戦略的に育成を行ったり、取捨選択による戦術構築という新たな基軸での楽しみ方を導入していました。

ドラクエ語で「〇〇ゴールドのご寄付」が必要という意味。
こうした試行錯誤の仕掛けは、様々なスキルを覚えることに支えられている……と思う方もいらっしゃるかと思いますが、実はそれだけではありません。様々なスキルや戦術を所定のコストの中でやりくりするジレンマこそが最大の面白さなのです。
11sのスキルリセットも、限られたスキルポイントを状況に合わせて振り分けてシナジーを高めるための仕組みでした。
炎を吐く強敵の前にブレス耐性や火炎耐性の高い防具を装備するのもその一環です。限られた装備枠に何を装備すべきか考える必要があるからですね。
防御力の高いものを装備するか、耐性の高いものを装備するか……あるいは仲間モンスターとして、狭い馬車の中に誰を連れて行くか……そうして悩み取捨選択することで戦闘中やそれ以外での行動も変わり、それがプレイヤーごとの戦術という個性と、あなたの選んだ物語という愛着を生むのです。
しかし、ドラクエシリーズの多くでは覚えたスキルは忘れませんし、大量に覚えているということに対するペナルティもありません。そのスキルはレベルと直結していて、レベルを上げなければスキルを覚えることもなく、多くのプレイヤーが同じような旅を行うことになりやすい構造になっています。
その中で、もし……巻物で覚えたスキルを他の誰かに渡すことができる(忘れられる)という仕組みさえあれば……
たとえば、所持していると発動できるという形で道具欄というリソースを消費する形にすれば……

全体マヒ回復や猛毒回復は「まんげつそう」や「どくけしそう」にしか為し得ない。
……それはそれでドラクエ9の秘伝書と同じような仕組みになるかもしれませんが、「誰に持たせるかな」程度で効果を気軽に試せて試行錯誤ができるという……そういう点で革命を成せたのではないか、と私は思うのです。
あらためての「まとめ」
勧めにくいが、勧めたい
本作、どうもなんというか、「いいゲームだよ! でもここは気をつけてね!」という主張になってしまう作品だということが少々つらいところです。
ネタバレにならない程度にストーリーを触れておくと、本作は許容と受容、そして解放がテーマとなった物語であると言えます。
そこには異なる価値観を認めるという大切な要素が全編にわたって敷き詰められています。そのはずです。
それがゆえ、本作も様々なプレイスタイルを抱きとめうるバランス調整を目指したものだったのだろうと推察はできます。
本作がかなり細かい難易度設定のカスタマイズに対応したのも、様々な攻略方法を可能にしたのも、そうした遊び方の多様性に寄り添おうとした結果のものであると捉えることができます。偶然という線もありますが。
しかし、誰にでも寄り添うということと、誰も否定しないということが似ているようで違う……のと同様、仕組みを用意して導線も引いてあげるのと、仕組みだけ用意するのとはチョットチガウやつかなと……
ストーリーや演出の面でも、この作品を勧めようと思ったときにネタバレの一環を踏みかねないというのが布教の難しさを起こしています。
なぜ本作を許容の物語と評したのかという理由も比較的ストーリーの終盤の展開に関わるものであって、大っぴらにしていいのかと思うと悩むところです。
すごく良いんだ……良いんだよ……だけどまだ語れないんだ……!
目の上のたんこぶ
また、残念なこととして……
やはり触れねばならないのは前作であるHD-2D版ドラクエ3のことでしょう。HD-2Dドラクエ3の続編でなければドラクエ1&2もっと売れたよねというのは、いかにも歯がゆいと思う部分です……
私は以前の記事で「今ならHD-2Dドラクエ3のバグも直されて良くなったよ」とは書きましたが、言っちゃあ悪いんですが「これがHD-2Dの限界なんでしょ。全力でやってコレなら仕方ないよね」という意味合いが含まれていました。
残念ながら私は作っている中の人ではないので、あそこに表示されている岩が何十万ポリゴンなのかを知らないのと同様にHD-2D作品の表現限界なんて知りません。なので全力でやってコレなんだろうと思いました。
そしてドラクエ1&2のお披露目映像を見たときに「ドラクエ3とは何だったのか」と愕然としました。
表現力の進歩に……と書くと非常に肯定的に取れますが、開発時期がほぼ同じだったはずなのに表現力がまったく違うということに愕然とした、と書くと私の心情が伝わりやすいでしょう。
ドラクエ1&2が後発だと言っても、たった1年だけのことです。それで何故、ここまで表現力が違うというのか?
そして実際にプレイすると、セリフ量やイベントの力の入れ方など、あらゆる点で本作のほうが上回っていると思わざるを得ない点が目についてきます。
そして、こう書いたわけです。「前作と違って素晴らしいよ!」と。
なら前作を手にした我々とは何だったのか。そう思いつつ……
その他にも「あっこれHD-2Dドラクエ3がなかったほうが良かったやつだな」と思うような要素はいくつかありました。
HD-2Dドラクエ3をプレイすることで、ロト三部作として綺麗に完結するはずの物語に余計なノイズが入る仕掛けがあったりしたからです。
このへんは詳述するとネタバレになりますし、かといってスルーしちゃうのもモヤつきが残る話なので……鬼は笑うかもしれませんが、ネタバレ解禁となる来年以降のネタにできたらしてみたいと思います。
体調のせいもあってnoteの更新が飛び飛びでご確約はできませんが😿
拙速も巧遅もダメ
巧遅は拙速に如かずという言葉があります。
「あっ知ってる、完璧を目指してウダウダやるより、雑でもさっさと仕上げろってやつだ!」という解釈をしている人が多いですが、それは原著である「孫子」的な意味では大間違いで……
「戦争を長引かせることは兵員を疲弊させ経済も破綻させ、そうなれば中立で様子見をしていた人々でも立場を翻す……と碌なことが起きない。そうして事態が悪化してからではどんな智将でもリカバリーはできない。だから戦争を速く終わらせたという話はあってもじっくりやるなんて話はない。弊害を知り尽くしたものでなければ利点を知ることなど不可能だ」
孫子曰、凡用兵之法、馳車千駟、革車千乘、帶甲十萬、千里饋糧、則内外之費、賓客之用、膠漆之材、車甲之奉、日費千金、然後十萬之師舉矣、其用戰也、勝久則鈍兵挫鋭、攻城則力屈、久暴師則國用不足、夫鈍兵挫鋭、屈力殫貨、則諸侯乘其弊而起、雖有智者、不能善其後矣、故兵聞拙速、未睹巧之久也、夫兵久而國利者、未之有也、故不盡知用兵之害者、則不能盡知用兵之利也、
https://sonshi.roudokus.com/sonshi02_01.html
……という趣旨の文章が一部切り抜きされ、その上で誤解されて拡散してしまったのが前述の解釈ということになります。まるでマスコミみたいな切り抜きだぁそもそも孫子は兵法書なのでビジネス的なことを書いてあるはずがないのですが、それでも組織運用という面では非常に大切なことが書いてあります。だからこそビジネスでも引用されるのでしょう(解釈の正しさはともかく)。
っと、少し話は逸れましたが。
孫子が言わんとしたことは「ちゃんと最初から悪い事態も想定して計画的にさっさと終わらせないと、場当たり的に長引かせて事態が悪化してしまっては取り返しがつかんぞ」という意味のほうが近いことになります。
(「長引かせず、さっさと終わらせろ」部分だけ切り抜いて曲解が生まれたわけですね。)
本作……というかHD-2D版ドラクエのロトシリーズ三部作は、いかにもこの言葉を思い起こさせるような完成度であると感じる部分があります。
「令和のゲームなら発売後の場当たり的アップデートを前提としていい」というわけではない、というのは今年のゲーム業界でも野性的な意味で大きく話題になりましたね。
すでに売ってしまったものの売上はそれ以上下がりませんが、その際代わりに下がっているのはカネで買えないとされる信頼や信用です。
ゲームだけでなくエンタメ全般を見渡せば、前作の売上が良かったとしても実際は見限られていたなんて話題も映画界で直近に出ていますよね。
歴史に学ぶ
少し話は変わりますが、2000年に雪印乳業の引き起こした雪印集団食中毒事件というのがありました。雪印乳業というのは当時存在した日本最大規模の乳製品メーカーでしたが、この事件の対応を巡って信用を一気に失ったことで最終的になくなりました。
そろそろ25年も前の出来事ですが、2500年前の孫子と同様に学ぶべきことは多いはずです。
※現在の「雪印メグミルク」は、解体された雪印乳業が紆余曲折の上で「再編」されたものであり、直接的な後継会社ではありません
そんな2000年、ゲーム業界ではファイナルファンタジー9という作品が発表されました。同作について、私は掛け値無しに名作だと思っています。
が、しかしその一方で現代に至るまで賛否両論という意見もあり、たしかに名作とは信じているけれど指摘せざるを得ない改善点がチラホラと見えるという作品でもありました。
また同作は、当時右肩上がりであったFFシリーズの売上で初めて前作を下回るセールスという結果に終わったことが悪い意味でも注目されがちです。
また、その一因として前作の影響があったとも言われていたりします。
ただし、それでも当時プレステ初代で発売されたゲーム内では第四位というぶっちぎりの販売本数を誇っており、比較対象や発売時期が悪すぎるという逆風が吹いていたことも考慮すべきではあります。
事実、そうした様々な要因が複合した結果というのがおそらく正しい見方であるといえ、しがらみがなくなった令和に大きくセールスを伸ばしたという報告もあったりします。
私はもちろん当時予約して買いました。
……予約特典のビビ人形も手にしましたよ、ええ。
そのような複雑な背景を持つFF9ではありますが……
今作HD-2Dドラクエ1&2は、このFF9を彷彿とさせる作品である……と私は感じています。真後ろにドラクエ7が控えているという意味ではなく
それは、「シリーズ総決算」という意味合いでも似ていますが……
この方のnoteでも触れられている通り、情報統制とマスクデータ(不親切な説明)があり、また前作がぶっ飛び過ぎていてそれで様子見したプレイヤーがいた、などの要素にはかなり思う部分があります。
ストーリーや演出がよい一方で戦闘システムに瑕疵があるのもそうですね。
さらに……
開発は「世界を隅々まで探索して欲しい」と公言していたと思うが、エクスカリバー2の仕様はそれに真向から反発している
太字強調は引用者による
この早解き要素とじっくり探索要素の混在のように、なにか方向性が真逆なものが混じっている傾向も本作に似ているかもしれません。
※エクスカリバー2は、プレイ時間12時間以内にラスダン深層到達で入手できる最強武器
FF9を引き合いに出したので、ついでにストーリー面についての見解を少し。
本作、特にHD-2D版ドラクエ2は、作品のストーリー面での雰囲気が「陰鬱になるほどの世界の危機なのに、どこかキャラクターたちが安穏としている」いう、FF9あるいはFF5などという作品群に似た雰囲気を醸成しています。
私はそうした雰囲気を非常に好みに思うのですが、これも人によって大きく賛否両論の分かれるところでしょう。
これは以前のドラクエ3記事でもオルテガのイベント絡みでチラッと書いたことがありますが、舞台演劇を意識した作風であることは良いものの、それがやり過ぎ感を産んでしまい白ける場合があることと無関係ではないはずです(特にFF9はそういうテーマの作品ですからね)。
その匙加減はおそらく人によりますから、そういう意味でも本作が他の方のレビュー感想を鵜呑みにできない部分なのだと思います。……ドラクエ9のサンディ案件かもしれない。
ファイナルファンタジー9を発売したのはスクウェア社であり、後にドラゴンクエストを発売していたエニックス社と合併することでスクウェア・エニックス社(本作の発売元)になっています。
良くも悪くも、本作にはファイナルファンタジー9の血が流れているわけで、その経験は血肉になっているものだと願いたいです……
幸いにも本作、現在は攻略サイトも充実しており、また公式ガイドブックも先日発売されました。
……いちおう免罪符としてリンク貼っときます(アフィではないよ)。
本作はせっかく公式が情報統制をしているくらいなので、可能ならネタバレを引かないうちにプレイしていただきたいなというのが心からの思いです。しかしその一方で、ゲーム単体で完結できないために攻略本や攻略サイトでネタバレを踏む確率が上がってしまうのを気にしながらプレイせざるを得ないというのは、本作のもっとも惜しい点だと思っています。
いつもの私の考察記事は毒にも薬にもならない、ただ読んで楽しむだけの内容になるよういつも心がけています。
しかしこの記事はレビューとして、本作を遊んでみようと思う人の手引書として少しでもお役に立てればと思う次第です。
体調の関係で更新をいろいろ積んでます、すみません……
年内にまたジークアクスので記事更新したいところですけど間に合うかな🙇♂️
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